連載:言葉の森No.8
言葉の森:8
2024/06/05
人の心を動かすためにブランドと生活者の接触面において、最後の質感の部分とも言える知覚に大きく影響を与えているのがクラフトです。
2023年12月14日掲載
カンヌ、審査の舞台裏を語る
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2023年の「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」において、インダストリークラフト部門の審査員長を務めた電通のエグゼクティブ・クリエーティブディレクター八木義博氏は、クラフトをクリエイティブの観点からそう定義する。ブランドをブランドたらしめているものは、コンセプトやステートメントだけではないだろう。緻密に作り込まれた細部は、意識と無意識の境界線上で人々と交感する。氏の言葉を借りれば「ブランドとユーザーとの感情的な結びつき」が生まれるのだ。その上で、八木氏はこう問いかける。「ブランドが自らの倫理観に従い、世の中のために本当にやりたいことに取り組んでいるかどうか。そして、人々は本当にそれを応援したい、共感したいブランドとして選び、一定の対価を支払っているか」。心にとどめたいブランド論である。