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DENTSU DESIRE DESIGNが考える、「欲望理論」からのマーケティング再構築No.6

消費者を “欲望”視点でタイプ分類。現れた人物像は?

2022/11/28

    DENTSU DESIRE DESIGN(電通デザイアデザイン:以下DDD)」は、企業から見えにくくなってきた現代の消費者像を、今一度「欲望(Desire)」を起点とした消費意識からひも解こうとするプロジェクトです。

    本連載では、DDDメンバーが、ニーズの奥にある「欲望」を起点とした消費者インサイトへのアプローチ方法と今後の展開について紹介していきます。

    今回は、電通マクロミルインサイトの工藤陽子が消費者の「欲望」のタイプの類型化。つまり世の中には大きくわけると、どんな種類の欲望を持つ人が存在するのか、欲望を軸にしたクラスター分析をご紹介します。

    <目次>

    それぞれの欲望の方向性から消費者を類型化した「欲望クラスター」

    多方面に欲望が強い「360度パワフル」

    所有欲と繋がり欲が強い「わたしたちの好き最優先」

    所有欲が強く、利他貢献欲求は弱めの「ネバ―・オールド」

    所有と愛情欲求が高く、繋がり欲求は低い「オウチ弁慶」

    それぞれの欲望の方向性から消費者を類型化した「欲望クラスター」

    「消費」へとつながるデマンドやニーズの前に、今の消費者にどんな欲望があるのか。因子分析で抽出した11の欲望因子(詳しくは第3回記事を参照)をもとに、DDDではクラスター分析を行いました。

    クラスター分析は、消費者の個々の欲望の方向性で  似た人同士をくくり、生活者を大きくグループわけしたものです。
    今回見えてきたクラスターは、全部で10タイプあります。

    DDD連載#6_図版05
    電通「心が動く消費調査」の調査概要はこちら

    この10タイプの中から、今回は主に、4つをご紹介します。

    DDD連載#6_図版06DDD連載#6_図版08DDD連載#6_図版07DDD連載#6_図版09

    多方面に欲望が強い「360度パワフル」  

    DDD連載#6_図版01-a

    「360度パワフル」は  、多方面での欲望因子への反応が高く、欲張りなクラスターです。

    全体と比べて最も強い欲望項目は「人に影響を与えたい・コントロールしたい」。
    現代はSNSで関係が広がり、多様な繋がりがうまれ、誰でも複数のコミュニティを持つ時代です。そんな今、影響力のある人間を志向する「360度パワフル」にとっては、流行や話題を知っているだけでなく、社会貢献意識も高く、多方面に“わかっている”ことが重要になりそうです。

    また、一方的な承認欲求だけではなく、きちんと人に役立っている・ワークしていることも志向しています。

    消費行動では、特別な体験と自身のアップデートが好きなので、「熱い」「冷たい」といった極端な身体感覚での特別感があり、心身ともに整う“サウナ”はまさに象徴的な消費といえます。

    心が動く消費へのキーワード仮説は、

    • わかっている感のあるもの
    • 自身をアップデートするもの・モチベーションをあげるもの
    • 仲間や人と共有できる特別体験

    となり、同調査アンケートでのこのクラスターに分類される人の「心が動いた具体的な消費」のコメント例は次の通りです。 

    DDD連載#6_図版01-b

    所有欲と繋がり欲が強い「わたしたちの好き最優先」

    DDD連載#6_図版03-a

    「わたしたちの好き最優先」は、「所有欲」と「繋がり欲」二方向への欲求の強さが特徴的で、デモグラでは女性、特に20~30代女性が多いクラスターです。

    好き(勝手)にお金を使いたい・はまりたいといった物欲・消費欲が旺盛。
    沼にはまって“#〇〇好きと繋がり”、自身の好き・推しを他者と味わい・増幅。どっぷりその瞬間・モーメントを味わい楽しんでいるタイプと推察されます。

    “好き”を楽しむ消費欲が旺盛ですが、予算にも限りがあるからか、お得情報を使いこなすなど、 賢い買い方への関心が高そうです。

    そんな「わたしたちの好き最優先」の消費行動としては、お得に買ったり売ったり、自分の好きや掘り出しものが見つけられる「メルカリ、楽天ラクマなどのフリマアプリ」の利用が高いのが象徴的です。

    心が動く消費へのキーワード仮説は、

    • きれい、 かわいい、 おいしいなど、ちょっとしたすてき・この瞬間の幸せ
    • 推しに関する消費・推しからモチベートされる消費
    • 好きで繋がる・一緒に味わう

    となり、同調査アンケートでのこのクラスターに分類される人の「心が動いた具体的な消費」のコメント例は次の通りです。

    DDD連載#6_図版03-b

    所有欲が強く、利他貢献欲求は弱めの「ネバ―・オールド」

    DDD連載#2_図版02-a

    「ネバ―・オールド」は、全体と比べたときに欲求項目として「セクシーな体験をしたい」が特に強く、その他「人と出会いたい」、「モノを集めたい」の強さが特徴です。

    男性が多いクラスター。年齢は若年だけでなく、男性40~50代が平均より多め。
    年をとっても大人として落ち着くのではなく、いくつになってもモテたい、欲しいモノを手に入れて楽しみたい。趣味人・ギア好きなど、マイワールドがあり、自分なりの審美眼が強いタイプである可能性も示唆されます。

    この層の象徴的な消費行動は、「FIRE(※)」の経験率の高さです。
    社会的成功やポジションより、いつまでも夢や艶のある人生や、自分らしく自由で豊かな人生を求めていそうです。

    ※ = FIRE  
    経済的な自立と早期退職(リタイア)を意味する「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取った言葉。お金への不安から解放された状態で仕事をしないで暮らす新しい生き方として近年日本でも注目を集めている。
     

    心が動く消費へのキーワード仮説は、

    • 自分をかっこよく/きれいに見せるもの 
    • 趣味領域の自分を拡張するもの・没頭できるもの 
    • 純粋にかっこいい・美しいモノやギア

    となり、同調査アンケートでの、このクラスターに分類される人の「心が動いた具体的な消費」のコメント例は次の通りです。  

    DDD連載#6_図版02-b

    所有と愛情欲求が高く、繋がり欲求は低い「オウチ弁慶」

    DDD連載#6_04-a

    「オウチ弁慶」は、「所有欲」と、「愛したい愛されたい欲」が強いクラスターです。

    愛し愛されたい欲は強いものの、「繋がりや人との出会い欲」「人から認められたいといった承認欲求」は平均より低め。交流を広げるより、身近な人との関係が大事。関心が自身の身の回り・生活範囲にあるタイプと推察されます。

    価値観も、他人からの評価や人との比較ではなく、あくまで自分の納得が大事。
    自分と家族や友人など身近な人との関係を大事に、マイペースに日々の生活を愛(め)でる暮らしを良しとしていそうです。

    心が動く消費傾向としては、家電や日用品、書籍・DVD・配信サービスといったコンテンツなど、おうち時間を快適に・豊かにするものが多く挙げられます。消費行動としては「通販サイトのセール(Amazonタイムセール、楽天スーパーSALEなど)」の利用率が高いのが象徴的です。  

    心が動く消費へのキーワード仮説は、

    • 快適、安心、便利など、毎日を心地よくするもの
    • 身近で楽しく。家での空き時間・おうち時間を充実させるもの
    • 暮らしにいろどり。ちょっとした心豊かな時間をつくるもの。家族や身近な人と味わうもの

    同調査アンケートでの、このクラスターに分類される人の「心が動いた具体的な消費」のコメント例は次の通りです。

    DDD連載#6_図版04-b

    この4つのクラスターは、10クラスターの中でも「モノを持ちたい所有欲」が共通して高い層ですが、併せ持つ他の欲望とのかけあわせで、キャラクターも消費で満たしたい欲望も変わってきます。

    DDDでは、生活者の欲望(Desire)を捉えることで、より望ましい体験設計は何か、という発想からマーケティング施策を検討。より生活者の心を満たす商品・サービスづくりをサポートしていきます。
    次回は、各クラスターへのアプローチ方法や、どのような欲望を刺激すれば消費行動へつながるのかの“打ち手”のアイデアをお伝えしたいと思います。

    【調査概要】
    タイトル:電通「心が動く消費調査」
    調査目的:変化し続ける社会環境により、可視化されにくくなりつつある消費者意識を消費者の欲望視点から分析し、今後の日本の消費社会を読み解く 
    対象エリア:日本全国 
    対象者条件:20~74歳 
    サンプル数:3000サンプル(20〜70代の6区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
    調査手法:インターネット調査
    調査期間:2021年5月調査 2021年5月18日(火)~21日(金)
    2021年9月調査   2021年9月3日(金)~6日(月)
    2021年12月調査 2021年12月16日(木)~19日(日)
    2022年5月調査   2022年5月12日(木)~15日(日)
    調査機関:電通マクロミルインサイト
     
    ※クラスター傾向は上記4回分の調査より傾向を抜粋
    クラスター分析は2021年5月調査データで行い、以降はクラスター再配置による再現を行っている。
     

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