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Z世代就活生まるわかり調査2024No.2

Z世代就活生まるわかり②~就活における男女の考え方の違いとは?

2024/07/19

人財採用におけるブランディングを支援するコンサルティングチーム「採用ブランディングエキスパート」は、2024年・25年の大学・大学院卒の就活生を対象に「Z世代就活まるわかり調査2024」を実施しました(リリースは、こちら)。

本連載では、その結果と追加で実施したウェブ調査およびインタビュー調査をもとに、いまの就活生の動向や働き方に対する意識などをひもといていきます。

調査結果を見ると、男女差が顕著な項目があり、企業に入社する前の段階からすでにジェンダーによる意識差が生じていることがわかりました。

6月に世界経済フォーラムが発表した2024年の日本のジェンダーギャップ指数は、世界146カ国中118位となり、過去最低だった昨年よりやや改善したものの、特に政治や経済の分野での男女格差は社会課題として深刻なままです。企業でも女性活躍推進の重要性が増す中、本記事では、ジェンダーギャップ解消のヒントにもつながる男女の意識差に着目し、特に女性の意識を深掘りします。

ワークライフバランスのメリハリを重視する女性が多い

まず、男性・女性それぞれが考える「働き方」について紹介します。仕事とプライベートのバランスについての希望を尋ねた設問では、「定時で帰れて、プライベートの時間を確保できる会社」を選んだ男性は26.9%だったのに対し、女性は42.6%に上っており、女性の方がプライベートを重視する傾向が見られました。

Z世代就活
調査対象者818人のうち、「男女いずれにも該当しない」と回答した人は除いています。

次に、「ずっと働きたい」と感じるために必要なことを聞くと、男性・女性いずれも「給料が良い」が1位ですが、2位以降の順位には異なる傾向が見られます。特に「プライベートの時間が確保できる」を選んだ女性は51.9%に上ったのに対し、男性は32.4%で大きな差があり、ここでも女性の方がプライベートを重視している傾向が見られます。

Z世代就活
調査対象者818人のうち、「男女いずれにも該当しない」と回答した人は除いています。

女性が求める「プライベート」とは、どのようなものなのでしょうか?2024年・25年卒業予定で、就活を経験した女性10名への追加インタビュー調査(※1)を行いました。

そこで得られた意見として、プライベートでは仕事から離れて休息し、友人と過ごす時間や、趣味の活動に費やす時間を望む声はあるものの、「若手のうちは、仕事を一生懸命やって、なるべく多くのスキルや経験を積みたい」(関西・理系・大学4年・不動産内定)、「平日は仕事にしっかり取り組める方が充実すると思う」(都内・文系・大学4年・メディア内定)といったスキルアップに前向きな意見や、ワークライフバランスの「メリハリ」を意識する視点でプライベートの重要性を捉えている様子が感じられます。プライベート重視といっても、仕事の優先度を下げるものではなさそうです。

前述した「ずっと働きたい」と感じるために必要なことを聞いた調査で、男女差が大きかった項目としては他に「ジェンダー差別がない」があり、この回答を選んだ男性が4.6%と顕著に低いのに対し、女性は21.5%でした。また、「社内の風通しがいい」も男女差の大きい項目で、こちらは男性が36.1%、女性が52.9%でした。

追加インタビュー調査(※1)でも、ジェンダー比率について、「就職先を検討する際に社員の男女比率は必ずチェックする」(地方・理系・修士2年・人材コンサル内定)のように就職先検討時から意識する声がありました。

また、社内の風通しに関しても「若手のうちから意見が言いやすいこと」「若手でも良い意見は通る素地があること」「自分の挑戦を受け入れてくれること」などを社内の風通しの良さとして重視する声があり、個人の意見が尊重され、挑戦へのサポートが周囲から得られる環境を望む様子が見受けられます。

※1 調査対象:内定を受けた2025年卒業予定の大学/大学院生の女性10名、調査時期:2024年5月24日~6月5日


 

新卒で入った企業で、できれば長く働き続けたい女性たち

本調査では、キャリアの考え方として、転職意向においても男女差が見られました。「転職するつもりはいまのところない」という回答は、女性が77.4%で、男性の67.1%よりも10ポイント以上高くなっており、転職意向は女性の方が低いことがうかがえます。

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調査対象者818人のうち、「男女いずれにも該当しない」と回答した人は除いています。

転職を検討していない女性内定者に追加インタビュー(※1)でその理由を聞いてみると、「自分の夢ややりたいことをかなえられる会社を選んで就職活動を終えたので、現時点では転職の意向はないが、人間関係が合わないと感じて、異動もできないといった場合には転職を検討すると思う」(地方・文系・大学4年・保険内定)、「転職しなくても、結婚や出産など自分の状況に応じて社内で柔軟に働き方を調整できる余地があるような企業を選んで就職活動をし、内定先を決定した」(都内・文系・大学4年・メディア内定)といった声がありました。

本調査でも転職を検討する理由の深掘りでは、男性はスキルを積んだ後の「キャリアアップ」「起業」を意識している割合が女性より5ポイント以上高くなっています。一方、女性は「ライフステージの変化への対応」や「多様な人生経験」を理由とする割合が男性よりも10ポイント以上高くなり、仕事における給与やポジションといったキャリアアップに重点を置く男性と、ライフステージの変化やそれによる影響を視野に入れ、仕事に限らない人生経験の充実とのバランスを重視する女性という志向の違いが浮き彫りになっています。

Z世代就活
 


男性に根強い、共働き前提でも「男性が大黒柱」の意識

追加のウェブ調査(※2)で、結婚や出産、子どもの学業など「ライフステージ」の変化と仕事のバランスに対する意識を確認したところ、多くの学生がライフステージが変わっても仕事を継続したい意向を持っていることがわかりました。

※2 調査対象:2024年・25年卒大学生/大学院生 男女、調査人数:100人、対象者条件:キャリア支援NPO法人「エンカレッジ」登録の2024年または25年卒業予定大学生・大学院生。パネルの母体は本調査同様ですが、新たに招集して回答いただいているものなので、回答者は同一とは限りません。調査時期:2024年6月21日~6月24日


Z世代就活

中でも「できれば仕事を優先したい」と考えている割合は男性(25.7%)よりも女性(36.9%)の方が10ポイント以上高い結果となっており、女性側の仕事継続への意欲が強く見られました。

ライフステージの変化にかかわらず、仕事を継続したいと考える女性たちには、共働きを前提とする考えが背景にあることがうかがえ、かつ家庭での費用分担のイメージについても男性以上に対等を意識している様子が見受けられるのが次の調査結果です。

Z世代就活

「共働き」をする際に、女性は、63.1%が「お互いが同じくらいの金額を出し合って暮らす」ことを想定している一方、特に「男性が大黒柱になって家族を支える」という旧来の固定観念がZ世代においても見られ、こうした意識は給料やキャリアアップをより重視する男性の意識にもつながり、就活での企業選びにも影響を与えていると考えられます。

マイナビによる20代正社員男女を対象とした調査においても、男女の理想の年収には約215万円の差、現実の年収では63.7万円の差で女性の方が低い結果が出ています。

追加インタビュー調査(※1)では、中長期的なキャリア・暮らしの展望として、「結婚して子どもが生まれたら、(女性側が)時短勤務をすることになると思う」(関西・文系・大学4年・食品内定)、「あまり高い給料を望みすぎると、仕事において求められる責任も重くなる結果、仕事と家庭の両立に支障をきたすのではないか」(都内・文系・大学4年・銀行内定)という声がありました。就職前から漠然と持っている働き方のイメージによって、女性たちがキャリアアップに自分でブレーキをかけてしまっている様子が感じられます。

また、「就活時に役員クラスの人と面談で会う機会があったが、男性ばかりで自分がそうしたポジションになるイメージは湧かなかった」(都内・文系・大学4年・銀行内定)といった声もあります。企業内の上の世代のアンバランスなジェンダー比率が、入社前から「ガラスの天井」を意識させていることにも留意する必要がありそうです。

内定前後で会社に向けられるチェックの視点

中長期のキャリアや暮らしについて、入社前から意識しがちな女性たちですが、就活の初期段階では内定をもらうことが主軸に置かれています。そして、どのように女性が活躍しているか、ワークライフバランスをどのように両立させているかといったことに意識が向けられるのは、内定をもらった後など、就活の後半になることが多いようです。企業は、就活におけるフェーズごとに、働き方に関する情報をどのように学生に伝えていけば良いかにも検討の余地があります。

就活

また、9割以上の大卒者が内定を持つ時代、学生側が企業を選ぶ場面も増えてきています。「内定後、入社までの間に、その会社で働く女性社員の方複数名に話を聞いたり、企業クチコミサイトで社員のクチコミを読み込んだりしてから、内定先を確定した」(関西・文系・大学4年・食品内定)といったコメントがインタビューでも複数あったほか、「内定までの面談の中で、丁寧に自分の話や悩みに向き合ってくれる社員の様子に魅力を感じた」(地方・文系・大学4年・保険内定)といったポジティブな側面や、「最終選考に近いタイミングで、役員クラスの方が面接中にずっと肘をついて話を聞いていた悪印象から、別の内定先への入社を決めた」(関西・文系・大学4年・専門商社内定)といったネガティブな印象を、就活を通じて出会う社員から受け、企業選びに影響を与える様子も見受けられました。

採用活動を通して、就活生一人一人を尊重し、親身に寄り添う姿勢が大切であることはもちろんですが、社員のクチコミが世の中にオープンになっている中で、就活生だけに対して取り繕うのではなく自社の社員との日々の向き合い方が問われています。

本記事では、就活や就職後の働き方に関する男女の学生の意識差を起点に、特に女性の意識を深掘りしました。その中で見えてきた女性の企業選びの重視点は、「給料」や「会社の安定」だけでなく、以下のようなポイントでした。

  • 仕事とプライベートのメリハリを持って働ける
  • 社内の人間関係が良好で、若手のうちから誰もが意見を言いやすい
  • 結婚や子育てなどライフステージの変化に応じた柔軟な働き方が選択できる

これらは、女性就活生に顕著な項目として表出しているものの、本来は男女問わず、また就活生に限らない既存の社員にとっても働きやすい/働き続けたい企業として重要なポイントです。これらのポイントを踏まえて、すでに取り組んでいる内容についてはしっかり社内外へ発信し、不足している場合は社内を変革することが、企業の魅力向上だけではなく、社会のジェンダーギャップを埋めていくアクションにもつながっていくのではないでしょうか。


就活生基点で考える、新しい採用のあり方
電通では、2024年2月にZ世代の採用を対象としたコンサルティングチーム 「採用ブランディングエキスパート」を発足しました。マーケティングメソッドを活用した電通オリジナルの考え方である「就活ジャーニーマップ」や、自社の強み・競合との差別化・就活生への寄り添いを同時に達成する「3Cフレーム」など、独自メソッドによって企業の採用ブランディングを支援しています。多様な価値観を持つZ世代に対する有効な採用活動を検討する際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

電通 採用ブランディングエキスパート 事務局(西井、岩邊)
Email:recruit-branding-expert@dentsu.co.jp


【「Z世代就活生まるわかり調査2024」概要】
・目的:Z世代の就活に関する意識やトレンドを確認する
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:キャリア支援NPO法人「エンカレッジ」登録の2024年または2025年卒業予定大学生・大学院生
・有効回答数:818人
・調査手法:インターネット調査
・調査期間:2024年2月9日~2月15日
・調査機関:株式会社RECCOO(リクー)

 

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