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奇跡の急成長産業!世界が注目する日本アニメのパワーNo.1

数字でわかる!ANIMEは世界のZ世代へのキラーコンテンツに

2023/09/26

日本のアニメ(ANIME)は海外で大人気!……と聞くと「知ってるよ」と思う方が多いでしょうが、今やアニメの人気は、完全に「次のフェーズ」に突入しています。海外を中心に、わずかこの10年で市場規模が2倍以上に増加している、驚くべき“成長産業”なのです(※)。

※本連載における「アニメ」とは、日本国内で制作された「日本アニメ」作品に限定しています。アメリカ製のアニメーション作品は含みません。

 

その背景には、動画配信プラットフォームの著しい伸長があります。日本で生まれたアニメが、全世界の人々に「リアルタイム配信」されるようになりました。コロナ禍における映像消費時間の爆発的増大も、この傾向に拍車をかけています。

特にデジタルネイティブなZ世代にとって、アニメは「熱狂的なファン向けのニッチなカルチャー」ではなく、「メインストリームのエンタメカルチャー」になりつつあるといっても過言ではありません。

本連載では、電通がアメリカで実施した独自調査の結果を交えつつ、世界におけるアニメ人気に迫ります。第1回は、アメリカ生活の長い電通コンテンツビジネス・デザイン・センターの清水瑛美が、アメリカを中心にアニメ事情の最前線をレポートします!

<目次>
アメリカではアニメに加え、漫画の人気が急拡大。特にZ世代に大異変!

すでにアニメ市場の半分以上は、海外のファンが支えている!

アメリカのZ世代が楽しむエンタメはスポーツ?ドラマ?それともアニメ?

あらゆるジャンルの企業がアニメとコラボし始めている

アメリカではアニメに加え、漫画の人気が急拡大。特にZ世代に大異変!

日本のアニメ産業は近年急速に成長し、2021年には2兆7422億円という産業規模に達しました。もはや桁外れの巨大産業です。

電通は2022年7月、アメリカ全国の18~54歳男女を対象に、同国でのアニメ浸透度および、特にZ世代におけるアニメ消費の特徴を調査しました。(調査概要は記事末尾を参照)

特徴的なファインディングスの一部を見ていきましょう。

サマリー


いかがでしょうか?これは「アニメファンを対象とした調査」ではありません。にもかかわらず、アメリカのZ世代の44%がアニメを視聴していると答えているのです。

また、「アニメ視聴」にとどまらず、アニメの話をする仲間がいたり、さらにはアニメの「原作漫画」を読んだことがあるとの回答も40%を超えました。これも以前とは明らかに異なる傾向で、アニメを起点とした、いわば日本サブカルチャーのエコシステムができているのです。

それぞれのアニメ関与行動について「強く同意」or「同意」と答えた人の割合(対象18〜24歳)
 
特に注目してほしいのが、「原作漫画を読んでいる」という割合の高さです。

“漫画大国”である日本では、まず漫画ありきですが、海外では逆で、アニメ視聴が全ての起点です。アニメは原作の途中までのエピソードを映像化していることが多いため、アニメを1シーズン視聴した後に、「この続きが知りたい」「原作を読んでみたい」という理由から、アニメをきっかけに漫画を読む層が増えているのです。

配信時代になって、米国を中心とした一部の国で、漫画(日本コミック)の驚異的な販売数増加が見られるそうです。今回の調査結果を考慮すると、その中心はZ世代だと推察できます。

筆者は長くアメリカで生活していたのですが、近年は、アメリカの書店に入ると、当たり前のように日本漫画のコーナーを見かけるという体験をしています。

アメリカの書店にある日本漫画コーナー
アメリカ最大の書店チェーン、バーンズ・アンド・ノーブルの漫画コーナー。現地発祥の老舗書店でも、日本の漫画を大々的に取り扱っていた。

ちなみに今回の調査で、「自分はアニメオタクだと思うか」という質問に対しても、Z世代では34%という高い数字が出ています。アメリカのZ世代全体の34%、推計1500万人が、自分のことをアニメオタクだと自認しているのです。これはすごいことだと思いませんか?

もはや、日本発「アニメ・漫画」は、一部のマニアのものではありません。ここ数年間で大きなシフトが起こっていると考えるべきでしょう。

すでにアニメ市場の半分以上は、海外のファンが支えている!

ここでいったん、アメリカでの調査から離れて、世界全体を見渡してみましょう。

アニメの市場の内訳は、当然ながらずっと国内のシェアが大きかったのですが、動画プラットフォームの普及とともに、2015年ごろから海外のシェアが急伸。2020年には、とうとう海外市場が日本市場を上回りました。

日本と海外を合わせたアニメの産業規模は2020年にコロナの影響を受けて一時的に落ち込みましたが、2021年には過去最高の2兆7422億円に達しました。これは10年前のほぼ2倍という規模で、今や希少な“成長産業”となっています。

こうした市場構成の変化の背景にはさまざまな要因がありますが、やはり大きいのはVideo on Demand(VOD)と呼ばれる動画配信プラットフォームの普及です。Netflix、Amazon Prime、Disney+といった各プラットフォーマーが、高品質で多様なアニメを、世界中に積極的に配信するようになったのです。

この数年はステイホームの時間が増えたことで、「家で動画の配信を見る」という行為が世界中で定着しました。今や誰もがスマホやテレビで動画コンテンツを楽しんでいます。プラットフォーマーは、急増する需要に応えるべく、世界中から高品質かつ多様な動画コンテンツの供給に力を入れるようになりました。

そんな中で彼らが注目したコンテンツの一つが、日本のアニメだったのです。今や日本で生まれたアニメは瞬時に翻訳され、全世界にほぼリアルタイムで配信されるようになりました。

日本のアニメは全世界にほぼリアルタイムで配信!

世界同時配信ということは、ファンのモーメントも全世界でシンクロします。アニメ制作者サイドもこの状況に対応しており、X(元Twitter)やYouTubeの公式アカウントは日本語と英語版を用意して、海外ファンに向けて情報発信をする作品も出てきました。作品によっては、公式YouTubeチャンネルのPV視聴層が、海外流入の方が多いという現象が起こっているほどです。

余談ですが、配信が動画視聴の主流となる中で、従来の視聴率とは異なる指標で動画コンテンツの人気を図るサービスが出てきています。中でも注目を集めているのが、ドラマをはじめとするシリーズ番組の「人気度」を予測するパロット・アナリティクスという調査会社です。

同社は、SNSでの言及された量やエンゲージ率など、複数の要素を分析することでコンテンツの人気度を評価し、ランク付けします。そして2021年、並み居る人気ドラマシリーズが並ぶ中で、なんと日本のアニメ「進撃の巨人」が1位を獲得しました。

かつては一部の人気作品以外は翻訳も配信もされず、海外ファンには届きませんでしたが、今や世界展開するアニメ作品の総数も圧倒的に増えました。そして多様なジャンルのアニメ作品が配信されることで、これまでにアニメに触れることのなかった人たちがアニメを視聴する可能性が増え、その結果アニメ視聴者の総数を増やすことにつながったのです。

アメリカのZ世代が楽しむエンタメはスポーツ?ドラマ?それともアニメ?

次にご紹介する調査結果は、「数あるエンタメコンテンツの中で、アニメがどのポジションに位置付けられているのか」を明らかにしたものです。

比較対象となるエンタメコンテンツは、「映画」「音楽」「ゲーム」「テレビドラマ」「インフルエンサー(YouTuberなど)」「スポーツ(MLB、NFL、NBA)」です。

アニメについては、できる限りトレンドを正確に分析するために、「キッズ&ファミリー」「アクション系」「ヒロイン系」「80~90年代」の4カテゴリに分割して調査しました。ただしこのカテゴリ分けは、あくまでも便宜上のものとご理解ください。

今回の調査ではアニメを4ジャンルに分類し、いくつかの作品についてヒアリングした

この調査における一番の発見は、全世代 vs. Z世代で比較した際の、「アニメ」と「スポーツ」のポジションの違いです。

次のグラフは、「各エンタメカテゴリに対して好きだと思うものを答えてください(複数回答可)」という質問に対して、「はい」と答えた回答者の割合を示したグラフです。まずは全世代で見てみます。

各エンタメカテゴリに対して好きだと思うもの(全世代)
アニメと比較すると、スポーツの中でもNFLに対する好意度が高いことがわかります。

では同じ設問をZ世代に限定してみるとどうでしょう。上のグラフで上位に位置付けていたNFLを含めたいわゆるアメリカ3大スポーツよりも、アニメへの好意度が上回る結果となったのです。

各エンタメカテゴリに対して好きだと思うもの(Z世代)

筆者がアメリカの大学に通っていた2000年代初期は、アニメや漫画といった日本カルチャーは一部の熱狂的なファンに楽しまれているニッチなものでした。まさか、NFL、MLB、NBAといったメジャースポーツよりも、アニメを好きだと答える人が多くなる日が来るとは想像もできませんでした。

しかし今、Z世代のセレブやアーティスト、アスリート、インフルエンサーといった新しいスターたちは、ごく当たり前のようにアニメへの好意的な意見を発信しています。

例えばエンゼルスの大谷翔平選手が、アニメ・漫画ファンのチームメートにおすすめ作品を教えていることがニュースになったりしています。また、2020年「Billboard HOT 100」年間チャートのトップ25に2曲を送り込んだ1990年代生まれのMegan Thee Stallionも「僕のヒーローアカデミア」をはじめとするアニメの大ファンであることを公言しています。

NFLの大スター選手や、10代の支持を集める人気のポップスターが、アニメネタをSNSに投稿してバズっている光景はもはや珍しくありません。これらは本当に時代が変わったことを象徴する現象として、筆者の中で象徴的な光景でした。

あらゆるジャンルの企業がアニメとコラボし始めている

最後は企業によるアニメを活用したプロモーション展開について考えてみましょう。

これまでもさまざまな企業が漫画・アニメコンテンツとタイアップをしてきましたが、特に近年の特徴としては、タイアップの主目的が「Z世代をはじめとする若年層へのアプローチ」であるケースが多くみられます。

歴史ある人気企業でも、若年層に振り向いてもらうために苦労しているケースが世界中で見られます。世界中のZ世代に多種多様なアニメが浸透した今、タイアップ先として注目が集まるのは自然なことと言えるでしょう。

日本ではあまり知られていませんが、例えば台湾のピザハットがアニメ「進撃の巨人」とのコラボピザを展開するなど、世界各国で独自のタイアップ商品が生まれたり、コラボキャンペーンが行われたりしているのです。

進撃の巨人×ピザハット

今回の調査では、アメリカのZ世代に対して、「エンタメコンテンツとのコラボ商品の購入意向」も聞いてみました。すると、業種では「スナック」「飲料」「電子機器」に加え、「ファッション」の領域でも「アニメコラボ商品」への高い購入意向が見られました。

ここで一つ重要なお話をします。アニメコラボと聞くとつい「今話題の人気作品とコラボすべき」と思ってしまいがちなのですが、実はキャンペーンの成功の鍵となるのは、「企業やブランドが持つ世界観やコンテクストに沿った作品選定」です。

一口に「アニメ」といっても、それぞれの作品にはそれぞれ独自のファンダムが存在します。企業と作品の間にちょっとしたずれがあれば、ファンは敏感にネガティブな反応を示します。

一方で、企業と作品のシナジーが生まれたキャンペーンでは、ファン自身がキャンペーンのインフルエンサーとして機能します。ソーシャルメディアで活発にコラボについて言及するなど、ファン以外にも広がるようなポジティブなバイラル効果を生み出してくれるのです。

次回以降は、こういった海外企業によるマーケティングソリューションとしてのアニメ活用事例や、英語圏で最大規模のアニメコミュニティ「My Anime List」などの紹介を通して、世界のアニメファンのインサイトを深掘りしていきます!

【調査概要】
調査名:
米国における日本アニメに関する意識調査
調査委託先:電通マクロミルインサイト
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象:アメリカ全国の18〜54歳男女
割付:年代別一般層、Z世代、アニメファン 各約600人
回答者数:約1800人
調査時期:2022年8月5日~2022年8月17日

 

 

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