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情報メディアを取り巻く環境は、この10年で大きく変化しました。スマートフォンの普及、SNSの浸透、動画メディアの拡大、そして生成AIの登場によって、生活者の情報メディア行動もかつてないスピードで変化を続けています。こうした変化は一見、地域間格差を解消し全国均質化の方向に向かうと思われがちですが、本当にそうなのでしょうか。

本記事では、情報メディア行動において依然として存在する都市部と地方、都道府県ごとの差異に注目し、マーケティング的な視点とともに検討していきます。

分析対象データは主に「全国メディアプロフィールサーベイ(以下:全国MPS)」の最新データを活用しています。(調査の詳細はこちら


日本は2つの国からできている!?データから明らかになる東京の特異性

2016年にLINEヤフー社が「日本は2つの国からできている!? ~データで見る東京の特異性~ 」というレポートを発表し話題になったのをご存じでしょうか。2つの国とは東京とそれ以外の地域を意味し、検索行動から東京の特異性を明らかにしています。

今回私たちは、前述の記事に倣い、全国MPSを使って東京とそれ以外の地域の生活様式の差異から見ていきたいと思います。

まず東京では一般的になってきていると感じる「在宅勤務」について見てみましょう。東京では、1週間に1回以上在宅勤務をする人の割合は30%弱。愛知(12.3%)や大阪(17.2%)といった大都市を含む県でも20%に満たず、全国平均も17%程度であることから、東京は突出して高いことが分かります(図表01)。

逆に車を1週間に1回以上運転する人の割合は、地方では約90%に上るのに対し、東京は43.7%と際立って低くなります。車の運転頻度はラジオの聴取時間と相関があることから、マーケティング的にも重要なエリア差です(図表02)。

ほかにも、世帯年収や単身世帯割合、男性のうち家事担当者の割合など、さまざまな点で東京の特異性は際立っています。

一方で人口の集中度を見てみると(図表03)、東京を筆頭に都市部が突出していることが分かります。しかし人口が400万人未満の都道府県の人口を合わせると、全体(15~79歳)の約44%を占めており、決して無視できない割合であると言えます。


しかし、世の中のマーケターと呼ばれる職業の人たちの居住エリアを調べると圧倒的に1都3県(東京・埼玉・千葉・神奈川)に集中していることが分かります(図表04)。それによって東京を中心とした都市部の状況を当然のものとして受け止めていると、リアルな地方の状況を見失う可能性があります。そうした点からも、エリア分析においては客観的なデータや、リアルな居住者の声が重要と言えます。


インターネットの普及でエリア差は平準化するのか?

次に都道府県別のメディア接触時間からは何が見えてくるでしょうか。ここでは、インターネット(動画)を例に比較してみましょう。分析には図表05のような散布図を使います。

横軸……全体ベース(ネット動画を全く見ない人も含めた視聴時間)
縦軸……行為者ベース(ネット動画を週に1回以上視聴する人だけを取り出した視聴時間)

として47都道府県をプロットしています。右上の象限を全体ベースでも行為者ベースでも全国平均以上の視聴時間があるヘビーエリアと定義し、そこに都市部が多くプロットされるメディアを都市型メディア、地方が多くプロットされるメディアを地方型メディアと分類します。

例えばネット動画についてはヘビーエリアに青森、鹿児島、三重といった地方が多くプロットされ、黄色く色付けした1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)は左下の象限にあることから、接触時間という視点でみるとネット動画は「地方型メディア」と定義することができます。

逆に都市部で比較的よく見られているメディアとしてインターネット(SNS・ブログ)があります(図表06)。2024年頃までは典型的な都市型メディアとされていましたが、近年は地方エリアも多くプロットされている傾向があることから、都市と地方混在型と分類しています。

他のメディアについても整理をして図表07 にまとめました。

特に注目しているのは、23年、24年調査では典型的な都市型メディアであったインターネット(ウェブサイト)、インターネット(SNS・ブログ)が都市と地方混在型に移行しつつある点です。基本的にメディアの新しい行動様式は若年層から高齢層へ、都市部から地方へ浸透していくことで平準化に向かいます。

その過程が今回この2つのメディアに顕著に見られたということでしょう。ただしそれによってメディア行動においてエリア差がなくなり、全国均質化に向かうかというと、そうではないと考えます。なぜならまた新たなメディアやメディア行動様式が登場することで再びエリア差が生じ、それがまた平準化に向かうという流れを繰り返すと考えられるからです。この循環を繰り返すことで、地域差は継続的に生じ続けるのではないでしょうか(図表08)。


視聴者像も視聴コンテンツもエリアによってこんなに違う!

もう一つ注目したいのが、同じテレビ視聴者、雑誌読者などといっても、エリアごとに属性や意識・価値観から実際に視聴しているコンテンツまで、傾向が大きく異なる点です。つまり時間の差異だけでなく、視聴者像も視聴コンテンツも異なるのです。

例えば閲読雑誌のランキングを例に見てみてみましょう(図表09)。東京は「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」といったビジネス・マネー誌が上位に来るのに対し、雑誌がよく読まれている地方エリアをピックアップすると、「オレンジページ」「レタスクラブ」といった生活実用情報誌や、「週刊少年ジャンプ」「週刊少年マガジン」といった少年向けコミック誌が上位に挙がってきます。

同様に新聞記事についても、東京では「国政・中央の政治」「国内経済」「国際記事(ニュース)」といった国内外の政治・経済コンテンツが上位を占めるのに対し、地方では「地域・地元の政治」を筆頭に「地域・地元の社会・事件」「地域・地元の経済」と地域・地元情報が重視されていることが分かります(図表10)。

実はこうした傾向は今回の分析で随所に見られるものでした。東京を中心とした都市部はビジネスや政治・経済など「情報源としてのメディア行動」が強く出る傾向にあり、逆に地方では「地域・地元のつながりや家族・日常生活を大事にするメディア行動」がうかがえるのです。


メディア接触時間のエリア差には、高齢化が影響しているのか?

ただ、ここでよくあるのが、地方のメディア接触時間には高齢化が影響しているのではという指摘です。つまり、エリア差ではなく年代差なのでは?という問いです。

そこで同じ性年代間でエリア比較を行い、東京の接触時間との差分をヒートマップ化したのが図表11です。同じ性年代であってもエリア差を確認することができます。

例えば北海道を例に見ると、テレビは男性30~70代では数分~40分近く東京より長く視聴されています。インターネット(動画)についても、性年代によりばらつきはあるものの、男性20代、女性30代では東京と比較し1日当たり30分強長くなっています。逆にこれまで都市型メディアとされてきたインターネット(ウェブサイト)は女性を中心に多くの世代で、東京を下回っています。テレビやインターネットは接触時間が長くなる傾向にあるので、差分も大きいと言えますが、それを加味してもその差は顕著と言えますし、他の地方エリアについても似た傾向が見られました。つまり年齢構成ももちろん影響はするものの、同一性年代間で比較しても、メディア接触時間にはエリア差があると言えるのです。


企業・ブランドイメージのエリア差はその土地の風土や価値観を大きく反映

ここまで見てきたように、メディア行動にはエリア差が大きく見られることが分かりました。そしてこれはとりもなおさず広告コミュニケーションにも大きな影響を与えます。

例えばテレビ接触時間が長いエリアは、ファネルの各段階においてもテレビが果たす役割が大きく、地方ではテレビの広告効果が大きいということです。

※全国MPS2025では上記のファネル項目について当てはまるメディアを回答してもらっている


例として図表13は住宅関連サービスについて「企業やブランド・物件に興味をもつ」際のコンタクトポイントを聞いた質問の回答を、東京と九州地方の差分をとってグラフ化したものですが、九州地方では「チラシ・ダイレクトメール」「フリーペーパー」「雑誌広告・記事」といった紙媒体も効果が高い様子がうかがえます。


さらにブランドのイメージもエリアによって異なるのを確認したのが図表14です。住宅関連ブランドAのエリアごとのイメージ評価をコレスポンデンス分析で整理したところ、四国では「担当者の対応が迅速」「担当者の対応に信頼感がある」といった担当者の評価がイメージ形成に重要となっており、間取りへのこだわりが強く見られます。

北海道では厳しい自然環境ゆえの「高い耐震性」「高い耐久性」といった家の頑強性がイメージ評価につながるのが分かります。また東北では、震災の影響で比較的近年に家の建て替えが行われていることもあり、「防音・遮音性」「断熱性」といった「最新の住宅設備」へのイメージが評価されています。

逆に大都市圏を抱える近畿、関東、中部などは中央に集まり平均的なイメージを持っていることが分かります。このように地方で特徴的なイメージ形成をしつつ、大都市圏エリアはごく平均的なイメージにとどまるというパターンはエリア分析でよく見られるものでもあり興味深いです。


マーケターへの示唆――それでもエリアマーケティングに取り組むべき理由とは?

このようなご説明をした上で、しばしば広告主の皆さまから指摘されるのが「地域差やエリアマーケティングの意味は理解できるのだが、エリア施策は手間暇も費用もかかり非効率だ」という点です。つまりそれでもエリアマーケティングに取り組む意味とは何なのかという問いです。

そこで検討すべき点を4つまとめました(図表15)。

最も重要な点は、コミュニケーションの最適化が「全国最適化」ではなく、「都市部最適化」になっているのではという課題意識です。これは、デジタル施策などで顕著に見られます。しかし、地方は非効率なのではなく、都市部に合わせたコミュニケーション、都市部にフォーカスしたKPI設定によって、非効率に見えてしまっているだけかもしれません。さらに、全国を一律対象としたキャンペーンは平均化されることで実際にはどこにも最適化されない、誰にも響かない施策になってしまっている可能性もあります。

地方は一つ一つのエリアで見ると非効率かもしれませんが、長期的なエンゲージメント価値やエリア施策を横展開するなどに加え、地方を束ねて全体とし、同一ターゲットで横串にして捉えるなどの考え方で量を取っていくことで、効果的、効率的なコミュニケーションも可能だと考えます。

ビッグデータやAIの普及によって、エリアマーケティングはこれまで以上に高度化かつ実践がしやすいものになっています。全国を一律に捉えるのではなく、エリアごとの生活者像や情報環境の違いを可視化し、それぞれに適したコミュニケーションを設計することも現実的になってきました。

電通では1億人規模の高解像度なペルソナを仮想再現したAIモデル「People Model」搭載のリサーチツール「People Research 」を提供しており、対象エリアで調査を実施、そこから抽出されたエリアのターゲット層などに対し「AIQQQ TALK 」でデプスインタビューなどを実施することも可能となってきています。

今回の分析を通じて見えてきたのは、デジタル化によって地域差がなくなったわけではなく、絶え間なく続く新たなメディアや情報行動の登場を起点に、都市部と地方のエリア差が循環し続ける可能性です。そしてそうした地域ごとの差や多様性の中にこそ、新たなコミュニケーション機会やビジネスチャンスが存在しているのかもしれません。


【調査概要】
「全国メディアプロフィールサーベイ2025(全国MPS2025)」
・目的:生活者の主要5メディアへの接触状況の把握
・対象エリア:全国(47都道府県全域)
・対象者条件:15~79歳(中学生は除く)
・サンプル数:30927s
・調査手法:インターネット調査
・調査期間:2025年8月18日~9月28日
・調査主体:株式会社電通、株式会社朝日新聞社、株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ、株式会社中日新聞社、株式会社日本経済新聞社、株式会社毎日新聞社
・調査機関:株式会社ビデオリサーチ

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著者

榊原 理恵

榊原 理恵

株式会社 電通

マーケティング統括センター メディアイノベーション研究部

研究主幹

銀行勤務ののち電通入社。電通総研出向、新聞局データソリューション部などを経て、2024年からメディアの調査・研究を担当。世代別メディア行動、ローカルと都市のメディア行動比較、SNS利用実態調査、女性のライフステージ別メディア行動などをテーマに活動している。

電通メディアイノベーション・ラボ

電通メディアイノベーション・ラボ

株式会社電通

電通の長年のメディア・オーディエンス研究実績を背景に、2017年10月に発足。多様化する人々の情報行動の変化を捉えメディア社会の全体像を見通すための調査研究・情報発信や、その中で求められる企業のコミュニケーション活動の在り方について提言やコンサルティングなどを行っている。

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