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「スポーツ×食」が生む新たなビジネスチャンスNo.1

2021/04/02

長友佑都の専属シェフが見つけた「スポーツ×食」の最適解

スポーツをする人にとって、必要な栄養摂取による身体づくりが重要であることは言うまでもありませんが、具体的な栄養の取り方や食事の仕方については、あまり詳しく知られていないのも事実です。

アスリートのみならず、スポーツに取り組む子どもから大人まで、そしてその家族にとっても有意義な「スポーツ×食」の可能性を模索すべく、サッカー選手の長友佑都氏をはじめ数々のアスリートの専属シェフを務める加藤超也氏、長友氏の共同創業者であり、長友氏のマネジメント事業や食事事業を展開するCuore(クオーレ)の津村洋太氏、そして電通食生活ラボ(食ラボ)の加藤聡太氏が鼎談を行いました。

加藤シェフ、津村氏、加藤氏

長友選手の専属シェフとして、食事で筋肉系のけがを劇的改善

加藤(聡):今回は「スポーツ×食」という領域で新しい可能性を切り拓いているお二方にいろいろと話を伺えたらと思います。はじめに長友選手の専属シェフを務める加藤シェフに、世界の第一線で活躍されるスポーツ選手にとって食事がどのようなインパクトをもたらすものなのか、教えていただけますか?

加藤シェフ:私が専属シェフとして長友選手のサポートを始めた頃、彼はイタリア・セリエAの強豪インテルミラノに所属していました。世界各国の代表レベルの選手たちとの激しいレギュラー争いに勝つため、常に最高のコンディションを維持しなければなりません。

しかし当時、彼は定期的に発生する筋肉系のけがに悩んでいました。そこで食事内容を見直し、適切な食事法を取り入れたところ、筋肉系のけがをなくすことができました。

加藤(聡):それは大きな成果ですね。けが以外にも食事による変化はあったのでしょうか?

加藤シェフ:本人からは「睡眠の質が上がった」、そして何よりも「心が安定した」と言ってもらえました。例えば、以前は試合終盤で肉離れや足がつることを恐れてあと一歩が踏み出せないときもありましたが、食事を変えたことで身体の変化を実感し、自信も芽生えたことで恐怖を克服できたそうです。

加藤(聡):世界の第一線でギリギリの勝負を突き詰めるアスリートだからこそ、その変化は大きな支えになりますよね。

ところで僕もスポーツをするのですが、なんとなく動きが重かったり、疲労感が抜けなかったりと身体の不調を感じることがあります。このようにアスリートだけでなく一般のスポーツに関わる人でも、食事で改善できることはあるのでしょうか?

加藤シェフ:もちろんです。例えば食後に胃もたれを感じるときがあると思いますが、これはコンディショニングの観点では非常に重要なポイントで、食べ物を消化しきれていなかったり、悪い脂を取りすぎているかもしれません。その場合は、揚げ物を減らす、脂の質を変えることでコンディションを整えられる可能性があります。

加藤(聡):子どもの部活の試合のとき、験担ぎにカツをお弁当に入れる親御さんがいると思うのですが、今の話を聞くとあまり良くないのでしょうか?

加藤シェフ:一概には言えません。酸化した油で揚げたものは決して良いものではありませんが、少量の油で、適切な温度で、一回だけ揚げたものならば問題ないでしょう。カツが悪いのではなく、調理する過程における機能性を理解することが重要なんです。

加藤(聡):食べる人や作る人にもリテラシーが必要なんですね?

加藤シェフ:食べる人がリテラシーと自炊力があることが理想ですが、現実はそうではないケースがほとんど。そうなると、作る人がどれだけ理解しているかが重要になります。

良質な脂をエネルギーに変える「ファットアダプト法」とは?

加藤(聡):ここで改めて、加藤シェフがどのような考え方で食事を用意しているのか、そのアプローチ方法を教えていただけますか?

加藤シェフ:長友選手と実践した食事法の一つが、ファットアダプト食事法です。これはひと言で言えば、良質な脂をエネルギーとして効率的に使える体質に改善すること。

この食事法では血糖値を上げない程度に炭水化物も摂取し、糖質と脂質の両方を効率よく活用することで、エネルギー消費を長く持続させることを目指します。ガソリンと電気の両方を燃料に走るハイブリッドカーをイメージしていただくと分かりやすいと思います。

加藤(聡):脂をエネルギーに変える身体になるためには、日々の食事をどのように変える必要があるのでしょうか?

加藤シェフ:まずは糖質のコントロールです。人それぞれ、活動量や代謝能力によって糖質の適正量が異なります。自分にとって最適な糖質の量を見極めることが重要です。次に、タンパク質をしっかり取ること。三つ目に、脂もしっかりと摂取すること。

栄養比率は人によって変わりますが、長友選手のケースでは北里大学の山田悟医師の監修のもと、食前と食後の血糖値データを集めて最適解をグラム単位で突き詰めていき、最終的にタンパク質と糖質が3割ずつ、残りの4割が脂質というバランスにたどり着きました。

加藤(聡):そんなに脂を取るんですね!ちょっと意外です。

加藤シェフ:脂は身体に悪いものだと認識されている方は多いと思いますが、それは酸化した悪い脂の話であり、良質な脂はむしろ積極的に摂取すべきです。

加藤(聡):ちなみに良い脂とは具体的にどんな脂を指すのでしょうか?

加藤シェフ:目的に対する選び方、調理方法、保存方法が良し悪しを大きく左右します。例えばアマニ油やえごま油は身体に良いものだという認識が一般化しつつありますが、これらは非加熱で使うことが重要です。酸化ストレスに弱いので、加熱すると逆に悪い脂に変わってしまいます。保存方法も冷蔵がベストなんです。

加藤(聡):なるほど、そこもリテラシーが求められる領域なんですね。

加藤シェフ:そうです。糖質に関しても、ご飯茶碗1杯で血糖値が急上昇する人もいれば、ご飯茶碗2杯食べても血糖値を穏やかにキープできる人もいます。大切なのは自分の身体を知ること。良質な脂をきちんと摂取し、自分にとって最適な量のタンパク質と糖質を摂取する。これができれば、プロのアスリートも一般の方でもコンディションを整えることが可能になると思います。

ファットアダプトの料理例

ファットアダプトの料理例
ファットアダプトの料理例

加藤シェフの独自性を生かした、食ビジネスの可能性

加藤(聡):ここからは、加藤シェフと一緒に食の新たなビジネスにトライされているクオーレの津村さんにも話を伺いたいと思います。加藤シェフにお話いただいたファットアダプト食事法を活用して、具体的にどのようなビジネスを展開されているのか教えていただけますか?

津村:生活者の健康意識が高まる中、近年は糖質制限ダイエットや糖質オフといったテーマにフォーカスした商品開発に取り組む企業も増えています。それらの商品を生活者のニーズに合わせて広めていく役割で、加藤シェフや長友選手の経験やメソッドを企業様に活用していただいております。

一方、一人一人のユーザーに合わせたレシピ・献立を提案するサービスやSNSを通じて生活者と直接つながる手段があるため、ユーザーとコミュニケーションを取りながらニーズに応える情報提供や商品・サービス提供を強化していきたいと考えています。それはD2C型のビジネスモデルのみならず、企業との協業も含めたあらゆる手段を広く検討しています。

加藤(聡):糖質制限やダイエットという言葉はビッグワードだと思うのですが、御社はその中でどのような点に強みがあるのでしょうか?

津村:トップアスリート、料理人、ドクターが数年かけて作り上げた独自の理論とポジショニングに、価値を見出していただくことが多いですね。

加藤(聡):確かに世界トップで結果を出し続けてきた長友選手、その活躍を支えてきた加藤シェフが提唱する食事法には説得力がありますよね。すでにパーソナライズされたレシピサービスを展開されていますが、一人一人に合わせたプロダクト開発も検討されているのでしょうか?

津村:近年のビジネストレンドのひとつに、コンシューマーと直接コミュニケーションを取ることが挙げられますが、そのトレンドと相性が良い食事法なので可能性はあると思います。実際にユーザーアンケートを取ると、食材キットの配送サービスや、冷凍のお弁当サービスに対するニーズが非常に高いです。ただし、個別最適化をどこまで突き詰めるのかなど、実現に向けてより深く検討すべき要素も多いと思っています。

スポーツをする子の親の悩みを解決する商品開発に着手

加藤(聡):2年ほど前に食ラボで食事に関する意識調査をしたとき、近未来の食分野の変化について9つのコンセプトに対する感想を聞いたところ、「3Dフードプリンター」「人工肉」「完全食」といったコンセプトに抵抗感を示す人が多い中、「日々の食事で、パフォーマンス向上を追求」という項目のみワクワク感が高く抵抗感が少ない結果となりました。

近未来の食について

「日々の食事で、パフォーマンス向上を追求」とは、食品が持つ機能性や作用が解明され、効果効能で食事を選ぶようになり、背が伸びる、足が速くなる、スポーツのパフォーマンスが向上するといった効能を食事で得られるようになる、という世界観です。

さらに結果を紐解くと、中学生の子どもを持つ親の期待感が非常に高いことが分かりました。ここから読み取れるのは、スポーツに打ち込む子どもをサポートしたいと考える親御さんが、食事の効能に興味関心を抱いているということです。

津村:そのニーズに対して今まさに、老舗の鈴廣かまぼこと「魚肉たんぱく」を使った商品開発や、ホップ由来の独自素材を活用するINHOP(キリンと電通のジョイントベンチャー)と商品開発プロジェクトを進めている最中です。

加藤(聡):具体的にどんな商品を開発しているのでしょうか?

津村:INHOPと開発を進めているのは、キリンが独自開発した健康素材の熟成ホップを配合したソーセージです。集中力・記憶力の向上、思考時の疲労感の低減といったスポーツをする人や受験生にとってうれしいことを、ホップの苦味を抑えておいしく得られるように試行錯誤しています。

加藤(聡):すごく興味があります。どうしてソーセージなんですか?

加藤シェフ:スポーツをしている子の親御さんによくお問い合わせいただくのが、お弁当や軽食の献立です。そのお悩みを前提に考えると、ソーセージなら保存が効いてお弁当に使いやすいし、軽食にも食べられるし、タンパク質も摂取できる。味付けなどの工夫でホップの苦味も緩和できるし、ソーセージが嫌いな子どもも多くはありません。あらゆる視点からみて合理的な内容だと思って選択しました。

津村:先日、長友選手のサッカースクールで試作品を提供したところ、子どもたちはおいしいと喜んで食べてくれて、保護者の方からも「加藤シェフが考えた商品だから期待できる」と非常にポジティブな反応を得られました。

機能性とおいしさの両立は、絶対に妥協してはならない

加藤(聡):おいしいって大事ですよね。

加藤シェフ:本来、食は機能性に本質的な価値があり、身体に良いもの、身体が長生きするための役割を担うはずなのに、老化を加速させたり、寿命を縮めるような嗜好性に重きが置かれるようになっています。

私はそこに危機感を感じて、アスリートのシェフになりました。

いくら機能性の価値を発信しても、ラーメンや焼肉のおいしさには勝てません。機能性とおいしさを両立することは、絶対に妥協してはならないコンセプト。これは僕が生涯をかけて取り組むべき世の中の課題だという使命感を持っています。

加藤(聡):とても良いお話ですね。効果効能を追求するだけでなく、食べる人がその食事を前向きに受け入れられるような仕掛けを作ることが重要だと思いました。

加藤シェフ:プロのアスリートでも、みんなが機能性をストイックに追求できるわけではなく、嗜好性を大切にしている方もたくさんいます。どんなに機能性を訴えたところで、おいしくなければ続けられません。

作り手が忘れてはならないのは、アウトプットする相手が人間だということ。一人一人の気持ちに寄り添う食事を考えるのが私たちの役目だと思っています。

加藤(聡):プロの料理家、そしてトップアスリートの専属シェフを経験されてきた加藤シェフならではの素晴らしい視点だと思いました。

そんな加藤シェフがスポーツをしている中高生の親子に料理を提供するオンラインレストランを、クオーレと食ラボで企画しています。皆さまのお悩みに寄り添った、おいしく機能的な食事をお届けしたいと思いますので、続報を乞うご期待ください!
 

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