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鈴木おさむの「いまこそテレビが、オモシロイ!」No.2

2021/04/08

ザワついて、ほしいの

TVer

鈴木おさむさんに「テレビは今後、どこへ行く?」という仮タイトルで思いの丈を語っていただくこの企画。TVer×ウェブ電通報という、ありそうでなかった座組みで実現しました。

4/9にテレビ朝日系列にて後編が放送予定の新作ドラマ「殴り愛、炎」のお話もちょいちょい折り込んでいただきつつ、鈴木おさむ氏ならではのテレビ論を大いに語っていただきました。

ご安心ください。ウェブ電通報の編集方針として、「とどのつまりは、番宣なのだろう?」といったような凡庸なる記事にはいたしません。乞う、ご期待。

TVer
─TVer×ウェブ電通報×鈴木おさむさんという座組みで実現した本インタビュー企画。
今回も、よろしくお願いいたします。

鈴木:こちらこそ。

─今回は、ですね。鈴木おさむさん、ということで「変って、なんだ?」というテーマでお話を伺っていこうと思います。変わり者の「変」、変態の「変」、変化の「変」、本能寺の変の「変」です。おさむさんの作品を拝見していますと、「変なものをつくりたい」という気持ちが根底にあるような気がするのですが……

鈴木:結果的に「変なもの」になっているのかも知れないけれど、「変なものをつくりたい」という気持ちはないかな。でも、「世の中をザワザワさせたい」という欲望は常にあります。

─「ザワザワ」ですか?

鈴木:そう、ザワザワ。僕が思うに「変なもの=ザワつくもの」ではないんです。変が過ぎると、世の中ってザワつかないものだから。ここで、こんな変なことが起きたら世の中ザワつくだろうな、と思うことはあるけど、それは「変」ありき、ではない。

─「ザワザワ=なんだか不安でしょうがない。でも、無性に興味がそそられる」みたいなことでしょうか?

鈴木:いつハシゴを外されるんだろう、どうやって外されるんだろう、ハシゴを外すとみせかけて、ひょっとしたら最後までハシゴを外さないんじゃないだろうか、みたいな。とても平常心ではいられない。それって、ワクワクでも、ドキドキでもなくて、ザワザワなんだと思うんですよね。

─「鈴木おさむワールド」のキモの部分が、少しはわかってきました。
 

TVer

鈴木:うまく表現できないんだけど、ザワザワっていうのは単純な裏切りじゃないんですよね。内館牧子さんのドラマが僕は大好きなんだけど、内館さんの脚本って、いい意味で性格が悪い。意地悪っていうか。僕の好きな役者さんに、そんな惨めなことさせないでー、みたいな気分にさせられちゃう。見てる側としては、もう、ザワザワしっぱなし。

─いわゆる「毒」の要素ですね。それも、中毒性のある。とても、やっかいな(笑)。

鈴木:僕の中で開眼したのは、「奪い愛、冬」(2017年にテレビ朝日系「金曜ナイトドラマ」枠で放送された鈴木おさむ氏脚本によるドラマ)かな。

番組のプロデューサーから「とにかく変なことばっかりが起きるドラマにしたいんですよ」と言われて、なるほどな、と思ったんです。当時、不倫ドラマが流行ってて、じゃあ、その方向でいくか、みたいな気持ちで始めたんだけど、水野美紀さんが、とにかく変なことばっかりする。タンスの中に隠れてたり、プレゼントにヒールの先を入れたり。

コントって、基本、変なことばっかり起きるじゃないですか。見てる側も、それを期待している。でも、ドロドロ恋愛ドラマだと思って見始めたのに、もしかしてこれ、コメディー?みたいなことが次々と起こると、視聴者としてはザワつかずにはいられないんじゃなかろうか、と。

─そこは、あえて規定しないんですね。

鈴木:そう。見る人によって、見方はいろいろあっていい。不倫モノだろうが、コメディーだろうが、それは受け手に決めてもらうこと。でも、ザワザワだけはしてほしい。僕が書くドラマの第一話に対して圧倒的に多いのが「このドラマ、どうやって見たらいいの?」というとまどいの声なんです。なので、第二話で「なるほど、こうやって見たらいいんだ」という気分にとりあえずなってもらう。でも……

─第三話で、また見方がわからなくなる。

鈴木:気がつくと、クセになってる。

─それはまた、性格が悪い(笑)。

TVer

鈴木:一方で、とことん無視されるのが、テレビ。昔、構成に参加していた「めちゃイケ」で、これはおもしろいと思う回があって、たまたま、実家に帰っていて家族でオンエアを見たんだけど、母親は台所仕事かなんかしてて、まったくの無視。息子の自信作を、ですよ。

でも、それがテレビ。スマホをいじりながら見てても、スマホをいじるのに夢中で完全に無視されていたとしても、それがテレビ。こんなに自由なものはない。だから、楽しい。

─そういうことを言うと、だから鈴木おさむは扱いづらいんだよーとか、局の人から言われたりしません?

鈴木:でも、それがテレビなんです。CMなんかも、そうでしょ?「いい感じで、おねがいします」「はい、わかりました」でつくったCMなんか、誰も見ない。少なくとも、僕は。チャンネルを変えるか、あるいはスキップして、それで終わりだと思います。

─わかるなあ、わかります。うちの母親に「うちのサラダ油、なんでいつもコレなの?」と尋ねても、「さあ、なんとなく」という答えしか返ってこない。でも、なんかあるんですよね。クセになるなにか、が。それが値段なのか、脂肪がつきにくい成分なのか、それをうたってるCMの効果なのか、はわかりませんが。

鈴木:無視されてナンボ、と開き直ると、じゃあ無視されないためにはどうすればいいのかと考えるわけです。どう考えてもそれは、理屈じゃない。つまるところ見ているひとを、あるいは見る気もなく眺めている人を、どれだけザワザワさせられるかどうか、だと思うわけです。

(聞き手:ウェブ電通報編集部)


【編集後記】
今回は、鈴木おさむ氏に対して「変」というキーワードを投げておきさえすれば、正直、なんとかなるだろうと思っていた。ところが、である。いきなり「別に、変なものをつくろうと思ってはいないんですけど」とのカウンターパンチだ。面食らっていると、即座に「でも、ザワザワは、させたいんだよね」と来た。

仕事をしていると、いや、人生、長く生きていると、「目的」と「手段」がいつの間にか入れ替わっていることがしばしばある。あれこれ調整して、家族でやっと憧れのハワイに来ることができた。いやあ、満足だ。妻も子どもたちも、喜んでいる。ところで、ハワイに来たまではいいけど、ハワイで一体なにをすればいいんだっけ?みたいなことだ。

目的さえ見失わなければ、こんなことは起こらない。「ハワイで、最高の昼寝をすること」が目的であってもいい。そんなことは、個人の自由だ。そのために大枚をはたこうが、他人にとやかく言われることではない。

「テレビはもはや、オワコンである」。巷で噂されるそんな声に、正直、イラっとしていた。でも、こう考えるとすっきりする。「ハワイねえ。何度か行ったけど、正直もう飽きたな」などと言ってるような人に限って、ハワイの魅力を、ハワイで過ごす時間の魅力を、なにひとつ分かってはいないのだ、と。


鈴木おさむ氏が脚本を手がけた最新ドラマ「殴り愛、炎」の情報については、こちら

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