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性の話をもっと当たり前に。By FemTech and BEYOND.No.3

「ハダカベヤ」と“ハダカの声”で「更年期」を話そう!

2025/03/07

ハダカベヤメンバーと田井氏

フェムテックを、女性のみならず社会全体に関係するものとして捉え、さまざまな取り組みを推進する電通の社内横断組織「FemTech and BEYOND.」(フェムテックアンドビヨンド)。

この連載では、本組織の取り組みを通して、フェムテックの潮流の変化やそこに関わる意義などを、多彩な企業・メディアなどと意見を交わしながら考えていきます。

今回は、同年代の女性3人が「世の中の価値観をアップデートする」ことを目的に届けるポッドキャスト配信ユニット「ハダカベヤ」のメンバーと、「更年期」について座談会を開催。

女性のウェルビーイングとエンパワーメントにつながる話題を提供してきた、IMALUさん、メグさん、なつこさんに、FemTech and BEYOND.メンバーの田井りんさんがインタビュー。女性の多くが直面する「更年期」とどう向き合っていくか、“ハダカの声”を交わしました。

ハダカベヤメンバーと田井氏
(左から)ハダカベヤ なつこさん、IMALUさん、メグさん、電通 田井さん

硬くなりがちな女性特有のテーマを、同年代の“友達トーク”で広げる

田井:今回は、ハダカベヤの皆さんと女性の「更年期」について考えていきたいと思います。本題の前に、まずは自己紹介をお願いします。

IMALU:IMALUです。タレントとしてテレビやラジオでお仕事をさせていただいています。現在は奄美大島に拠点を置いて、東京と行き来しながら楽しく活動しています。

メグ:メグです。2015年に下着のブランドを主とした会社を設立して働くほか、個人でウェルビーイング視点のブランディングやコンサルティングを手掛けています。会社設立のきっかけは、日本の女性たちがもっと主体的に自分の人生を選択肢の中から選んでいくためには、性的な自立も重要だと考えたことでした。性教育の「講演」といった形で伝えるのではなく、ファッションのフィルターを通して楽しみながら、自身のマインド・価値観をアップデートしてもらえたらと思っています。

なつこ:なつこです。これまでは広告会社やアパレルなどの組織に所属しながら働いていました。中でも一番大きな会社にいたときに、女性活躍をうたっていてもなかなか難しい現実や、現場で多くの課題を感じている状況を見聞きしてきたことで、何か一つでも変えるきっかけをつくれないかと考え、今はそうした活動のお手伝いをしています。

田井:「ハダカベヤ」はどのように始まったのでしょうか?

IMALU:コロナ禍前に、自己発信の活動として3人で始めました。お仕事というよりも、「発信することの大切さ」を感じながらスタートしたプロジェクトです。それが、こうした取材の機会もいただけるようになってとてもうれしいです。

IMALU氏

メグ:きっかけは本当に「友達同士の雑談」でしたね。会社設立の流れでセクシャルウェルネスやフェムテックなどにも興味が湧いて、IMALU・なつこと話しているうちに、「これは情報を共有しないと見えてこない世界だから、もっと話せる場を広げたい」と企画が広がったんです。

なつこ:当時ちょうどコロナ禍で、「Clubhouse」での生配信からスタートしました。その後、外出できるようになって感じた、女性特有の課題などをリスナーさんとシェアしながら、一つでもアップデートしていけたらと活動しています。

田井:女性周りのテーマを扱う場合、話が硬くなってしまったり、アプローチ方法や広める方法が結構難しかったりしますよね。皆さんはもともとご友人で、親しい仲だからこそ話が盛り上がる。ポッドキャストをお聞きすると、そうした“友達の輪”に入っている感覚になりすごく親近感が湧きます。本日もその雰囲気でお話しいただけるとうれしいです。

知らないからこそふくらむ、「更年期」のネガティブイメージ

田井:今日のテーマ「更年期」も、これまではどこかタブー感があり、語られる機会は少なかったように思います。今30代半ばで“プレ更年期”ともいえる皆さんが「更年期」と聞いてイメージするのはどんなものでしたか?

IMALU:基本的にあまりポジティブなイメージではないですね。「イライラ」や「ホットフラッシュ」などがあって、つらそうな印象です。それに“更年期の女性”というと、世間的にもどこか「面倒くさそう」「怒りやすい」といったイメージがある気がします。女性の体のことを知っていくと、更年期は当たり前にあるものなのに、どうしてそんなネガティブなイメージしかないのかな?と疑問に思い始めていたところです。

メグ:私が最初に更年期の話を聞いたのは、おそらく母とその友人たちの会話からです。そのとき印象的だったのが、「女性として“あがった”」という言葉で、当時小学生の私にはその意味がピンときませんでした。これは例えばゲームなどのステージを「上がった」、つまり何かを一つ「クリア」して次のステージに行ったというポジティブな話なのか、閉経したことによって、妊娠出産に関わるような、当時の母たちで言う女性としての「役目が終わった」ということなのか。どっちなんだろうって急に不安になった記憶があります。

メグ氏

IMALU:そこで「レベルが上がった」って捉えられたのはすごいね。私は「女として終わり」ってネガティブな意味だけ考えちゃった。

メグ:母たちの様子では、生理が終わって解放された部分もありそうな一方、なんか少し「危機」として話している感もあって。どちらにしても実態がつかめなかったから、両方の意味を持ってそうな何かが、いつか私にも迫ってくるの?って印象がありました。

田井:確かに。知らないうちに“忍び寄ってくる”イメージは少しありますね。

なつこ:私も最初は母親でしたね。思春期のときに母親がおそらく更年期の真っただ中で、いわゆるイライラやヒステリックな様子があったと思ったら、落ち込んだり、泣いたり、かと思えば急に笑ってる?みたいに今どんな状態なのかわからない。感情がコロコロ変わる母を見て「更年期になりたくない」と怖いイメージを抱きました。

田井:そのときになってみないとどう感じるのかはわからないし、知らないからこそ「怖い」印象もあって、何か対策をしようにも重たい腰が上がらない人は多いのかなと感じますね。第一歩の「知る」部分や対策については、皆さんどうしていけると良いと考えていますか?

メグ:女性特有の健康課題に関しては全部同じだと思うのですが、おそらくこれまで先人が「何となくやれてきた」ところに一つネックがある気がします。だから、自分たちも何となくやれそうな気がして、例えば骨盤底筋を鍛えるみたいな対策に関しても「私はしなくて大丈夫」と思ってしまうのかなと。

ただ、これだけテクノロジーが発達してサービスも増えてきた中、対策を「知る」ことで人生の何分の1かを更年期に悩まされず過ごせるかもしれない。逆に「知らない」ことでその可能性を失っていることに気づけるかが第一歩な気がします。自分が豊かに過ごすため、「どの選択肢を取るか」のジャッジをすることが大事なのではないかと。

田井:今回、リサーチをしていてびっくりしたことに、昭和初期ごろまでは更年期に悩まされる女性はかなり少ないという話がありました。なぜかというと、当時とは平均寿命が異なるから。

平均寿命や新たな感染症なども含めて、世の中全体が変わっていく中で、われわれはもしかしたら、新しいフェーズにいるのかもしれません。そうなると、「これまでも大丈夫だったから」ではなく、それぞれの時代に合わせてきちんと捉え直したり、考え直したりすることは大事だと思います。

IMALU:そのためには、当事者の方に「発信」もしてほしいですよね。生理などは近年やっと話しやすくなってきた段階だと思いますが、更年期はやっぱりまだまだ未知の世界。これから更年期に向き合う私たち世代は、どんなパターンがあるのかや、多彩な症状とどう付き合っているのかを先輩方から教えてほしい。実際自分にどんな症状が出るかはわからないので。

メグ:その意味でいうと、世のお母さんたちはおそらく親心で自分の不調を子どもに悟られまいとすることが多い気がします。でも、一番身近な女の先輩なのだから、実は一番知りたいんですよね。更年期についても、母娘間の共有といった点はもっと注目されてもいい気がしています。

更年期は「生活を組み替える」一つのきっかけ?

田井:リサーチの中で、他に「なるほど」と思ったことが2つありました。一つ目が「更年期」の期間。これは閉経を軸にして前後の5年間、トータル10年間がそう呼ばれるそうです。日本女性の閉経年齢は大体50歳と言われているので、45歳から55歳までですね。

IMALU:私も最近閉経「前後」なんだって知りました。でも、生理が終わるタイミングなんてわからないから、始まりがいつかも、これが更年期なのかもはっきりわからないのが厄介ですよね。「なんかイライラしてるけど、生理かなぁ」と思ってしまいそう。

なつこ:そうだよね。そっち側に惑わされちゃうことはあると思う。

田井:もちろん個人差はありますし、10年ずっとつらさを感じている人はあまりおらず、最大5年ほどという情報もありました。ただ、それでも数年間続く点は、大変と言われるゆえんの一つですよね。

コロナ禍のとき、初めての経験でこの先どうなるか不安に思った人が結構いたと聞きます。そこでもし、「この先2年間だよ」と先に言われて“終わり”が見えたら、その2年をどう過ごすか、違う視点で考えることもできたのではないでしょうか。更年期も長くはあるけれど、5~10年で終わると思えれば、少し違う捉え方ができるかもしれません。

IMALU:確かに、全然違うと思います。

田井:冒頭のお話でありましたが、IMALUさんが奄美大島に拠点を置こうと決断されたのは、コロナ禍がきっかけですか?

IMALU:その影響が一番大きかったと思います。私は20代は仕事しかしていなかったから、30代は好きな旅行ややりたかったことをして、海外にも行きまくるぞ!と思っていた翌年にコロナ禍がきたんです。もともと海の近くに住みたい夢はあったのですが、仕事もどうなるかわからず、大きな不安を抱える中で、あらためて自分の生き方とか仕事のやり方をすごく考えて、「今行っちゃえ」と決めました。

最初は東京近郊への移住を考えていたけれど、それだと仕事もこれまでどおりしちゃって中途半端になっていたと思うので、逆に奄美大島まで行く決断ができたのは大きかったと思います。

田井:その決断力はすごいですよね。コロナ禍も更年期も、来たら全てを諦めなきゃいけないとか、「これまでの生活ができない=ゼロ」と感じてしまうところを、捉え直す視点は重要だと思います。今のお話のように見方を変えたことで、むしろ「いいタイミング」と考えて生活を組み替えていく。更年期を、そのための一つのフェーズとすることもできそうです。

なつこ:確かにマイナスの考えでい続けると、どうしても選択肢が狭まって「もう無理」で終わっちゃいますからね。

田井:なつこさんだったら、この5~10年を、どう捉え直していきたいなと考えていることはありますか?

なつこ:少し違うかもしれませんが、年末に風邪をひいてしまい、1週間寝込みました。精神的にも少し凹んでしまったのですが、マイナスで考えていても熱は下がらない気がして、逆に「40度まで出してやろう」と思ったんですね。もうこの状況に向き合おう!と。

そこで最初に薬を飲まない選択をしたら、やっぱり上がり続けてしまって。薬を飲めば当然楽にはなる。両方を試してから「自分はどっちの方がいいんだろう?」って考えて、結局「ちょっと戦ってみよう」と飲まない方を選びました。

なつこ氏

IMALU:それはすごい。でも「薬もある」って選択肢があるだけでも気持ちは違うよね。結果はどうだった?

なつこ:薬は飲まないけど、足にホッカイロを貼ってみるとかいろいろ試していたら忙しくて、気づいたら平熱になっていた(笑)。そんなふうに、自分の体や状況に向き合いつついろいろ試してみたり、忙しさで紛らわすことも一つの手かなと思います。まずは自分なりにトライしてみる。

田井:すごくしなやかな考え方ですね。体の状態に耳を傾けて、自分自身が楽になる方法を考えたってことですもんね。

なつこ:そうですね、実験みたいな感じです。更年期は人によって症状も違うし、自分自身の同じ体であっても、生理と同じでおそらく月によっても変わってくる。だから毎回やってみることが違ってもいいと思います。加えて更年期を「治す」ために、という考えだけでいると、あまりポジティブには動けないと思うので、緩やかにしていくための方法みたいなことを考えるのもいいのではないかと思います。

まずは「状況を伝えておく」だけでも、いいのかもしれない

田井:もう一つの発見は、更年期って体調面にフォーカスされることが多いんですけど、実は3つあることですね。フィジカル面、メンタル面、あとは仕事や家族との関係を含む環境(ソーシャル)面。この3つが一気にバランスを崩すからつらくなると。最近はメンタル面もよくテーマに挙がりますが、真面目な人は「治そう」とか「仕事に穴をあけられない」と考えてしまうとどんどん追い込まれていく。そうした人たちに、皆さんだったらどんなアドバイスをされますか?

メグ:質問の回答とは少し違うかもしれませんが、この3つの軸でいくと、ソーシャルから変えていくのが一番コントロールしやすいように思いました。自分のメンタルヘルスを上手にコントロールできたらどんなに楽かと普段から考えていますが、更年期中にそれができるとはあまり思えない。体調面も自分でどうにかできたら苦労しませんよね。

だからやっぱり誰かに助けてもらうしかないかもと思ったときに、周りに完全に理解されなかったとしても、自分の不調を共有できたら少しは違うのかなって。

なつこ:そうかも。「わかってよ」とか「更年期だから許して」じゃなくて、まずは伝えておくってことよね。

メグ:そう、「とりあえず情報だけ置いておきます」って。このアクションがあることで、何かが起こったとき思い出してもらえるだけでも、違うかもしれない。なので、私がもし誰かにアドバイスをする状況になったら、「とりあえず今の状態を教えてもらえますか」ってまず言うと思います。

なつこ:それぞれ症状も違うしね。

メグ:教えてもらった結果、力になれない可能性もあるけれど、「いったん知れたから、何かあったら思い出します」ってマインドセットをみんなで持てるようになるといい気がするよね。

IMALU:当事者側ももっと「今更年期です!」って言いやすくなれると良さそう。

メグ:更年期は誰にでもいつか来るものって意味では、「お先にいただいています」みたいな言い方ができるといいのかも。若いうちは自分には来ないものって思っちゃって、それが余計に更年期じゃない人と更年期の人との分断を生む気がするから。「先輩、お先に行かれたんですね」みたいな空気感にしちゃう。

なつこ:確かに、「あの人、更年期らしいよ」って陰で言われるんじゃなくて、かわいらしいものにしてほしいよね。

IMALU:生理中もイライラすることがあるけど、それをパートナーとかに言っておくだけでも楽なことがあるよね。ささいな言い回しとかにイラッとしちゃったとき「今生理前です」って言うと、相手も少し気づいてくれる。

メグ:相手はちょっと怖いかもだけど(笑)、お互いのためを思って言ってることだからね。

田井:月経管理のアプリに、周期などの情報をパートナーに共有する機能もあります。おっしゃるとおり、更年期もいずれ少しずつデータ共有ができるような動きが出てくるのではないでしょうか。

個人的にはAIの活用もありだなと思っています。生身の人間に更年期だと言いたくない人もいることを思うと、例えば匿名の状態でAIがデータに基づいてみんなのつらくないタイミングにシフトを組んでくれたりすると良さそう。今後当事者が声を上げていくことで、そんなツールの必要性が広まっていく方向に進めるといいですね。

田井氏

情報を「知識」で終わらせず、話の場を広げることで、社会自体が変化する

田井:先ほどIMALUさんが発信も大切と話していましたが、更年期も数年前ごろから芸能人の方が経験談を話されたり、メディアが特集を組んだりしたことで少し大きな動きになりました。生活者も「皆さん苦労されてるんだ」「私1人じゃないんだ」と、仲間がいるような気持ちになれた。それはとても大事なことだと思います。

それをふまえて、最後にハダカベヤの皆さんとして、今後更年期に関して発信していきたいことや、更年期に限らず活動として広げていきたいことがありましたら、ぜひ聞かせてください。

IMALU:更年期に関しては、私達はまだ当事者ではないので、経験者のお話をどんどん聞いていきたいですね。

なつこ:今は教えてもらうフェーズ。それをシェアすることが、われわれのできることなので。

田井:確かに、われわれ“まだ”の人たちの不安や怖さを代弁して、皆さんの声で経験者の方に聞いていただきたいですね。

メグ:ハダカベヤの活動では、「知る」ことと「共有する」こと、2つの力を感じています。今はSNSやネット、動画などで多くの情報を学べるし、一方的なインプットならいくらでもできると思います。でも、そこで終わってしまうと、ただの「知識」になってしまう。

知り得た情報に自分の意見を乗せてこうした場で共有し、2人の意見も聞くことで、その知識がアップデートされてまた別の“色”がつきます。それをまた別の場で……というアクションがいろいろなコミュニティで繰り返されていけば、社会のアップデートにつながってくると思うんです。このアクション自体は、みんなが日常生活でできること。多くの方がそれを実行することで今度は当事者ではない人にも届いて、結果的に新たなサービスが生まれたり、制度がつくられたりして自分たちに返ってくるかもしれません。

この取り組みは社会課題がある限りできることなので、ずっと続けていきたいですね。すべての解決策を生むのは難しいでしょうけど、必要なマインドセットは考えていけると思います。

なつこ:そうだね。この話題に関心がない人や事象を知らない人、1人でも多くに聞いてもらって、その人が誰かに伝えてくれることでまた広がっていくから、それを少しでも伝えていけるようなコンテンツ作りをしていきたいなと思います。

田井:そうした「場」をつなげていく動きは、電通も頑張りたいですね。本日は、個人的にも新たな視点と考え方を知ることができたので、ぜひ今後はハダカベヤさんの収録にお邪魔させていただいて、続きではないですけどお話ができればと。

IMALU:まだまだ話せそうですよね。また田井さんのお話も聞かせてください!

ハダカベヤメンバーと田井氏
関連記事:「更年期」を生きる、働くアラフィフ女性たちの現実~第2のお年頃を考える~
 
 
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・ハダカベヤ:https://www.h7house.com/hadakabeya
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