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鈴木おさむの「いまこそテレビが、オモシロイ!」No.1

2021/04/01

褒めて、ほしいの

TVer

鈴木おさむさんに「テレビは今後、どこへ行く?」という仮タイトルで思いの丈を語っていただくこの企画。TVer×ウェブ電通報という、ありそうでなかった座組みで実現しました。

前評判も上々の新作ドラマ「殴り愛、炎」(4/2、4/9にテレビ朝日系列にて放送予定)のお話もちょいちょい折り込んでいただきつつ、鈴木おさむ氏ならではのテレビ論を大いに語っていただきました。

ご安心ください。ウェブ電通報の編集方針として、「とどのつまりは、番宣なのだろう?」といったような凡庸なる記事にはいたしません。乞う、ご期待。

TVer

─TVer×ウェブ電通報×鈴木おさむさんという座組みで実現した本インタビュー企画。おさむさんとは、私は、はじめましてなのですが、どうぞよろしくお願いいたします。

鈴木:よろしくお願いします。

─いきなり、で恐縮なのですが、新作のドラマ「殴り愛、炎」(4/2、4/9にテレビ朝日系にて放送)の背景や狙いなどについて、お聞かせいただけますか?

鈴木:山崎育三郎さんで恋愛モノのドラマを作れないか、というオファーを受けたのがきっかけです。山崎さんは、言わずとしれたミュージカルのスターで、ある種、完璧な存在だと思うんですよ。そんな彼が、これまでに見せたことのないような「嫉妬に侵されていく」役をやったら面白いんじゃないかな、と。あの甘いフェイスの三浦翔平さんが、ドラマ「奪い愛、冬」で、どんどんおかしくなっていったように。

─そこが、出立点だったんですね?

鈴木:そうです。山崎育三郎さん演じる天才ドクターが、嫉妬に狂ってどんどん壊れていく。「山崎育三郎さんで、恋愛モノのドラマ」というオファーには、きちんと応えていますよね。しかも、王道の「天才ドクター」役。でも……

─そこに、鈴木おさむ流の演出が加わる、と(笑)。予告編を拝見したのですが、壊れていくのは、どうやら山崎さんだけではありませんよね?

鈴木:瀧本美織さん、市原隼人さん、酒井若菜さん、永井大さん……。山崎さんの周りにいる人、みんながみんな、壊れていく。それも、予想の範囲には収まらないレベルで(笑)。

殴り愛、炎

─実際、演者の方々からも「これまで経験したことのない役を演じられて、とても楽しかった」という内容のコメントが多かったように思います。

鈴木:うれしいですね。突き抜けたものをやりたい、自身の芝居の幅をもっと見せたい、という思いは役者なら誰もが持っているものだと思うんです。それも、地上波で。それに応えることもまた、脚本家の役目なのかな、なんて。

─とはいえ、地上波ならではの制約はありますよね?

鈴木:もちろん。だから、オーソドックスな設定から、まずは入る。最初に申し上げたとおり、「山崎育三郎さんで、恋愛モノのドラマ」というオファーには、きちんと応えています。でも……

─役者さん、なにより視聴者からの期待は、絶対に裏切らない。

鈴木:ご安心ください。裏切るところは、きちんと裏切っていますから(笑)。

TVer

─さて、と。大切な「番宣」も滞りなく済んだ、ということで……

鈴木:恐れ入ります(笑)。

─今回の取材の大テーマとして、「テレビは今後、どこへ行く?」ということを伺っていきたいんですよ。その導入ということで、最近のテレビであったり、テレビ業界であったりについて感じていらっしゃることを、まずはお聞かせいただけますか?

鈴木:特徴的なことで言うと、そういう質問が増えた、ということですね(笑)。テレビ業界を代表して、一言、みたいな。おそらくは「言質」のようなものが欲しいんだと思います。最近のテレビの、ここがなってない!みたいな。

─インタビュアーの代わりに、吠えてくれ!みたいなことですね。

鈴木:そうですね。

─それでいうと、今日は「テレビ」というものについて、いくつかの「仮説」を用意してみたのですが、聞いていただけますか?

鈴木:はい。

─一つ目の仮説なんですが、テレビという「魔法の箱」がお茶の間という「場」をつくった。ここまでは、よく言われることだと思うのですが、昔を振り返ると「テレビに支配されている快感」みたいなものがあったと思うんです。お茶の間のド真ん中にでーんとあって、当時はまだ録画なんてことは出来ませんから、好きな番組が始まるのをテレビの前で正座して待っている、みたいな。テレビのことが好きすぎて、もうどうにでもして、という感覚。これって、ある意味「テレビに支配されていた」ということじゃなかったのかな、と。

鈴木:支配、ですか……。支配されてる、と思ったことはないですね。とにかく「新しくて面白いもの」は、当時テレビからしか得られなかったから。チャンネルを捻れば、見たことも聞いたこともないものが次々に飛び出してくる。そりゃ、魂、持ってかれますよね。それが「支配されてる」ということ、なのかも知れないけど。

─僕の感覚でいうと、テレビって「学校」みたいなものだったんですよ。時間割(タイムテーブル)に支配される、テストやかけっこの成績(視聴率)に支配される、おなかが空く頃には大好きな給食をみんなで食べる。決してイヤだということではなく、それがもう、楽しくて楽しくて仕方なかった。なのに、あるとき「学校」という枠組みからぽーんと外に投げ出されて、どうしたらいいのか途方に暮れている、みたいな。

鈴木:枠組みということでいうと、昔とはすべてが違いますからね。たとえば視聴率にしたって、昔はその番組の成績を測る唯一の指標だったけど、今は違う。とにかくF1層さえ掴んでおけばいい、なんてことはもうない。50代、60代はどう視聴しているかといったことがきちんと数字としてあがってくる。これはもう、校則が変わったというか、法律(憲法)が変わった、くらいの変化だと思います。

TVer
─それでいうと、リアルと非リアルの境界もなくなりましたよね。

鈴木:テレビを見ている側もリアルだし、テレビに映っている向こう側もリアル。共にリアルだと何が起こるのかというと、よくも悪くもお互いに「干渉」し合うようになる。批難や悪口といったものは簡単に想像できることだけど、たとえば視聴率としてはいい数字がとれなかった番組が、DVD化や映画化されることで大きくハネたりすることがある。つまり、マネタイズされることでそのコンテンツの品質が証明されるんです。

─それは、つくり手冥利に尽きる、というものですね。

鈴木:そう。別に僕は、お金がほしいわけじゃない。ただ、褒められたいんです。「ほら、やっぱりおもしろいよね」と言いたいというか。お金を払ってでも、観たい。これは、ものすごくわかりやすくて正直な評価ですから。

─「褒められたい」というのも、とても純粋な動機です。

鈴木:バラエティーの中でも演出家の「作家性が強いモノ」が選ばれているような気がします。

「作り手で選ばれるワイン」みたいなことだと思うんです。ワイナリーのオーナーからしてみれば、こんなうれしいことはない。褒められたくて、褒められたくて、だから、土の一粒にまでこだわってつくる。その思いが、感度の高い人に、まず伝わる。

─そこからじわじわと人気に火がついて……ということですね。まさに、今の時代そのものだ。

鈴木:その分、つくり手としては怖いですけどね。感度が高いということは、確かな舌を持っているということだから、「今回は手を抜いたな」みたいなことまできちんと伝わっちゃうんです。

TVer
鈴木:その意味では、お世辞でもなんでもなく、TVerがテレビの未来を握ってると僕は思います。テレビに代わるメディアの王者になるとかそういうことではなく、テレビの未来の「カギ」を握ってる。情報感度の高い人に、なにがどれだけ届いてるのか、刺さっているのか、が一目瞭然なんです。

─「カギ」というニュアンスは、とてもよくわかります。インタビューの冒頭で「かつてあったテレビに支配される快感」みたいなことを申し上げましたが、いまの時代、作り手も見る側も、あれれ?ここにカギ穴らしきものがあるぞ、どれどれこちょこちょこちょ……みたいな感覚で、メディアと接していますものね。

鈴木:そう。それは、テレビに限ったことじゃない。SNSだってそうだし、ゲームだってそう。情報感度の高い人というのは、流行りモノだから飛びついてるわけじゃない。カギ穴をこちょこちょするのが好きなんだと思う。

─ネット検索みたいな行為とは、ぜんぜん違う、と。

鈴木:テレビが圧倒的に「新しくて、面白いもの」であることは、今も昔も変わらない。ただ、昔のように「ほら、これが新しいですよ!」「ほらほら、これが面白いんですよ!」という感じに、テレビ側からぐいぐいアプローチはしてくれない。

─お茶の間で、大人気!視聴率が、それを示してます!みたいな。

鈴木:実際、ドラマの脚本を担当していると「TVer、どう?」って聞いちゃうもの。期待半分、心配半分で。これは、テレビ業界をあえて代表して言いますけど、テレビ業界人のあるある、だと思うな。

(聞き手:ウェブ電通報編集部)


【編集後記】
鈴木おさむ氏とは、むろん初対面である。でも、インタビューをはじめて5分くらい経ったところで、「ああ、この人は、純粋な人なんだな」ということがよくわかった。

純粋であるとは、どういうことか。主張に一切のブレがないということだ。ブレがない、というと、頑固一徹の職人みたいな人をイメージしがちだがそうではない。たとえば、「褒められたいのよー」という発言。まるで、少年のよう。でも、それに続けて鈴木氏はこう言い放つ。「褒められるためだったら、僕はなんでもするよ」と。

ブレがないから、結論も早い。行動も早い。ある意味、とてもテレビ的だ。それはテレビというものがお茶の間に鎮座していた「魔法の箱」だった時代も、「魔法のコンパクト」さながら手のひらの上で楽しむようになった今も、変わらない。なぜなら、人はいつの時代も「テレビ的」なものを追い求めているからだ。時間がなくて質問し損なったのだが、鈴木氏ならこう答えるにちがいない。「テレビ的なものを楽しみたいなら、やっぱりテレビをおいて他にないんじゃないの?」と。


鈴木おさむ氏が脚本を手がけた最新ドラマ「殴り愛、炎」の情報については、こちら

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