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売り上げ全体をマネジメントする「SN理論」とはNo.1

デュアルファネルの「外」の世界

2022/03/03

<目次>
「人はどういうふうに物を買うのか」を見直す
「関心のない人たち」が売り上げに占める割合
口コミと会話の購買への影響
デュアルファネル、アウトサイドファネル、近接者集団

 

 

「人はどういうふうに物を買うのか」を見直す

電通ではクライアントの売り上げ拡大・顧客理解に貢献するために、「デュアルファネル(※1)」を意識した効率的なマーケティングを実践しています。

デュアルファネル
※1=デュアルファネル
「新規顧客獲得」へとつなげるためのファネルと、「既存顧客育成」へとつなげるファネルを融合したファネルのこと

この考え方を土台に、電通社内横断の「SNプロジェクトチーム(※2)」では「売り上げ全体のマネジメント」と「広告・PR活動の価値の新しい可視化」という視点から、「人はどういうふうに物を買うのか」を行動経済学的視点で見直す研究を進めていました。

※2=SNプロジェクトチーム
電通社内のマーケティング部門・データソリューション部門・メディア部門の専門家による社内横断研究チームです。「SN」は研究成果の要点である「広告のシグナル作用/ノイズ作用」にちなんでつけられました。


本連載では、このプロジェクトの調査分析の結果を踏まえた、新しいマーケティングの考え方「SN理論」をご紹介します。

この理論では、以下のようなキーワードが登場します。

【SN理論のキーワード】
【SN理論のキーワード】

聞きなれない言葉が多数登場しますが、連載を追ってお読みいただければ、マーケティングを考える新しい視点をご理解いただけると思います。

「関心のない人たち」が売り上げに占める割合

電通では、7つの日用消費財カテゴリを買った人に対して調査を実施しました。質問した内容は以下の通りです。

  1. 「買った商品に対して関心があったか?」
  2. 「その商品カテゴリに対して関心があったか?」

以下のグラフは、それぞれのカテゴリの購入者における「商品カテゴリにも、買った商品(購入銘柄)にも、関心のない人」の割合を算出したものです。

7カテゴリの購買者分析
電通自主調査(2021年7月)

カテゴリによって数値にばらつきはありますが、平均して40%の購入者は「商品カテゴリ、購入銘柄ともに関心がない」人に分類される結果となりました。

今回の調査対象銘柄は、各カテゴリで認知度の高いものばかりです。「よりメジャーなブランドになる」ということと、顧客基盤の中にある程度の「関心の低い層」を取り込むこととの間には、なんらかのつながりがあると見るべきでしょう。

口コミと会話の購買への影響

もう一つ、調査結果から興味深い事実をご紹介します。
以下のグラフは、レモンサワー(5銘柄)を買った人を「カテゴリないし銘柄に関心ある人」と「カテゴリにも銘柄にも関心ない人」に分類し、どのような違いがあるのかを分析したものです。

実は、関心のある・なしにかかわらず、「買った銘柄について、周囲の人たちやSNSでなんらかの会話をしたこと」が、購買に対して影響を及ぼしています。

購買商品の会話経験
電通自主調査(2021年7月)

このような事象は、読者の皆さまの生活でも経験があることと思います。

例えば

  • 身近な誰かが新商品を持っていたり、その話をしていたりすると、記憶にとどまりやすい。
  • ある映画について、周囲の人、SNS、報道などさまざまな場所で見聞きしていると、見に行きたい気分になる。
  • 価格が高いものを購入するときには、家族と会話をして、同意を得るようにしている。
  • 就職先を決めたとき、みんなが知っている会社・家族に説明しやすい会社を優先した。
     

などなど……。私たちの買い物や行動は、自分の興味・関心だけでなく、意外なくらい周りに影響されているのです。

デュアルファネル、アウトサイドファネル、近接者集団

さて、これらの分析に基づくと、市場を新しい視点でいくつかの領域に分けることができます。

まずは「デュアルファネル」の領域です。ここは、主に「商品に対して関心を高めてくれる」タイプの顧客の領域で、マーケティング活動の中核となります。

顧客の購買プロセスを分解して、商品関心の高まりと売り上げの相関を定量的に評価するさまざまな方法も開発されています。効率的・安定的な事業成長のために、最初に考えるべき領域です。

デュアルファネル

一方で、売り上げを拡張していくと「関心がない顧客」の含有率も高まることが検証されました。こうした層は、いわば「デュアルファネルの外側……アウトサイドファネル」に位置していると考えられます。

さらに重要な要素に、「口コミ」と「人間関係での会話の促進」がありました。購買経験がない人の間でも話題が広まることで、商品が購買する候補に入る機会が広範に作られていきます。これは、デュアルファネル・アウトサイドファネル両方に影響を与える、「近接者集団」の層として、さらに外側に位置します。

こうして出来上がったのが、以下の図です。デュアルファネルをベースに、売り上げを構成する二つの領域を組み合わせたものになりました。これが、SN理論の基盤となる市場の捉え方「(デュアル)ファネルの内側と外側」なのです。

アウトサイドファネルの図

では、この3つの領域(デュアルファネル・アウトサイドファネル・近接者集団)にいる人々は、いったいどのような心理・行動の要件をきっかけにして買い物をしているでしょうか?次回は、この疑問に「購買の3つの習慣」という視点からお答えします。

【調査概要】
電通自主調査概要
調査期間:2021/7/19~2021/7/25
エリア:関東一都六県
サンプル数:4000ss
備考:FMCGジャンル7カテゴリ20銘柄について調査
 
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