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公開日: 2026/05/29

平成あるあるが懐かしすぎる!「イケナイ太陽 令和ver」の制作裏話

澤田 悠太

澤田 悠太

株式会社 電通

秋山 玄樹

秋山 玄樹

株式会社 電通

小森 香乃

小森 香乃

株式会社 電通デジタル

齋藤 李

齋藤 李

株式会社 電通

月刊CX編集部

月刊CX編集部

株式会社 電通

日々進化し続けるCX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)領域に対し、電通のクリエイティブはどのように貢献できるのか?電通のCX専門部署「CXCC」(カスタマーエクスペリエンス・クリエイティブ・センター)メンバーが情報発信する連載が「月刊CX」です(月刊CXに関してはコチラ)。

今回ご紹介するのは、ORANGE RANGEの「イケナイ太陽(令和ver.Music Video)」のミュージックビデオ(MV)です。30代を中心とした“平成ORANGE RANGE世代”に向けて制作された本MVは、YouTubeでウイークリー再生数日本1位、世界14位を記録するなど、大きな反響を呼びました。

なぜMVをつくることになったのか、制作においてどのような工夫があったのか。 企画を担当した澤田悠太氏、秋山玄樹氏、アートディレクターの小森香乃氏、齋藤李氏に話を聞きました。

【澤田悠太氏プロフィール】
電通
第3CRプランニング局
コピーライター
マーケティングサイエンス分野で修士号を取得後、電通入社。データ・テクノロジーセンターで5年間のデータサイエンティスト勤務を経て、現職。データの分かるコピーライターとして、広告キャンペーンの戦略、企画、AI活用・効果検証を一貫してプランニング。エンタメ領域を得意とし、数多くのアーティストやアニメのマーコム支援を実施。宣伝会議賞などコピーやCM公募賞の受賞多数。

【秋山玄樹氏プロフィール】
電通
カスタマーエクスペリエンス・クリエイティブ・センター
プランナー/コピーライター
TVCMの企画、SNSの投稿設計、デジタル領域の複合的なプロモーションの企画・制作を担当している。

【小森香乃氏プロフィール】
電通デジタル
アートディレクター/デザイナー/イラストレーター
ORANGE RANGEの「イケナイ太陽(令和ver.Music Video)」では、ロゴとMVのタイトルサムネイル、ポスター制作を担当。肩書にとらわれず幅広く活動している。

【齋藤李氏プロフィール】
電通
カスタマーエクスペリエンス・クリエイティブ・センター
アートディレクター/デザイナー/イラストレーター
ORANGE RANGEの「イケナイ太陽(令和ver.Music Video)」では、ポスター制作を担当。さまざまな案件に携わりながら、自分の得意分野を模索中。

※ 所属・役職は取材当時のものです。

一つのバズから始まったORANGE RANGEのナツい夏★プロジェクト

月刊CX:ORANGE RANGEの「イケナイ太陽」のプロモーションについて、概要を教えてください。

秋山:2025年、約15年ぶりにソニー・ミュージックに復帰したORANGE RANGEのリブランディングプロジェクトとして制作したMVです。制作チームがORANGE RANGE世代だったこともあり「同世代に刺さるMVにしよう」と企画しました。「真夏ヶ丘小恋路蓮寺学園」を舞台に、ORANGE RANGEのメンバーとマユリカのお二人にも出演していただき「2000年代平成あるある」を72個ちりばめました。

さらに、「ナツい夏★プロジェクト」と題して、マユリカのネタをオマージュした動画、SNS施策、居酒屋やカラオケ、限定オリジナルTシャツ、広島の遊園地「みろくの里」でのポスタージャックなど、話題をブースト化するための施策もあわせて実施しました。

その結果、Xではトレンド1位、SNSを含めたメディア全体で、延べ210億以上のインプレッションを獲得。MVはYouTube再生数2000万回を突破し、ウイークリー再生数で日本1位、世界14位に入るなど、SNSを中心に大きな話題になりました。

新MVの制作をご依頼いただいた際のKPIは「Apple Musicで『イケナイ太陽』を100位以内にする」という難易度の高いものでしたが、大幅に超える最高位27位を記録し、加えて長期チャートインできたのはうれしかったです。また、このMVをきっかけに、ORANGE RANGEは紅白歌合戦への出場も果たしました。

月刊CX:新MVの制作は、クライアントのご依頼から始まったものだったのですね。

秋山:そうなんです。もともとは、2024年末にソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)に、ORANGE RANGEのリブランディングについて自主提案させていただいたことがきっかけでした。SMLのORANGE RANGE担当の方も私たちと同世代で、ORANGE RANGEと青春を過ごしていたので、ぜひ一緒に盛り上げましょう!と言ってくださいました。

ちょうどそのころ、「M-1グランプリ」でマユリカさんが「上海ハニー」を校歌にするネタを披露されていて。そこで、ネタに合わせた画像をすぐに作り担当の方に送ったところ、早速Xで投稿いただき、話題になりました。このこともきっかけになり、「イケナイ太陽」の新MV制作をご依頼いただくこととなったのです。

勝因は「かっこいいだけじゃない、平成の空気感」

月刊CX:MVの完成度が非常に高く、SNSやニュースでも大きく取り上げられていましたね。企画段階で一番大切にしていたポイントは何ですか?

澤田:Y2Kブームでおしゃれにオマージュされる平成とは差別化して、平成ならではの雰囲気を再現したことです。2000年~2010年当時の、かっこいいだけではなくちょっとしたダサさがいとおしい、独特の空気感を含めて再現することを目指しました。

秋山:澤田と私はまさに直撃世代なので「自分たちがワクワクするか?刺さるか?」という視点を大事にしました。ターゲット層を同世代に絞り込む戦略にしていたため、リリース前は不安もありましたが、集中戦略をとったおかげで見ている方々にも刺さるネタを追求できたと思います。

YouTubeで公開しているMVに「制作に関する打ち合わせは楽しかっただろうな」といったコメントがあったのですが、本当に楽しかったですね。

澤田:あるあるネタについても、今まで言語化はされていないけれど、言われたら「ああ、そうだったよね!」と膝を打つような、絶妙なラインを狙えたのではないかと思います。

月刊CX:SNS施策で、話題化させるために工夫した点はありますか?

澤田:ローンチ前はティザーで盛り上げ、当日はストレートにプロモーションし、その後は話題を持続させる……というように、フェーズに合わせてクリエイティブな仕掛けを用意しました。

秋山:このプロジェクトは“明日公開するものを今日つくる”というようなスピード感で進んでいました。「カラオケ映像化してほしい」というコメントがあった次の日にはそれを反映させたポストをするなど、フットワークを軽く進められたことが全体の勢いにつながったのだと思います。

プロジェクトでは自分自身が視聴者として「どのような投稿なら面白いか」を楽しんで考えられました。 SMLの担当者やデジタルチームの方々と綿密に協力して進められたのも良かったですね。

 

平成っぽさを軸に、令和に出す意味があるクリエイティブを追求

月刊CX:小森さんと齋藤さんの担当範囲と、クリエイティブをつくる上で工夫した点についても教えてください。

小森:私は主にロゴとMVのタイトルサムネイルを担当しました。ビジュアル面では令和に出す意味があるものになるよう、昔のロゴのエレメントは残しつつ、平成にはなかったビビッドな色使いを採り入れるなど試行錯誤しました。

齋藤:私はポスター制作を担当しました。「平成っぽさ」「夏」という要素に加え、あえておしゃれにしすぎず、少しチープで親しみやすい雰囲気を意図的に残したのがポイントです。

齋藤:1枚目のポスターでは、夏のモチーフであるきゅうり、なすの精霊馬にORANGE RANGEの要素を足すと面白いなと思い、自分で水彩イラストを描きました。2枚目の電子レンジとORANGE RANGEを比較するポスターでは、世代ではない人が見ても、リアルな平成っぽさを感じられるかどうかを軸に制作しました。

月刊CX:スピード感のある中で、クリエイティブを制作するのは大変だったのではないですか?

小森:そうですね。スピード感が大事な案件でした。大きなバズの勢いに乗るためには、時間勝負なところもあるという学びがありましたね。

澤田:時間がない中でも制作してくれたMVのロゴは、当時のエネルギーをうまく抽象化していますし、視聴者に強い印象を残してくれたと思います!

監督と美術スタッフの細部へのこだわりが光ったMV。「隠れあるある」も発見?

月刊CX:MVで特に印象に残っているシーンはありますか

秋山:出演者が全員集合して、プールで歌唱するシーンです。現場で見ていて「生きててよかった」と熱い気持ちになりました。ORANGE RANGEの生歌が学校のプールに響きわたって、小学生のころの自分が感動していました。

澤田:制作期間が短い中、監督やプロダクション、美術スタッフの方々が本当に頑張ってくださいました。1カ月でキャストやスタッフを集めて美術を用意するのは大変だったと思うのですが、制作チームも同世代でORANGE RANGE愛が強く、教室の美術セットなども大変こだわってつくっていただきました。

月刊CX:平成を象徴するものにあふれていて、見ていて楽しかったです。

秋山:上履きが一人一人違うんですよね。スクールバッグの落書きについても、何パターンも用意してくださって。

月刊CX:細部まで平成あるあるがちりばめられているんですね。あるあるネタを考える際は、どのようなことを意識していたのですか?

秋山:Y2K的な表現はすでにやり尽くされているので、なるべくまだ取り上げられていないネタを探しました。ハイビスカスやカマチャリ(ハンドルをカマキリのような角度に改造した自転車)、教室で飲む紙パックのミルクティーなど、あのころの自分を思い出して、解像度高くタイムスリップして考えました。

澤田:あるあるネタについては、チームで出したニッチとメジャーの間を狙ったものの中から、MV監督の中野翔太さんが絶妙にチョイスしてくださったんですよね。中野さんのコントロール力は素晴らしくて。中野さんが平成初期・後期のあるあるを加えてくれたことで、僕たちが出した2000年代中心のネタにいいグラデーションをつけてくださったと思います。

月刊CX:72個ものネタを探すのはもちろんですが、映像に採り入れるのも大変だったのではないですか?

秋山:実は72個入れるべきかどうかは最後まで議論になっていたんです。撮影中もすべてあるか確認できていなかったのですが、完成後に数えたらちゃんとそろっていたので安心しました。

齋藤:視聴者の方が72個の平成あるあるを探してリスト化してくれたのもうれしかったですよね。偶然映り込んだ、意図していない部分まで「あるある」として挙げてくれている方がいて、制作側としても発見があって面白かったです(笑)。

社会現象のような盛り上がりを実現。人が話題にしたくなるような企画に取り組んでいきたい

月刊CX:プロジェクトの反響を受けてどのようなことを感じましたか?

澤田:美容室や飲食店で隣の席の人がMVの話をしているのを聞いて、多くの人が見てくれたんだと実感しました。あまり言語化されていない些細なあるあるやノスタルジーこそが、人に刺さり、誰かと話したくなるんだと確信を持てました。

秋山:「界隈」と呼ばれる多種多様なコミュニティがある現代で、MVのコメント欄がORANGE RANGE世代の同窓会のようになっているのを見て、世代も一種のコミュニティになり得るのでは、という学びがありましたね。そして改めてORANGE RANGEのパワーの強さを感じました。

小森:「ORANGE RANGEがまた盛り上がってうれしい」「明日も仕事を頑張ろうと思えた」という声があったんです。少しでも誰かの人生にポジティブな影響を与えられたんだとうれしくなりましたし、より一層気を引き締めてデザインしていこうと、改めて思いました。

齋藤:入社してから初めて携わった案件で、興味のあったMV制作に関われてうれしかったです。このMVの後、リアルな平成ブームが少し来たように感じていて、MV制作で新しいブームを起こせるんだ、と影響力の大きさを感じました。

月刊CX:今後CX領域で取り組みたいことはありますか?

齋藤:実際に人が足を運びたくなるようなものをつくりたいと思っています。オフラインのイベントや、自分の得意分野である絵を生かした企画に携わりたいですね。

澤田:今回のように「あるあるは反響がある」「ノスタルジーは特定の世代に刺さる」といった自分なりの仮説を持って、プロモーションを企画したいです。抽象的なイメージを具体化して話題にすることが好きなので、今後も案件の中で検証しながら、CXに貢献していきたいと思っています。

小森:企画の力をさらに増幅させるような、強いビジュアルを制作できるように今後も頑張ります。

秋山:コンテンツやIPに関わっていきたいですし、いずれはそれを自分たちで生み出していけたら面白そうだなと思っています。


(編集後記)
今回は、ORANGE RANGEの「イケナイ太陽(令和ver.Music Video)」のMVについて紹介しました。

取材中、メンバーの皆さんが本当に楽しそうに話す姿を見て、まるで放課後の教室にタイムスリップしたような気分になりました。つくり手が楽しみながらつくることで、その熱狂は画面を越えて伝播する。そんなクリエイティブの原点を見た気がします。

今後こういう事例やテーマを取り上げてほしいなどのご要望がありましたら、下記お問い合わせページから月刊CX編集部にメッセージをお送りください。ご愛読いつもありがとうございます。

月刊CX編集部
電通CXCC 木幡 小池 大谷 奥村 古杉 イー 齋藤 小田 高草木 金坂

※掲載されている情報は公開時のものです

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澤田 悠太

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株式会社 電通

第3CRプランニング局

コピーライター

マーケティングサイエンス分野で修士号を取得後、電通入社。データ・テクノロジーセンターで5年間のデータサイエンティスト勤務を経て、現職。データの分かるコピーライターとして、広告キャンペーンの戦略、企画、AI活用・効果検証を一貫してプランニング。エンタメ領域を得意とし、数多くのアーティストやアニメのマーコム支援を実施。宣伝会議賞などコピーやCM公募賞の受賞多数。

秋山 玄樹

秋山 玄樹

株式会社 電通

カスタマーエクスペリエンス・クリエイティブ・センター

プランナー/コピーライター

TVCMの企画、SNSの投稿設計、デジタル領域の複合的なプロモーションの企画・制作を担当している。

小森 香乃

小森 香乃

株式会社 電通デジタル

アートディレクター/デザイナー/イラストレーター

ORANGE RANGEの「イケナイ太陽(令和ver.Music Video)」では、ロゴとMVのタイトルサムネイルの制作を担当。肩書にとらわれず幅広く活動している。

齋藤 李

齋藤 李

株式会社 電通

カスタマーエクスペリエンス・クリエイティブ・センター

アートディレクター/デザイナー/イラストレーター

ORANGE RANGEの「イケナイ太陽(令和ver.Music Video)」では、ポスター制作を担当。さまざまな案件に携わりながら、自分の得意分野を模索中。

月刊CX編集部

月刊CX編集部

株式会社 電通

CXCC(CXクリエーティブセンター)

電通のCX専門部署「CXCC」メンバーがCXとクリエイティブについて情報発信する連載「月刊CX」の編集チーム。局内または社内の優れたCXクリエイティブの成功事例を取材することで、CXクリエイティブの本質や可能性を解き明かす。コアメンバーは、木幡容子、小池宏史、大谷奈央、奥村広乃、古杉佑太郎 、イースピン、齋藤敬介、小田健児、高草木博純、金坂基文で全員CXCC所属。

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