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ワカモンのすべてNo.7

福田麻由子×小島雄一郎:前編

「働く大学生が語る若者たちのリアル」

2014/03/12

「ワカモンのすべて」ロゴ


今回は、4歳から役者を続けながら今は現役で大学にも通う女優・福田麻由子さんに、ワカモンのメンバーである小島雄一郎さんが話を聞きました。女優、大学生の二足のわらじを履く19歳が語る、若者の本音、そして理想の働き方とは?

小島氏と、女優の福田さん

大学進学を決めた理由

小島:今日は、女優であり現役大学生である福田さんに、「働く」をテーマに話を聞きたいと思っています。福田さんは私の大学の後輩ですが、社会人歴としては先輩で。今おいくつでしたっけ?

福田:19です。4歳で事務所に入って15年、働く大人は長く見てきました(笑)。

小島:私が入社7年目ですから、倍ぐらい社会人をやっていらっしゃるわけで。そんな福田さんの、まずは大学生としての面について聞きたいのですが、この春2年生になるんですよね? そもそも、どうして大学に行こうと思ったのですか?

福田:私が学びたいことって、たとえば文学でも芸術でも表現でも、別にわざわざ大学で学ばなくてもいいことなので、行くか行かないかはすごく悩んだんです。実は高校も同じ理由で行くかどうかを悩んで入ったんですけど。私、中学校が別に嫌いじゃなかったけどそんなに楽しくなかったんですね。

小島:それは話の合う友達がいなかったから、とかですか?

福田:仲の良い人とかはいたけど、学校っていうものに魅力を感じられなくて。あの閉じ込められてる感じとか、みんな同じ体操服で体操してるのとか、すごい嫌だったし(笑)。

小島:あー。義務教育ですからね(笑)。

福田:それで高校は、まぁ今しか高校生ライフみたいなのは経験できないからって軽い気持ちで行ったんですけど、それがすっごい面白かった。ちょうどみんな、自分が何を好きで、何を大切にしててっていうものを少しずつ持ち始める時期で。大学もその延長で、私にとっては学びの場というより、いろんな人がいて、いろんな出会いができる場所という、そっちに重きを置いて行くことにしたんです。

小島:そこにいる人の幅の広さみたいなのが魅力だったと。でも普通に考えると、4歳から働いていて、広いっていう意味ではそっちの世界の方がずっと広いですよね?

福田:でも何か、仕事を通しての人付き合いとただの友達ってやっぱり違うじゃないですか? 私は今まで、仕事はその時なりに頑張ってきたけど、ただの友達の人付き合いが薄くて、いざ現場を離れて一人で自分の部屋にいても、別にしたいことも好きなこともないし、すごいつまんないヤツだってずっと思っていて。何か日々、小さい頃の時間を取り戻しにいってる感じがある。

小島:じゃあ高校とか今の大学の友達っていうのは、その頃の時間を取り戻す役割を担ってくれていますか?

福田:そういうところはあります。あと私、大学生になって一人暮らしを始めたんですが、親の土台がある実家を離れて初めて、自分がやっていることは何でもただ自分がやりたいからやってることなんだなって思えるようになって。そうしたら、いろんなことがまた楽しくなりましたね。

若者と“コミュニケーション中毒”


小島:日本の大学生は海外の大学生と比較した時に、よくモラトリアムみたいに言われますよね。まさに、何をやるかを固めるための4年間という捉え方をしてる子たちが周りにも多いと思うのですが、社会人の先輩として、そんな大学生を見てどう感じますか?

福田:うーん。まず、大学生の肩書ってすごい便利じゃないですか? もちろん人によりますけど、まぁ時間はあるし、そんなに何もしてないでしょ(笑)? 大学生ですって言ったら2カ月間くらいフラフラしてても何も言われないわけで。私もそういう部分は結構あるし、それが別に悪いことだと思わない。

小島:では、福田さんが今の周りの子たちと仕事で付き合う大人たちを比べた時に、ここは違うなとか、ここは良いけどここは見習った方がいいんじゃないかとか感じる部分はありますか?

福田:何だろう…。(今の周りの子たちは)あれはダメ、これはダメばかり言ってて、自分が好きなものが分かっていないのかなーとは思います。それは私が今まで接してきたのが特に表現が好きで集まってる人たちだったからかもしれないけど。「楽してお金を稼いでいければいい」みたいなことを言ってる子とかもいてすごく悲しくなる。何でそんなにいろんなことをすぐに諦めちゃうの?って。

小島:そういう感覚は、若者調査のここ10年の結果で見ても大きな流れとしてありますね。たとえば「平凡」という言葉を好きかという設問に対して、10年前は全体の16.4%が好きと答えていましたが、今は25.4%。一方で、環境への思いやりとか社会貢献とか、そのへんへの意識は結構高くなってきていたり。総じて言えば、ガツガツせず身の丈に合っていることを大切にするのがイマドキの若者の傾向だって見えますね、上の世代からは。

福田:えー、平凡っていう言葉が好きなんですか?! あと、今一番の違いってやっぱりネットじゃないですか? みんなコミュニケーション上手ぶってるけど、すごい下手ですよね(笑)? たとえば、Twitterで何回か話したことある人のことを「友達」って呼ぶの。私なんか、この人友達ですって言うのにすごい勇気がいるのに…。そんなにいろんな人と深く関わるなんてできないと思うんですよ。

小島:上手下手というよりも、今の若い子たちはコミュニケーション中毒だって私は捉えていて。たとえば、Twitterのプロフィールに「生年月日/高校/通っていた塾/大学/所属サークル/…」みたいに自分の情報をスラッシュで書くのも、みんなとの引っ掛かりを持てるポイントをちょっとでも増やしておきたいと思ってるからですよね。

福田:大変だろうなって思います。それこそ自分っていうものを表とかにプロットした時に、事実として書けることがどれだけ多いかっていう、それでその人の価値が決まってしまうみたいな感じが今すごく強いなと思うし。

小島:その傾向は就活でも同じで、たとえば最新の大学生意識調査の結果でも、全体の4割ぐらいの子が就職活動で自己PRに書けるかを意識してサークル選びをしていることが分かってるんですよね。

福田:へー! みんなほんと大変だ…。

女優は日々が就活のようなもの?


小島:役者さんの場合、良い仕事をした結果が自然とハクになっていくっていう積み重ねだと思うのですが、今の若い子たちは先に「自己PRに書く」ことの方に目的がいってしまって、その前に良い仕事をするということが抜けがちかもしれません。偉そうですが。福田さんも女優をやっていて、やっぱり受賞歴とか作品の数は多い方がいいとか意識しますか?

福田:どうなんだろう…。やっぱりそれは一つの武器、じゃないけど大事なのかなぁ。たとえば福田麻由子で検索してもらうとウィキペディアが出てくると思うんですけど、過去の出演作品が、もちろん小さい役もあるんだけど、見た目だけでいくと結構いっぱい書かれていて。でも私は逆に、じゃあウィキペディアに書かれていないことは私じゃないの?とも思ってしまう。その行数と私が過ごしてきた時間の濃さは全然違うから。

小島:それはインプットとアウトプットという表現にすると、インプットしている時間の自分も見てほしいという感覚ですか?

福田:でも、全く私のことを知らない人に私のことを知ってもらおうとしたらウィキペディアを見せなきゃいけないことも分かってる。私自身は、自分だけの貴重な経験とか、いろんなことを考えたりすることが一番大事だと思ってるけど、それって実は自己満足で、そろそろ、そうやってウィキペディアに書かれないようなことをやってきた結果を形として出さないといけないなって。

小島:なるほど。ちなみに女優という仕事って、就職活動で言えば、毎回面接を受けているようなものじゃないですか? 一つ一つの役に内定する、選ばれるために意識していることってありますか?

福田:私、ありがたいことに今まで次の役が決まっていないっていう経験がほぼなくて、常に目の前にある仕事を頑張ることしか考えてこなかったんです。本来は私に仕事がもらえるかもらえないかっていう仕事なんだなぁと最近気付いた。遅いですけど(笑)。

小島:また就活に置き換えてしまいますが、みんな最初は数社に一斉にエントリーをして、選考を進む間いっぱい面接の予定が入っている状態が続くのですが、それがことごとく落ちて手駒がなくなった時に初めて自分のことを考える。私がそうだったのですが(笑)。

福田:大学を卒業して周りの子たちは就職して、そしたらみんな忙しくなるわけじゃないですか? でも私だけ月曜日も火曜日も暇ってなったら寂しいから。ちょっとその時くらいはちゃんと働けるように、そろそろ頑張んないと!

※対談後編は3/19(水)に更新予定です。


【ワカモンプロフィール】
電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモン Facebookページでも情報発信中(https://www.facebook.com/wakamon.dentsu)。