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ワカモンのすべてNo.8

福田麻由子×小島雄一郎:後編

「女優としての働き方、そして生き方」

2014/03/19

「ワカモンのすべて」ロゴ

前回に続き、女優・福田麻由子さんに、ワカモンのメンバーである小島雄一郎さんが、女優と大学生の二足のわらじを履く19歳が語る若者の本音、そして理想の働き方とは?などいろいろ聞きました。

小島氏と、女優の福田さん

閉塞感を打ち破ってくれた大きな出会い

小島:前回の話の中で、「今は小さい頃の時間を取り戻す時間」みたいに言っていましたが、4歳で子役デビューして、福田さん自身、「働く」ということについては正直どう思いながらやってきましたか?

福田:コンプレックスだったし、勝手に窮屈に思う感覚はいつもありました。中学生ぐらいの時も、学生のはずなのに、何で私は今仕事をしてるんだろうって思ってたし。まだ自分のことをよく分からない時に雑誌のインタビューでしゃべったこととかがずっと残ってるんですよね。たくさんの人の記憶にも残ってて。でも当の本人はまだ子どもで、そのしゃべった1年後には全然考え方も変わっちゃってるわけで、そういうのがすごく怖いなって。

小島:今の仕事を自分自身で受け入れられるようになったのはいつ頃ですか? まだ今も違和感を感じますか?

福田:今もすごく変な世界だと思うし、パシャパシャ撮られた写真がネットで出回ったりすることは、私はやっぱり普通のこととは思えない。ちょっと特殊なところでちょっと特殊なことをしてるんだって思ってる。でも、そういう小さい頃からあった閉塞的な感覚が、「いやむしろわすれて草」という舞台作品と出会ってがらりと変わったんです。

小島:私がその作品を見に行ったのが福田さんの出会いでしたね。当時はまだ高校生で。

福田:そうでした!  あの四姉妹の3人のお姉ちゃんたちが、何かね、ものすごいすてきだったんですよ。芝居もそうだし、人としても。今まで、もちろんいっぱい役者さんと会っていてすてきな人、尊敬する人はいたけど、こういうふうに生きていきたいって思える人はいなくて。3人はそれぞれ有名で活躍されているのに、あそこの野菜が安いだの(笑)そういう普通の話をする、人間としての魅力のある人たちで…。あぁ、私がこの世界でこの仕事をしててすごい窮屈と思ってたのって、結局言い訳だったというか、自分がどうあるとか、どこでどう振る舞うとか、何を吸収するかとかで、全然こんなふうに生きられるんじゃんって思えた。私にとって大きな出会いでした。

女優のワークライフバランスって?


小島:その3人の女優さんは、さっき福田さんが言ったみたいに、今の世界を「特殊だ」と思う感覚を持っていないのでしょうか?

福田:いえ逆で、みんな特殊だと思ってる。だから、この世界にいない時の自分っていうのをみんなちゃんと持っているというか…。役者のあり方として、きれいなところを見せて、夢を見せてっていうのも一つのあり方だと思いますが、私自身は、たとえば一人で部屋でスイッチが切れて「あーあ…」って思ってる時の自分がスクリーンに映ればいいなと思うんです。そういう、同じ世界に生きてて、同じ空を見ててっていう立場で芝居をしたい、私は。

小島:普通のビジネスマンで言うとワークライフバランス、いわゆる仕事の面とプライベートの面とをしっかり分けましょうみたいなのが、世の中的にすごく言われた時期があったけど、最近はそれが少し混ざってきていて。福田さんのその感覚って、それに近い感じですか? 自分の中で混ざってきているような…。

福田:特殊な世界にいるからこそ「普通の私」の感覚はちゃんと守らないといけないという考え方はあるんですけど、でも自分の芝居っていうものを考えた時に、演じる時はなるべくそこが分かれないようでいたい。役を演じてたとしてもそれは私で、体温とか熱みたいなものまでコントロールできるものじゃないから、それを置いてこない人になりたい。

小島:なるほど。女優さんっていうと、どんな役にでも「なれる」って思いがちだけど、実はオファーが来てる時点で既にフィルターがかかっていて、多分そういう素の部分を見てオファーが来ているってことかもしれませんね。

福田:それも私、最近気付きました。それまでは役にどれだけ近付けるかみたいなことばっかり考えてて、もちろんそれはそうなんだけど、別に自分の本質みたいなものを消す仕事ではないんだなって思って。

小島:役は素の自分の延長上にあるってことですね。じゃあやっぱり、仕事とプライベートを分けるという感覚からは少しずつ離れていっていますか?

福田:うーん、でも、演じる以外の仕事、たとえば華やかな場所での舞台あいさつとか、雑誌のインタビューとかの時の自分は、プライベートとすごい分けてるかも。よそ行きの顔ですね、多分(笑)。

小島:じゃあ微妙に三面あるんですね(笑)。でも、われわれの仕事でもそうだけど、やっぱり何か、自分に仕事が来る時点で大抵フィルターがかかっている気がします。普段の振る舞いとかしゃべり方とか見られていて、あいつならこういう方向でできるんじゃないか?みたいに。でも、意外とみんな仕事とプライベートを「分けないといけない」と思い込んでる。それまで普通にバンドとか頑張ってた子たちが、はい就活です、わー公務員試験受けなきゃって…。私自身最近、あんまりガチガチに仕事とプライベートを分けない方がトータルの人生幸せだし、もう少し働くってことを堅苦しく考えない方がいいんじゃないかなって、そう感じるところが多くて。

福田:もちろん生きていくためにお金も稼がなきゃいけないし、仕事は仕事なんだろうけど、仕事してる時ってその人の姿勢が一番表れますよね。だから私はやっぱり、自分の仕事に誇りを持ってやってる人が好きだし、そういう働く大人になりたいと思います。

19歳、ゼロからの出発


小島:ずっと話していて面白いと感じるのが、福田さんの内面って、社会人15年目としての感覚と、普通に19歳として考えなきゃいけない感覚が、結構ぐちゃぐちゃに混ざっていますよね。それは、4歳から働いてきたっていうある意味特殊な部分が、どんどん19歳の等身大の自分に統合されてきてる感覚ですか?

福田:昔から真剣に仕事をしてきたし、周りの大人たちも真剣に向き合ってくれてたけど、何言ったところで子どもだったんですよね。それが最近はだんだん、現場では自分もチームの一員として作品を作ってるんだっていう感覚になって、もちろん責任もあるけど、そういうのがすごいうれしいというか。

小島:子役から女優って呼ばれ方が変わったじゃないですか? その感覚ですか?

福田:そうかもしれないです。小さい頃とかは気が付いたら私のことを知ってる人がいっぱいいることが不思議で、中学校ぐらいでは、もっとちゃんとして帰ってくるので、とりあえず1回忘れてもらっていいですか?って思い続けたり。それで高校行って、大学入って、今、多分みんな結構忘れてくれたと思うから(笑)、ちょっともう1回よーく思い出してもらって、今こんな感じです、っていうことをそろそろしたいなって。

小島:そうすると今って、結構ゼロに近い状態ですか?

福田:はい、もう1回、早くデビューできるといいねっていう感じ(笑)。だから私、今年はオーディションとかもたくさん受けてみようかなって思ってるんです。

小島:おぉすごい、ある意味就活ですね、今までの経験を生かして(笑)。ところで、福田さんが「働く」上で一番大切にしてることって何ですか?

福田:うーん難しいですけど…。私のいる世界って、ともすれば変わったことをしたり破天荒なことしたりすることがもてはやされますけど、私はちゃんとした社会人でいたいなって思います。もちろん芝居では、これまでなかったようなことをして壁を破っていきたいとは思うけど、もっと広い意味で人の中で働くっていう時に、表現の仕事をしているからという理由でいろんなことを適当にしたくないというか。

小島:素晴らしいですね。最後に聞いてみたかったのですが、福田さんは女優として、ずっといろんな時代の「若者」を演じてきてるじゃないですか? たとえば戦時中の若者をやったり、この春公開される日仏合作映画「フレア」では、まさに現代の若者を演じていたり。時代時代を生きる若者、という切り口で、何か感じることはありますか?

福田:昔の役をやるとちょっとした価値観の違いはあるけど、でも別に、きれいなものを見てきれいだなって思ったりとか、人を好きだなって思ったりとか、大人ムカつくなって思ったりとか、そういうのって全部根っこは一緒ですよね。だから世代間で分かり合えないとかいうのって、若者がどうこうじゃなくて、むしろ子どもだった時のことを忘れちゃう大人がズルいんじゃないかと思う。

小島:かもしれませんね。根は同じなのに、コミュニケーションとか表面的なことでそういう世代間での誤解が生じないようわれわれワカモンも引き続き活動しつつ(笑)、女優・福田麻由子さんのこれからに期待します。


「電通若者研究部ワカモン」ロゴ

【ワカモンプロフィール】
通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモン Facebookページでも情報発信中(https://www.facebook.com/wakamon.dentsu)。