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クッキーレス時代にペルソナを描こう。No.1

クッキーレス対策の新たな一手!潜在ニーズをとらえる “ペルソナターゲティング”とは?

2024/06/17

近年のプライバシー配慮の潮流から、3rdパーティクッキーの広告利用への制限が進む中、クッキーレスに対応したソリューションに注目が集まっています。そんな中、この数年で新たに「ペルソナターゲティング」というカテゴリが登場し、日本市場においても急成長しています。

本稿では、主に海外パートナー企業との事業開発やR&Dの推進を行う電通イノベーションイニシアティブの水津龍耶氏が、クッキーレス時代のデジタルコミュニケーションの新たな選択肢である「ペルソナターゲティング」をけん引し、国内でのサービス展開を推進するOgury Japanの松本亮氏に、クッキーレス時代のデジタルマーケティングに役立つヒントをお聞きしました。

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<目次>
6割がクッキーレス対応の必要性を認識。ただし、そのうちの4割は未対策?

ターゲットの解像度を高め、最適な配信を実現するペルソナターゲティングとは?

コンテキストターゲティングとの違いは、潜在層へのリーチ

ペルソナ分析の精度を高め、ファインディングスを得るポイントとは? 

広告会社が持つデータと連携することでクリック率が約2倍に!

 

6割がクッキーレス対応の必要性を認識。ただし、そのうちの4割は未対策?

水津:ここ数年で大手プラットフォーマーの3rdパーティクッキーの利用規制が広がっています。Google社では、2025年初頭からChromeユーザーの3rdパーティクッキーの段階的な廃止を発表しています。これらの動向に伴い、クッキーレス対応の重要性に対する認識は業界全体で大きく高まっていると思いますが、実際のビジネス現場ではどのようにお感じでしょうか?

松本:まさに重要性についての意識は広がっているものの、具体的な対策においては苦戦している企業も多い印象です。当社の調査では、実際に「6割のマーケティング担当者がクッキーレスの必要性を認識するも、そのうちの4割は対策ができていない」という結果が出ています。対策が進まない原因としては、代替ソリューションに関する知見が十分に得られていないため自社にとって最適な手段がわからない、もしくは導入を決めかねている、といった声が多く挙げられます。

水津:コンテキストターゲティング(※1)やデータクリーンルーム(※2)を活用した取り組みなど代替手段も幅広いため、どのようなソリューションが自社商材のマーケティングに最適なのか判断に迷うケースも多そうですね。

松本:そうですね。われわれがクライアント企業と向き合う中でも、特にターゲティング精度が重要となる耐久財メーカーやラグジュアリーブランドのような業界は、より慎重に検討を重ねている傾向があると感じます。

※1 コンテキストターゲティング=配信面となるウェブページのキーワードやテキストの内容、画像などをAIが解析し、ページの文脈(コンテキスト)に沿った広告を配信する仕組み
 
※2 データクリーンルーム=個人を特定することなくデータ統合や分析のためにアクセスすることができるセキュアなデータ環境

 

ターゲットの解像度を高め、最適な配信を実現するペルソナターゲティングとは?

水津:このような背景の中、クッキーレスに対応する新たなマーケティング手法として、「ペルソナターゲティング」がメディアに取り上げられる機会も増え、注目を集めていますね。世界各国と比べて、日本市場での普及は進んでいるのでしょうか?

松本:欧州などと比べると日本での普及はまだこれからですが、国内における関心の高まりは日々実感しています。当社は世界22カ国でペルソナターゲティングに基づくサービスを展開していますが、その中でも日本法人の成長スピードは他国進出と比べても非常にハイペースです。Ogury Japanは2022年に設立されたばかりですが、すでに200近くの媒体社様とも提携し、148ブランド以上が約500以上のキャンペーンを実施しており、多くの企業からご相談もいただいています。これらの期待に応えられるよう、日本法人ではOgury Tokyo Labを立ち上げ、日本のクライアントニーズに合わせて高度化したソリューション開発も始めています。

水津:新たな市場進出にあたって各国クライアントの特徴を把握することやニーズに合わせたローカライズは重要ですよね。Ogury Tokyo Labの活動については後ほど詳しくお話を伺いますが、まずは「ペルソナターゲティング」の仕組みや特徴について、あらためて教えていただけますか。

松本:ペルソナターゲティングとは、クッキーや個人情報に頼らないさまざまなデータ群を用いて、ターゲット層の興味関心を事前に分析しながら独自のペルソナを描き、最適な配信面に広告を配信する手法です。

イメージしていただきやすいよう、まずはペルソナ分析の分析サンプルをお見せします。こちらは、例として“メイク・コスメ関心層”を分析した一部ですが、ご覧のように分析対象者が興味関心のある領域や閲覧傾向の高いメディアの分析をすることが可能です。

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水津:この例では、メイク・コスメ関心層を対象にしているので、ビューティ関連への興味が強いことは想像しやすいですが、それだけでなく「フード・ドリンク」「ペット・動物」「ショッピング」のような項目への関心も高い傾向が示唆されていますね。この分析の裏側ではどのようなデータが利用されているのでしょうか?

松本:Oguryで利用するデータ分析には、個人を特定しない“アンケート調査データ”、“アドネットワークデータ(※3)”、“コンテキストデータ”を活用しています。独自調査データの収集については、世界各国のオープンウェブの広告枠で何百種類ものアンケート広告を15億以上のデータポイントで日々展開しており、その広告枠ページに訪れるユーザーの最新の興味関心情報などをパターンデータとして蓄積しています。これらのデータは随時更新されており、ほかのアドネットワークデータやコンテキストデータと組み合わせることで、膨大なペルソナ分析を実行できるデータ基盤を形成しています。

また、ペルソナと各配信面の相性は当社独自の設計でスコアリングされているため、ペルソナ分析の結果にあわせた最適な広告配信面を自動的に選定することができます。

※3 アドネットワークデータ=個人情報に関連しないアドリクエストデータ。ユーザーがアクセスした時間や配信面にひもづく統計学上のデータを分析したもの

 

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水津:15億以上のデータポイントとは膨大ですね。そのようなユーザー個人にひもづかない大量の独自データにより、どのペルソナがどのようなコンテキストおよび配信面において興味を示すのか、クッキーレスな状態でも把握できるということですね。このようなデータ基盤の構築には巨額の投資と長い時間が必要になると思いますので、こうしたサービスは、Oguryの優位性と言えそうですね。

それでは、実際の分析から配信までの流れはどのように進むのでしょうか?

松本:まずはターゲットに関する与件を伺った後、前述のペルソナデータを活用した事前分析をダッシュボード上で行います。事前分析では、与えられた情報を元にOguryのダッシュボード上でターゲットの興味関心や、親和性の高いコンテキスト情報などを出力することができます。この事前分析によるターゲティングの深掘りの後、キャンペーン用にカスタマイズされたペルソナのセグメントを実際のターゲティングに反映し、リッチクリエイティブと掛け合わせて配信を行います。

コンテキストターゲティングとの違いは、潜在層へのリーチ

水津:ちなみに、「コンテキスト」という言葉も多く出てきましたが、コンテキストターゲティングによる広告配信との違いについても教えていただけますか。

松本:コンテキストターゲティングは、AIで配信面のページ上のコンテンツ(テキストや画像など)を解析し、商材と相性の良い配信面と広告をマッチングさせて配信する仕組みです。例えば、スポーツ用品やスポーツウエアの広告であれば、スポーツ関連のコンテンツを扱っている配信面に表示するイメージです。通常のターゲティング広告と異なり、ユーザー側ではなくメディア側のデータを解析するため、クッキーレスな形でターゲティングを実現することが可能です。「スポーツ関心層=スポーツ関連の配信面」のようにニーズが今まさに顕在化している層への直接的なアプローチが得意な一方で、「どのコンテキストが、そのキャンペーンにマッチするか」を選ぶ必要があるため、ニーズがまだ顕在化していない、潜在層へのリーチが限定的になりやすい課題もあります。

一方、ペルソナターゲティングでは、潜在層へのアプローチを得意としています。当社では前述の膨大な独自調査により、各配信面にひもづくユーザーの多方面の興味関心データを把握しているため、スポーツ関心層をターゲットにする場合、スポーツ以外も含めた相性の良いコンテキストを分析することが可能です。したがって、スポーツ関連商材の広告の露出先は、スポーツに限らない幅広い興味関心領域まで露出範囲を広げて潜在層に広告を届けることができるのです。

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ペルソナ分析の精度を高め、ファインディングスを得るポイントとは?

水津: ペルソナターゲティングについて理解が深まってきましたが、実際にペルソナ分析を行う上でのポイントや、ペルソナ分析によって見えてきたファインディングスなどあれば教えてください。

松本:あるコスメブランドでの事例を紹介します。当初そのブランドのターゲティング与件は、王道とも言える“メイク・コスメ関心層”でした。冒頭でお見せしたサンプルのように、メイク・コスメ関心層というくくりでのペルソナ分析は十分に可能ですが、本件では、より精緻な配信設計に挑戦するため、当該ブランドがカテゴライズされやすい「デパコス」「プチプラ」「韓国コスメ」の3つにブレークダウンし、各ペルソナにどのような特徴があるかを調査しました。その結果、子ども服やメンズファッションを含んだファミリー層からの支持が高いペルソナや、ギフトやイベントなどのサイト閲覧傾向が高いペルソナなど、同じコスメ関心層の中にも、それぞれ差異があることが見えてきました。このように対象を掘り下げていくことで、当初の“コスメ関心層”という粒度では見えなかった特徴をシャープに把握することができ、より細やかな設計を実現できました。

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また、同じ商材であっても時期によって、該当ペルソナユーザーの行動や興味に変化が生じるケースも散見されます。そのため、固定化されたターゲット層に配信し続けるのではなく、定期的にターゲットユーザーのペルソナをアップデートしていくことが重要になります。

水津:なるほど。事前にそれだけ解像度の高い分析ができると、広告配信以外も含めたコミュニケーション戦略にまでフィードバックできるインサイトの発見にもつながりそうですね。

広告会社が持つデータと連携することでクリック率が約2倍に!
 

水津:広告会社のプランナー視点で考えると、商品の戦略プランニングやターゲティングを行う過程でペルソナ分析を行うこと自体は珍しいことではありません。

しかし、従来のデジタルメディア配信では、その分析結果をターゲティングにまで十分に反映できているか?という点については限定的な側面があったと思います。つまり、せっかく精緻にペルソナ分析を行ったとしても、実際の広告配信の際は、配信プラットフォーム上であらかじめ決められた性年代別や興味関心の項目にあわせる必要があり、それらは各社で異なる定義付けがされているため、戦略上で定義されたペルソナと実際の配信に反映させられるペルソナが異なってしまう現象が起きていました。

この課題に対して、Oguryのペルソナターゲティングでは、戦略的に描いたペルソナを実際の配信にまで転写することができます。この点はこれまでと異なる重要な価値になるのではないでしょうか。

松本:おっしゃる通りです。前述したOgury Tokyo Labでは、このような強みを伸ばしていくため、広告会社やメディアレップ(広告主・広告会社に広告枠を販売する問屋)が保有するデータと連携しながら、より精度の高いペルソナ分析を開発・提供する取り組みを推進しています。

水津:電通グループでも、本取り組みの第一号として複数のデータベースとの連携が進んでいますね。ある耐久財メーカーのクライアントと行ったトライアル案件では、電通グループが持つデータをペルソナ分析に活用したセグメントにおいて、通常の分析のみ行ったセグメントと比べて、パフォーマンス(CTR)が2倍近い結果になったと聞いています。これはすごい成果ですね。

松本:そうですね。そもそもOgury単体としてのパフォーマンスとしても従来のデジタルメディアと比べて良好である、という評価を得ていた中での話でしたので、この成果は驚くべきものでした。ちなみに、この取り組みはOgury Japanが独自で始めたものですが、グローバルの本社からも高く評価され、おかげさまで現在では他国も含めたグローバルな取り組みへと拡張しています。

水津:私たちの部署では、日本に拠点を持つ多くの海外パートナー企業と向き合っていますが、日本拠点から生まれたプログラムがグローバル全体の事業戦略に採用されたケースは初めて聞きました。特に外資系のテック企業では、グローバルの本社側のガバナンスが強く、ローカル拠点ならではの活動が制限されてしまうケースも多いので、とても貴重な取り組みだと思います。それだけ本取り組みへの期待値が大きいということですね。

各社の持つデータを元に描いたペルソナを広告配信までシームレスに転写できるペルソナターゲティングですが、まだまだマーケティング活用ポテンシャルを秘めていそうに感じます。今後の展開がさらに楽しみです。
 

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