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知れば知るほどビジネスに使える知財の話No.1

今、「知財」が、全ビジネスパーソンの必須知識になりつつある理由。

2024/04/04

今、「知財」が、全ビジネスパーソンの必須知識になりつつある理由 。

誰でもなんとなく聞いたことがある、知的財産権、すなわち「知財」。あるいは、IP(Intellectual Property)という英語表現も同じくらいよく聞きます。

知財は「自分には関係ない」と思っている方も多いかもしれませんが、実は今、ビジネスにおいて、知財がこれまで以上に重要な役割を担うようになってきています。

例えば、特許庁による「IPランドスケープ」の推進。

東京証券取引所による「コーポレートガバナンス・コード」の改訂。

こうした動きにより、「知財」がビジネスに及ぼす影響の範囲が格段に広がりつつあります。

もはや知財部門、技術担当部門のみならず、新規事業部門、広報・IR部門、経営企画部門など、あらゆるビジネスパーソンが認識していなければならない、一大トレンドになっているのです。

本連載では、知財にまつわる基礎知識やトレンド、さらに具体的な活用方法などを、幅広くご紹介します。産・学・官の連携やオープンイノベーションなど、新しい発明が生まれ続ける「攻め」の視点で知財を活用していく、お力添えができれば幸いです。

(監修:IP Bridge)
 

 

<目次>
そもそも「知財」って?ビジネスの根幹となる4つの「産業財産権」を知ろう

知財の重要性が一気に高まった!押さえておきたい2つのキーワード

これからのビジネスは、「知財」を中心に動かしていくことになるかも!?


そもそも「知財」って?ビジネスの根幹となる4つの「産業財産権」を知ろう


「知的財産権」とは、特許庁のウェブサイトでは以下のように解説されています。

人間の幅広い知的創造活動の成果について、一定期間の独占権を与えるようにしたのが知的財産権制度です。知的財産権は、様々な法律で保護されています。

特許庁:https://www.jpo.go.jp/system/basic/index.html

 

 

「知的創造活動の成果」というと、難しいように聞こえますが、具体的には以下の表に示したものをいいます。

知的財産権の範囲

つまり、知的財産権は、4つの「産業財産権」と、それ以外の権利を含む、非常に広い範囲を保護する権利なのです。

ここで「産業財産権」なる言葉が現れましたが、

「特許権」
「実用新案権」
「意匠権」
「商標権」

の4つの権利の総称です。このあたりは、皆さんもなんとなく知っているものばかりではないでしょうか。

「産業財産権」は、特許庁の解説によると以下のようなものです。

産業財産権制度は、新しい技術、新しいデザイン、ネーミングやロゴマークなどについて独占権を与え、模倣防止のために保護し、研究開発へのインセンティブを付与したり、取引上の信用を維持したりすることによって、産業の発展を図ることを目的にしています。
これらの権利を取得することによって、一定期間、新しい技術などを独占的に実施(使用)することができます。

特許庁:https://www.jpo.go.jp/system/basic/index.html

企業はそれぞれ、自社の強みとなる産業財産権を取得しながら、サービスやプロダクトを開発し、ビジネスを展開しています。今回の連載では、知的財産権の中でも、この産業財産権が主な話題となります。

中でも特にフォーカスすることになる「特許権」について、もう少しだけ掘り下げてみましょう。

あらためて、「特許権」とは、

自然法則を利用した、新規かつ高度で産業上利用可能な発明を保護

特許庁:https://www.jpo.go.jp/system/basic/index.html

と説明されます。

企業や団体などの研究開発の成果としての「発明」を公開・登録することで、出願から20年間、発明の実施(生産・販売など)を独占できる権利です。

たとえば、某決済サービスには、「(スマホでの)支払い時、QRコードを読み取り、金額を入力した後に画面が180度回転して、お店の人の方に向く」という優れたUXがあります。それに関する知財は、その運営会社が取得しており、権利を保護されています。他の決済サービスと体験を差別化する要因として、知財が使われているのです。

バーコード決済のUX
※画像はイメージです。

日本のビジネス界において、こうした「特許権」を中心とした「産業財産権」の利活用を積極的に行っていこうという流れができています。 

知財の重要性が一気に高まった!押さえておきたい2つのキーワード

昨今の、ビジネスにおける知財の重要性の高まり。ここではそのわかりやすい萌芽(ほうが)として、2つのキーワードをご紹介します。

キーワード①:IPランドスケープ

2017年に特許庁から発表された「知財人材スキル標準(version2.0)」ではじめて触れられた概念が、IPランドスケープです。

経営戦略又は事業戦略の立案に際し、(1)経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、(2)その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること

特許庁:
https://www.jpo.go.jp/support/general/chizai_skill_ver_2_0.html

と定義されています。

ランドスケープとは眺望や見晴らし、景観といった意味の言葉ですが、

「自社や競合(他社)の知財情報を分析し、自社を取り巻く環境を見晴らしよく社内で共有することで、企業の経営戦略や事業戦略に役立てられるようにする」

といったニュアンスです。

IPランドスケープ 

企業はいま、(略)将来に向けて適切に舵をきるための多面的なまなざしと、さまざまな課題を解決に導く力が試されつつある。そのために必要なのは、これまで以上に「企業自身が成長していくこと」。そこで鍵になるのが、知財であり、IPランドスケープだ。
従来の守りのための知財情報の活用とは異なり、IPLは自社・他社の知財を主な情報源として、それをマップにし解析することで、新規事業の創出や企業経営に役立てていく、いわば「攻めの情報活用」。

特許庁:
https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol49/01_page1.html

自社や競合の知財を分析し、IPランドスケープを活用することで、知財を専門とする部署だけでなく、経営者や、企画部署、マーケティング部署とも共有することができます。

そのことにより、知財を中心に自社の戦略を練り直したり、自社にすでにある“種”から新たな事業の可能性に気づくといった、連鎖がもたらされるのです。

社内のあらゆる部署、あらゆる職種の従業員が、自社や競合の知財情報を把握することで、経営戦略から事業開発まで幅広い好影響が生まれる。
社内のあらゆる部署、あらゆる職種の従業員が、自社や競合の知財情報を把握することで、経営戦略から事業開発まで幅広い好影響が生まれる。

熱心な企業であれば個別に進めてきたであろう「知財を当たり前のように経営に生かす」という試みに、あらためて特許庁から名前がつけられた。そのことで企業間のノウハウの共有が進み、ここ数年で加速度的にコミュニティが形成されてきた印象があります。

その結果、知財の利活用方法について、新規事業づくり、事業パートナー探しなど、各コミュニティでさまざまな事例が共有されるようになりました。具体的な事例については、連載の2回目以降で紹介していきます。

キーワード②:コーポレートガバナンス・コード

コーポレートガバナンス・コードとは、会社が、株主をはじめ顧客・ 従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みです。

つまり、「上場企業が企業統治(コーポレートガバナンス)を行う上で参照すべき原則・指針を取りまとめたもの」です。東京証券取引所が公開しています。

基本的に、上場企業はこのコードを順守することを推奨されており、

それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなる

東京証券取引所:
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf

と明記されています。

中長期的に上場企業が成長するために必要とされる、このコーポレートガバナンス・コードが、2021年に改訂され、知財に関する項目が盛り込まれました。

そこでは、上場企業は知財への投資や、事業への活用を積極的に行うべきと明記されており、投資家に対してその試みを開示することを求めています。

この改訂の背景として、特に海外投資家は

「中長期の経営戦略」
「足元の技術革新」
「技術戦略の整合性が取れているか」

を、知財への投資状況から目利きを行い、中長期の成長性について判断をする傾向があることが挙げられます。

また、企業の成長性の観点からも、知財を活用した事業広報や、わかりやすい情報発信を求められます。企業は自社の知財について、何らかのシンボリックなアクションや、わかりやすいストーリーとセットで発信するべき、という土壌が形成されつつあるのです。

これからのビジネスは、「知財」を中心に動かしていくことになるかも!?

というわけで、今回は知財を取り巻く最新の情報について、なじみの薄いビジネスパーソンの方にもご理解いただけるよう、概略をお話ししました。

IPランドスケープの推進と、コーポレートガバナンス・コードの改訂により、ビジネスにおいてはますます知財の重要性が増していきます。

さらに、これからはロジカルな知財・技術戦略とストーリー・クリエイティビティが近づき、あらゆるビジネスにおいて、「攻め」の知財活用の重要性が増していくことになるでしょう。

私たち電通も、こうした状況を踏まえ、知財の利活用のプロフェッショナルであるIP Bridgeと協業し、クライアントの知財戦略、具体的には知財情報の可視化、競合との比較などを通して、企業の成長戦略のストーリー化、投資家向け広報の支援を行っています。

次回からは、IP Bridgeのプロフェッショナルの皆さまにもご登場いただき、具体的な知財の利活用の事例についてご紹介していきます!

内容は以下のようなものを予定しています。お楽しみに!

<今後の連載予定>
・「企業の価値発信」に効く!知財の使い方
・「新規事業づくり」に効く!知財の使い方
・「仲間探し」に効く!知財の使い方

 

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