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スタートアップを「投資×伴走型」で支援!電通のファンドが始動

2023/05/29

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電通グループのコーポレートベンチャーキャピタル「電通ベンチャーズ」と、スタートアップ企業の支援を行う電通の「スタートアップグロースパートナーズ」(以下、SGP)。両組織が、2023年4月より本格的に共同展開を開始するのが「SGPファンド」(電通ベンチャーズSGP投資事業有限責任組合)です。

電通グループの潤沢なリソースを最大限に活用し、投資だけでなくベンチャー企業のグロース支援を、ともに、長く、とことん行うところが特徴。本格稼働に向けた思いや具体的な支援内容、今後の展望などを、電通ベンチャーズ・マネージングパートナーの笹本康太郎、SGP・マネージングディレクターの山本初直が語りました。

スタートアップのグロース支援に対するニーズは多様化。

──まずはおふたりのご経歴についてお聞かせください。

笹本:電通でマーケティングや営業を担当し、その後留学を経て経営企画室に異動。国内外スタートアップへの投資や新規事業の開発などに携わり、2015年、コーポレートベンチャーキャピタルである電通ベンチャーズの立ち上げに参画し、現在に至ります。

山本:私は電通に入社し、営業として、大手化粧品会社様、大手飲料メーカー様、ゲーム会社様を担当、2019年から2021年末まで、NTTドコモ様と電通のJVであるD2Cにて代表取締役副社長として事業面の統括をしていました。2021年1月からはスタートアップのグロースを支援する電通スタートアップグロースパートナーズで組織長をしています。

──2023年4月より、本格的にSGPファンドが稼働したとのこと。SGPファンドとはどのようなものなのでしょうか。また立ち上げの背景を教えてください。

笹本:ひとことで言うと、「ベンチャーキャピタル(VC)×伴走型グロース支援」の取り組みですね。これまで電通ベンチャーズで運用してきた2つのファンドでもさまざまな投資先支援を行ってきたのですが、今回は特にSGPとの連携を通してより専門的に、本格的に伴走型グロース支援を強化していくことを目的に新しいファンドを立ち上げました。

昨今のスタートアップ業界の潮流として、グロース支援に関するニーズの多様化・高度化があります。新しいテクノロジーの登場やそれに伴う業界構造の急激な変化等を受けて、マーケティングやセールス、パートナーシップのアプローチ等に関しても多様かつ高度化したニーズが出てきています。

またそれに対応する形で、VC側からのソリューション提供ケイパビリティも進化してきています。USのVCであるa16zがその先駆けとも言われていますが、VCの本来の役割である資金提供に加えて、HRやマーケティング、セールス支援等に関しても専門的なソリューションを提供していくという動きが加速しています。

一方で、「投資と専門的なグロース支援を組み合わせたビジネスモデル」に関しては、さまざまな難しさが指摘されているのも事実です。「ソリューション提供にかかる追加コストはどのように設定し、誰がどのように補てんするのか」「投資家とソリューション提供者という立場の間で利益相反が起こりうるのでは」「アウトソースに頼ることで投資先自身のケイパビリティ開発が進みにくくなるのでは」等が主な論点かと思いますが、このような文脈のもと国内外でさまざまなプレイヤーが試行錯誤を続けている、というのがわれわれの現状認識です。

私たちは、これらの論点は丁寧な設計を行えば整理可能なものであると考えており、その取り組みを本格的に進めていくために組成したのがSGPファンドです。

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電通ベンチャーズ・マネージングパートナー 笹本康太郎

「徹底した伴走」と「蓄積した投資知見」が強み

──SGPファンドの他にはない強みについて、お聞かせいただけますか?

笹本:われわれはこれまでも電通グループが持つ幅広いソリューションを活用して投資先支援を行ってきたのですが、先ほど述べた通りスタートアップ企業側のニーズは常に変化しており、それに対応するソリューションも進化させ続けていく必要性を感じていました。

ですから、SGPファンドでは、電通の従来のソリューションの限界も正しく理解した上で、今スタートアップ企業に必要とされる新たなソリューション開発を進めていくことも目的の一つとしています。もちろん目の前の支援を通してしっかりバリューを出しながらというのが前提ではありますが、業界全体の進化にもつながるような新しいソリューション開発を、投資先スタートアップ企業の方々との連携を通して進めていけるのが理想だなと考えています。

強みは、電通ベンチャーズで蓄積してきた投資面での知見と、SGPが持つスタートアップへのソリューション提供の知見を有機的に組み合わせていけることだと考えています。この領域では多くのプレーヤーがさまざまなチャレンジを続けていますが、各種ステークホルダーの方々から学ばせていただきつつ、電通ならではの取り組みとして提供価値を進化させていく予定です。

山本:笹本の話にあるように、SGPファンドは、電通にある有形・無形のアセットを活用していただき、スタートアップ企業のグロースをありとあらゆる側面で支援をする取り組みでありたいと思います。電通グループのアセットは、数千を超えるクライアントとの長きにわたるお取引による、幅広い業種での知見と強固なネットワークがあることです。

人材面でいうと、戦略プランナー、クリエーティブ、コンサルタントなどのプロフェッショナル人材が数千人規模でいて、質の高いサービスをAllways Onの体制でご支援することが可能です。特に、クリエーティビティ、データ活用力、そしてメソッドやプロダクトは注力をしています。またわれわれSGPはビジネスプロデューサーの集団ですが、電通グループの多様な人材と最新メソッドと暗黙知を統合し、経営者の伴走支援を総合的に実現する、実行力に強みがあります。

これまではナショナルクライアント様と一緒に、経営、事業、マーケ、川上から川下までのご支援を最前線でやってきたのがビジネスプロデューサーです。クライアントファーストで脳に汗しながら、とことん伴走してやってきました。このフロントで経験を積んできたメンバーが中心となり集まって2021年に立ち上がった新組織が、SGPです。

SGPファンドも出資をするだけでなく “スタートアップ企業のパートナーとしての伴走支援”を川上から川下までしていきたいと強く思っています。事業成長にむけて、「実際どうするの?」の部分でご一緒に汗をかく。そこが、他のベンチャーキャピタルと異なるところと言えるでしょう。

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SGP・マネージングディレクター 山本初直

「事業のモメンタムをつくる」ことを目指し、18領域のソリューションを開発中

──注力したいと考えている分野や、ターゲットとしているステージはありますか?

山本:特に分野は限定していません。電通自体も分野を問わずさまざまなクライアントと向き合っていますし、それぞれの領域に関するスペシャリストが数多くいますから。僕らも同じように、多彩な業界のスタートアップ企業と関わっていきたいと思っています。

ただ、僕らの価値が発揮できるところとご一緒したいなという思いはありますね。僕らの人材やソリューション、あるいは新たに開発していくソリューションの方向性等に、どれだけ共感していただけるか、価値を感じていただけるか。そのようなスタートアップ企業、相性がいいというかCXOの皆様と本質的な議論が可能な企業と共に歩んでいきたいと思っています。

スタートアップ企業のフェーズについても、厳密には決めていないのですが、アーリーからミドルが中心になるのかなと考えています。これからグッと成長を加速させるぞ、というスタートアップ企業や、アセットが足りないというスタートアップと議論をしながら、私たちのさまざまなリソースをご活用いただきたいと思います。

「支援」という言い方をしていますが、僕らが大上段に構えて「成長させるぞ」みたいなことはまったく考えていません。繰り返しになりますが、「一緒に成長したい」「力になりたい」という思いを強く持っています。スタートアップに秘められたポテンシャル、マインド、熱量というのは、本当にすごい。互いに学び合いながら、刺激し合いながら、長く一緒に挑戦を続けられるような企業とパートナーシップを結びたいと思っています。

──ここからは、支援内容についてお聞かせください。どのような点に注力して支援をしたいと考えていますか?

山本:ひとつは「事業のモメンタムをつくる」ということですね。スタートアップ経営者の大きな関心事として、どのように成長速度を上げ、その結果としてどれだけ企業価値を上げていくかがあると思います。そこに大きく影響するのが、事業のモメンタムです。マーケティング戦略や、その後のエグゼキューション、クリエイティブ、分析、顧客折衝、セールス、IR……。あらゆる面で支援していき、しっかりとモメンタムをつくって、サービスやプロダクトがマーケットに広く浸透していくところまで伴走を続けたいと考えています。

次に注力したいのは、「事業構想や経営戦略支援」です。ご支援する中でも、「優秀なメンバーが自然と集まってくるような強い組織にしたい。」「自立型の強い組織を作りたい」など、人事や組織に対する課題、このような経営者のニーズは高いなと感じます。MVVや事業構想をご一緒に作り、それを作るだけでなく定量的な目標も含めた、具体的な計画に落とし込み、さらにはアクションプランを考え、時には社内の制度に落とし込み、活動を組織の末端に浸透させていく、または外に向けて発信をしていくこともご支援領域と考えています。

もうひとつ注力したいと思っているのが、「マーケットや投資家とのコミュニケーション」の部分です。スタートアップ企業の方々は、みなさん素晴らしい技術や熱い思いを持っている。けれども、それがマーケットや投資家から見たときに、どう成長するのか、価値があるのかが見えづらいことが多いんです。その辺りのコミュニケーションを整理して、資本市場にしっかりアプローチするということをやっていきたいと思っています。

──先ほど「新規ソリューションの開発もやっていきたい」とも言及していましたが、具体的には、どのようなソリューションの開発をイメージしているのでしょうか。

笹本:現段階の仮説として、18の注力領域を設定し、各種ソリューション開発を検討しています。本件は、電通にとってもチャレンジングなプロジェクトです。試験的な色合いも色濃くありますので、電通のリソースと相性がよい領域などを見極めながら、優先的に開発すべきソリューションを整理しているところです。

具体的には、電通のクライアントネットワークを活用したセールスアライアンス支援や、資金調達の際のエクイティストーリー開発支援、クリエイティブ施策での介入等も取り込んだグロースループの構築/運用支援など。海外の事例なども参考にしつつ、これらを実際の投資先支援の取り組みの中で開発・精緻化し、ゆくゆくは汎用的なサービスパッケージとして幅広く展開していければと考えています。

山本:なお、我々が目指すのは、伴走、グロース、そしてきちんと結果につなげることなので、上記のような投資先に対するソリューション提供の対価は、できる限りグロースの結果から得たいと思っています。SGPの稼働に対する報酬設計に関しては、スタートアップ企業のステージや状況に合わせて、柔軟に考えていきたいと思っています。

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スタートアップ企業と大企業をつなぎ、よい変化を生み出していきたい

──電通が今、SGPファンドを本格化させる背景というのは、どのようなところにあるのでしょうか?

山本:そもそもSGPを立ち上げたのは、営業やマーケティングの領域でスタートアップのご支援をしていた社員たちが、「個別にクライアントに向き合うのではなく、連携して向き合ったほうがより質の高いサービスをスタートアップ企業に提供できるのではないか」と、自主的に横断組織をつくったことがきっかけでした。。その後、これを組織化するべきであると若手が会社に提案して、ボトムアップで現在の形になりました。

この提案が実現したのは、電通自体が変わろうとしている時期だったから、というのもあると思っています。今、世の中は、急速に変化しています。Web3.0やジェネレーティブAI、気候変動といったさまざまなトピックが次から次へと現れて、企業を取り巻く環境やルール、マーケティングの在り方なども変わってきました。そのような社会に貢献するためには、企業が変わらなければなりません。電通も、広告マーケティングやクリエイティブだけでなく経営領域に事業を広げる形で大きく変わろうとしています。そんな電通の方向性と、SGPの方向性が合致したのだと思います。

──電通がSGPファンドに取り組む意義についてお聞かせください。

笹本:山本が言うように今は、電通、そして世の中の多くの大企業が、より大きくアップデートする必要がある時代です。こうした時代において、スタートアップとの連携がものすごく重要だというのは、私自身が、この7〜8年電通ベンチャーズの運用を行う中で実感してきたことでもあります。

電通の知見をスタートアップのグロースに役立てたいという面ももちろんあるのですが、スタートアップの技術力やマインドが大企業や日本の社会課題の解決に大きく貢献するという側面も大きいです。「つなぐ」「ハブになる」という点でも、大企業とスタートアップ双方に接して知見を蓄積してきたわれわれが、このプロジェクトに取り組む意義は大きいものと思っています。

山本:投資して終わり、期間限定でさよなら、ではなく、僕たちも変化しながら伴走していきたいと思っています。また、スタートアップにきちんとケイパビリティがたまるよう支援していくことも、僕たちのミッションのひとつです。グロース、ゴール、その先の自走まで、末永く、スタートアップのパートナーでいたいと思っています。

※スタートアップグロースパートナーズのリリースはこちら

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