「アニメ・キャラクター」とのコラボでブランド価値を高めよう!No.1
進撃のコラボ!アニメやキャラクターによるコミュニケーションのポイントは?
2022/01/28
老若男女問わず幅広く支持されると同時に、高い熱量のコアファンが潜在している日本の漫画・アニメ作品。企業からの注目も年々高まっています。
昨今よく目にする「アニメ・キャラクターとのコラボ、タイアップ」の魅力は一体何なのか?どのような点が企業の課題解決につながっているのか?
本記事では、電通が製作委員会に参画しているアニメ「進撃の巨人」(※)のタイアップ事例を見ながら、企業・ブランドとアニメ作品がコラボする際に大事な“ポイント”を、電通で「進撃の巨人」を担当する北尾がひもときます。
※進撃の巨人
諌山創氏の人気コミックおよび、それを原作とするテレビアニメシリーズ。2013年のアニメ化をきっかけにさらなるブレイクを果たした本作は、瞬く間に世界中のファンをとりこにした。2022年1月からNHK総合で放送開始したアニメ「進撃の巨人」The Final Seasonは、世界各国でも配信が行われ、まさに全世界で快進撃を続けている。
<目次>
▼販売数量前年比106%を達成!「コレクション性」を生かしたWONDAコラボ缶
▼公開直後150万回再生を突破!「ファンファースト」で攻めたメンズスキンケアブランド“uno” タイアップ
▼リスクだらけのパラディ島に第一生命オフィスを設立!?キャラ目線で物語るメリット
販売数量前年比106%を達成!「コレクション性」を生かしたWONDAコラボ缶
今回ご紹介する「進撃の巨人」タイアップ事例の一つ目は、アサヒ飲料「WONDA」(ワンダ)の“コラボデザイン缶”です。
原作コミックのデザインを活用し、全20種類ものコラボデザイン缶を展開したWONDA「ワンダ モーニングショット」「ワンダ 金の微糖」。思わずそろえたくなるコレクション性の高いデザインが「進撃」ファンの人気を集め、激戦区の缶コーヒー市場において、タイアップを行った「モーニングショット」は単月前年比101%、「金の微糖」は単月前年比106%の販売数量を達成しました。
主人公のエレン・イェーガーをはじめ、ミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルトなどの漫画イラストが描かれた限定缶は、「進撃の巨人」ファンの間で大きな話題となりました。全デザインを収集してSNSに写真をアップするのが恒例化するなど、コンプリートしたいファン心理をくすぐったのです。
中でも2種のデザインを並べることで原作の名シーンが再現できる“レア缶”は、探す楽しさと集める楽しさから注目を集めました。
また、対象商品を1缶購入するたびに応募できる「今だけの『WONDA』&進撃の巨人」キャンペーンを実施しました。これは「進撃の巨人」オリジナル複製原画等のコラボ限定アイテムが抽選で1000人に当たるというもので、コラボデザイン缶を集めるだけにとどまらず、ファンが継続的に商品を購入したくなるキッカケを作りました。
その結果、キャンペーンへの応募は30万を超える件数を達成。コレクション性の高いデザインとの相乗効果で、商品の売上は飛躍的に伸長したのです。
このように「アニメ・漫画」とのコラボは、商品のブランド力や知名度が向上することはもちろん、作品ファンの“推し活”ともいわれる熱量の高い活動により、販売力にもインパクトを与えます。
WONDAは「進撃の巨人」の他にも、2019年に「ルパン三世」、2020年に「こちら葛飾区亀有公園前派出所」、2021年に「ワンピース」と、人気漫画とコラボを行っており、今やすっかり“コラボデザイン缶”の定番化に成功しています。
結果として、WONDAは従来のメインターゲット層である男性への購入喚起はもちろんのこと、キャラクターファンである女性層など、幅広い新規顧客層からも親しまれるブランドへと進化しているのです。
公開直後150万回再生を突破!「ファンファースト」で攻めたメンズスキンケアブランド“uno”タイアップ
続いて、ファイントゥデイ資生堂が展開するメンズスキンケアブランド「uno」とのタイアップ事例です。
ブランド側が伝えたいメッセージは、「unoのオールインワンシリーズは肌トラブルを未然に防ぐアイテム」というもの。これをストレートに発信するのではなく、アニメの印象的なシーンを活用したパロディ動画に落とし込むことで、「進撃の巨人」ファンの間で拡散され、大きな話題化に成功しました。
例えば、コラボ映像のうちの一つ「肌トラブルを知らないエレン」篇。主人公のエレンが、かつて仲間だったライナーから、「エレンが肌トラブルを起こした理由は、スキンケアをしていなかったからだ」と告白され、「uno」を使うことを決意し、肌トラブルを駆逐すべく巨人化するという内容です。
アニメ本編では非常にシリアスなシーンが一転シュールな会話劇に生まれ変わっており、人気声優の熱演も相まって、SNSを中心に大きな笑いと反響を呼びました。コラボ映像を公開した公式ツイートは、約5万件“いいね”を達成し、YouTubeなどを含めた総再生数はわずか3日で150万回を突破。
本事例のポイントは、コラボ用に制作したオリジナル映像ではないということ。いずれも、元々あったアニメ本編映像に、本編と同じ声優陣が上記のような肌トラブルにまつわるセリフを当てた“アテレコ”映像なのです。
人気アニメであればあるほど、スケジュールや費用面などの理由により、新規でオリジナル映像を制作することは非常にハードルが高いため、このように「本編シーン」を活用したコラボ映像の活用事例は多数あります。
もともと「進撃の巨人」は、シリアスな物語ながら、原作者・諌山創氏によるものをはじめとした“公式パロディコンテンツ”も愛されてきた作品です。一方「uno」は、かっこいい世界観訴求だけでなく、世の中の男性に寄り添うためにウィットに富んだコミュニケーションも展開しているブランド。
そんな「進撃の巨人」と「uno」のコラボにより、「シリアスなシーンのセリフをスキンケアに関する会話に差し替えたシュールな会話劇」が、「進撃の巨人」ファン層にポジティブに受け入れられました。ファンファーストで、ファン心理に寄り添った熱量の高いコンテンツを提供したことが、結果的に話題化の鍵となったのです。
そして、このシュールさ、面白さを生んでいるのが、シリアスなシーンと「unoのオールインワンシリーズは、肌トラブルを未然に防ぐ」というメッセージの間にある“ギャップ”です。「ブランドのメッセージ自体が、パロディコンテンツの面白さを担っている」ことにより、伝えたいメッセージを強く印象付けると同時に、ブランドへの好意もリフトできています。
単に「人気アニメとコラボしたから話題になった」というだけではなく、コンテンツファンをポジティブな形で巻き込み、化学反応を起こすことで、ファンと企業・ブランドの間に新たなコミュニケーションが生まれた事例といえるでしょう。
リスクだらけのパラディ島に第一生命オフィスを設立!?キャラ目線で物語るメリット
企業が発信するメッセージは、いくら強く伝達しても、そのブランドの扱う商材に興味のない人にとっては目に留まりにくいです。
かねてより「若年層へのリーチ」に課題を感じていた第一生命は、「進撃の巨人」の世界観とコラボし、意外性のある切り口からコンタクトポイントを広げることに成功しました。
その名も「進撃の保険」コラボキャンペーンです。
基本的には「応募者にはもれなくオリジナル壁紙&バーチャル背景がプレゼントされ、さらには、豪華な限定商品が抽選で当たる」というノーマルなキャンペーンです。
しかし、このコラボのキモは、誰でも参加できるコンテンツ「キャラクター診断」にあります。そこには、若年層が「生命保険」を身近に感じさせる仕組みが用意されていました。
人気キャラクターのリヴァイが、「進撃の巨人」の舞台となるパラディ島に第一生命オフィスを設立。キャンペーン参加者は、オフィスに新しく配属された新米という設定で、リヴァイから巨人を討伐するバトルに参加するかの判断を求められるところからコンテンツは始まります。
さらにコマを進めていくと、ユーザーは、巨人とバトルをするという名目で「キャラクター診断」に挑戦することができます。キャラクター診断(バトル)は、親近感が湧く遊び心ある質問が並んでおり、一見、保険とは関係がないようにも感じます。まるで原作アニメのゲームに参加しているような感覚で、「保険」の入り口ともいえる"リスク・マネジメント"を考えるキッカケを持てるのです(※)。
※リスク・マネジメント=さまざまな人生のリスクを、できるだけ損失を回避し、リスクを最小限に抑えるようコントロールすること。「保険」は損失に対する経済的補填のための手段として使われる。
通常、広告宣伝をキャラクターに代弁してもらうことこそ、コンテンツコラボの醍醐味でもあります。しかし、本キャンペーンでは、あえて「保険商品の提案」は行いませんでした。それよりも、キャンペーン参加者が楽しく、作品の世界観に没入できる遊びコンテンツを独自で制作することで、若年層に自然と「生命保険」を身近に感じさせることに注力したのです。
なお、本キャンペーンを既存顧客にメールで告知したところ、通常の約2倍の開封率となりました。意外な手法でアプローチすることで、新規層開拓だけではなく、「休眠顧客の活性化」や「顧客満足度の向上」にもつながった事例でした。
以上、駆け足ながら「進撃の巨人」の三つのタイアップ事例をご紹介しました。
今回見てきたように、漫画やアニメといったコンテンツとのタイアップは、企業・ブランドの付加価値を高め、課題解決の鍵となり、さらには顧客との関係性を強化するコミュニケーションツールにもなりえます。
同時に、コンテンツホルダー側にとっても、IP(知的財産)の露出宣伝となるタイアップは魅力的です。そして、話題を創出するためにも、作品ファンに刺さるクリエイティブを届けることは欠かせません。
つまり、コンテンツタイアップを成功させるには、
- 企業・ブランド
- 原作者を含むコンテンツホルダー
- 作品ファン
の三者がWin-Win-Winとなる必要がある、といえるでしょう。
そして、企業の課題解決に寄り添うクライアント側の視点と、アニメ製作委員会に参画をするコンテンツ側の視点、双方の視点を持つ電通コンテンツビジネス・デザイン・センターだからこそ実現できるWin-Win-Winな関係があると考えています。
本連載では、次回以降も漫画・アニメコンテンツと企業・ブランドがいかにコラボレーションできるのかを見ていきます。お楽しみに!