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実践!ECマーケティングNo.2

創業93年の老舗菓子店は、なぜAmazon販売に成功したのか?

2022/04/21

実践!ECマーケティング
調査期間:2021年1月~2022年1月、調査内容:「き花」のAmazonでの売り上げ総額(顧客負担の配送料と税込み)。利益は、売り上げ総額から、広告出稿金額(グロス)・Amazon手数料・FBA手数料・自社配送費を引いた金額。


コロナ禍による実店舗での売り上げ減少から、EC(Eコマース)に取り組む会社が増えています。中でもAmazonのように知名度の高いモール型ECプラットフォームへの出店・出品は、大きな売り上げ拡大につながる可能性を秘めています。

しかし、ただメジャーなプラットフォームに出店・出品すれば売れるというほど簡単な話ではなく、大きく売り上げを伸ばすには、さまざまな施策が必要です。

本稿では、北海道旭川市の老舗菓子店「壺屋総本店」が、Amazonで看板商品「き花」を販売した事例を紹介。語り手は、壺屋総本店と二人三脚でAmazon施策を行った、ECコンサルティング会社・Barriz代表取締役社長の徳永潤一氏です。

株式会社 Barriz
ECを中心とした広告・マーケティング・プロモーションのコンサルティング会社。Amazonにおいて自社製品の販売を検討されている企業に向けて、出品から集客改善施策までをトータルでサポートするサービス「Zenmai」を提供している。


 

コロナ禍で観光需要が減り、売り上げが低迷

き花
ホワイトチョコレートをアーモンドガレットでサンドした「き花」。モンド・セレクションは現在までに34年連続で金賞以上を受賞。2011年には「日本一の最多受賞」として特別認定された。

壺屋総本店は1929(昭和4)年創業、今年で93年目を迎える菓子製造&販売会社です。北海道内に20の自社店舗を展開。看板商品の「き花」は、北海道土産として空港などへも広く展開しています。

しかし、コロナ禍による外出自粛や移動制限に伴い、観光・出張需要が激減。特に観光客が大きく減ったことで観光ルートでの売り上げ減が顕著でした。

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これは、2020年に新千歳空港の同じ場所で撮影した写真です。ご覧の通り、「緊急事態宣言」「GoToトラベル実施中」など、状況に応じて人流は大きく変動するため、現在も感染者数の増減や政府・自治体の施策を踏まえながら、毎月の製造数を決めています。

新たな需要の発掘や販路の拡大が急務となる中、壺屋総本店は、「コロナ禍の間は、新たな種まきの時期」とポジティブに捉えて、withコロナ時代にマッチしたアイデアを実現していきました。

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ECについては、以前から自社サイトは開設していました。しかし、ユーザーインターフェース(UI)がスマートフォンに対応していないうえ、サイト更新も集客もままならない状況でした。また、Amazonにも出品していましたが、こちらもほぼ放置状態で売り上げは芳しくありません。そしてこれらのEC施策をテコ入れしようとしても、ウェブ専任の人材がおらず、何から着手すればよいか分からない状態でした。

壺屋総本店に限らず、このような会社は数多く見られます。私たちBarrizは、壺屋総本店から依頼を受けて二人三脚でEC施策を練り直しました。

EC施策の目的を明確にすれば、どの施策に注力すればよいかが分かる

壺屋総本店の場合は、空港をはじめとした観光ルートでの売り上げ低迷を受けて、「安定的かつ即時的に売り上げを作ること」をEC施策の目的に置きました。

しかし、EC施策と言っても手法はさまざまです。自社ECサイトで販売する方法、Amazonのようなモール型ECプラットフォームで販売する方法、そして昨今ではソーシャルコマースもはやりつつあります。まずは、壺屋総本店がスピード感を持って取り組める施策は何かを検討しました。

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まずAmazonは、ほぼ放置の状態ではありましたが、次のような利点がありました。

・出品済みだったこと
・出品作業が簡単で固定費が抑えられること
・Amazonに多くの人がアクセスするため、自社サイトよりも、集客コストを抑制しながら勝負できること

次に自社ECサイトですが、
・広告費を掛けたとしてもUIの観点から費用対効果が見合わない
・サイトリニューアルには時間と費用がかかるため、「即時的な売り上げ補完」という意図に合わない
と考えました。

そこでAmazonでの新たな施策に取り組むことにしました。私たちBarrizには、Amazonへの出品から集客改善まで各フェーズに合わせた施策をサポートする「Zenmai」というサービスがあります。壺屋総本店の熱意と私たちの知見をベースに挑戦が始まりました。

導入期:売り場を整備し、商品の魅力を最大限ユーザーに届ける

壺屋総本店の最初の課題は、Amazon内で「カート」が取れていないことでした。これでは出品しても売り上げにつながりにくくなります。

Amazonには「1商品1ページ」というルールがあります。同じ商品を複数のショップが販売している場合、商品詳細ページのカートを取れるのは1ショップのみ。それ以外のショップはページの目立たないところに表示されます。買い物をするときに多くの人は商品詳細ページ右側の「カートに入れる」をクリックして購入します。商品詳細ページにショップが表示されることを「カートを取る」といい、Amazonで商品を売るために最も重要なことといっても過言ではありません。

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カートが取れない原因は諸説ありますが、「価格」と「配送スピード」の2点が特に重要視されているといわれています。

価格に関しては、壺屋総本店は値引き販売を行っていないため、クーポン施策や柔軟な価格調整はできませんでした。

一方、後者の配送スピードであれば、「フルフィルメント by Amazon」(以下FBA)に切り替えることにより配送スピードを早めることができます。FBAとは、注文を受けた商品のピッキング、梱包、発送からカスタマーサービスまで、すべてをAmazonが代行してくれるサービスです。FBAを利用することでAmazonプライム(有料の会員制プログラム)の対象になり、配送スピードが上がります。

私たちは、FBAに切り替えたことでカートを取ることができました。これで、Amazonで販売する上で最低限の土台が作れました。

他にも導入期では、Amazonの販売ロジックを理解した上で、「売り場」を整備して接客環境を整えることが重要です。SEO対策を意識しながら、「き花」の魅力を伝えられるように、商品詳細ページの改修を行いました。

ページ訪問者が最も読み込むのが、通称「A+」と呼ばれる、ページ中段の商品紹介コンテンツです。画像とテキストを組み合わせ、製法やこだわりなど、商品の情報を魅力的に伝えることで、購買意欲を高めることができます。

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また、Amazonには「バリエーション」という機能があり、「枚数違い」「味の違い」など、同一モデルの複数の商品を一つのページにまとめて販売できます。店舗の陳列棚に各商品を並べるような感覚で、ユーザーが欲しい商品を探しやすいよう導線を作りました。

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導入期の取り組みについて、壺屋総本店の担当者は、「初めは『カート』も理解していないレベルでした。そこで、Amazonの仕組みを理解することから始めました。やはり自分で理解していないことを、Barrizに丸投げして任せるのでは、成長も継続もできません。とはいえ、ECマーケティングのノウハウや情報、さらに技術的なことは、自分で情報収集しても限界があるのは事実です。商品の魅力を最大限に伝え、売り上げをアップさせるために何が必要なのか?Barrizから学ぶことは多々ありました」と言います。

成長期:Amazon内で売れる商品の「スパイラル」に乗るために

導入期の準備が整ったら、最も重要な「集客、売り上げ増加施策」のフェーズになります。まず、Amazonの売り上げ最大化において重要な要素は、「商品詳細ページ閲覧数×購買転換率×商品単価」です。

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この中で、なぜ「商品詳細ページ閲覧数」を増やすことが重要なのか?ここではAmazonが推奨している「売れる商品のスパイラル」(下図)に沿って説明します。

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商品詳細ページの「閲覧数」が増えて「販売数」が増えると、Amazon利用者が検索BOXで自然検索(例:北海道 お菓子)したときの「掲載順位」が上がります。「掲載順位」が上がるとさらに「閲覧数」が増えるスパイラルになります。逆もしかりで、「閲覧数」が少ないと、上図の左のように「埋もれる商品」サイクルに陥ってしまいます。

このように、Amazon内においては「閲覧数」と「販売数」を増やすことが、「掲載順位」を上げるための最重要指標です。そして、「閲覧数」を増やす手段としては、広告が非常に重要です。「き花」においても、認知から購買まで、目的別に3つのメニューを組み合わせて広告出稿を行いました。

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8月10日から広告運用を開始して、翌日には“北海道 土産”のキーワードで検索すると、2種類の「き花」が上位に表示されました。広告出稿→閲覧数増加→販売数増加→掲載順位のアップが確認できました。

このように、販売数の実績を作っていくことで、関連ワード(北海道、お菓子、土産、ギフト、人気など)での自然検索順位も上がります。そして、広告経由以外の流入が増え、広告経由以外の売り上げが増加し、「売れる商品」のスパイラルに乗ることができます。「き花」は、2022年1月時点で、取り組みを開始した2021年6月対比で利益を734%伸ばすことができました。

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調査期間:2021年1月~2022年1月、調査内容:「き花」のAmazonでの売り上げ総額(顧客負担の配送料と税込み)。利益は、売り上げ総額から、広告出稿金額(グロス)・Amazon手数料・FBA手数料・自社配送費を引いた金額。

壺屋総本店の担当者からは、「Amazonでここまで売り上げと利益を伸ばせるとは思っていませんでした。伸びた要因は、地道にAmazon販売のPDCAを回してきたところにあります。加えて、Barriz担当者に熱量があったことも大きいですね。EC施策は、店舗側と同じ熱量でゴールに向かってくれる会社と取り組むことが成功への重要な要素です」と、ありがたい言葉をいただきました。

EC参入のカギは、「目的の明確化」と「売れるスパイラル」を知ること

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Amazon施策の実行サイクルをまとめると上図のようになります。本稿では、この中の導入期と成長期の施策について紹介しました。ECへの参入は、Amazonのようなモール型ECプラットフォームへの出店・出品以外に、自社サイトを立ち上げ自ら集客・販売する方法もあります。どちらが良いということはなく、自社を取り巻く現状を把握した上で、「課題」や「目的」に応じてどのチャネルを選択すべきかを見極めていくことが大事です。

なお、実店舗の運営には多大な労力と人員、知見が必要なのと同様、EC運営にも戦略策定やロジックの理解、実運用における人員やコストの確保が必要です。壺屋総本店の担当者も、「リアル店舗がメインの商売では、社内でECはないがしろにされがちです。しかし、Amazon施策に取り組んでみて、改めてECの立ち位置を考えさせられました。ECはオマケの事業ではないと実感しました」と言います。

そしてECでも、実店舗同様、段階に応じた施策の実行と、運営していく中で生じる課題に対する検証と改善を繰り返していくことが成功へのカギとなります。

ECマーケティングについては、ソーシャルコマースに取り組んだ、下記の記事も参照いただけると幸いです。

D2Cを支援する会社が、自らソーシャルコマースを実践!得られた知見とは? 

※ Amazonは、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の登録商標です。 
 

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