カテゴリ
テーマ
01_TOP_graphic.png


地域を愛し、地域の魅力を引き出して、地域を元気にしている「人」たちの意欲的な取り組みや、背景にある思いに迫る連載企画「地域愛に火をつけろ」。

第2回は、北海道・苫小牧市の「マグネットコンセプト」を生み出した取り組みについて、苫小牧市 総合政策部政策推進室シティプロモーション課 西川真彦さんと、電通北海道のFuture Creative Center Hokkaido(FCCH)の増田光記さん、電通 Future Creative Center(FCC)の増原誠一さん、小柴尊昭さんにお話を伺いました。

02_match.png

バラバラだった市のPR施策に必要なもの。それは「マグネットコンセプト」だった

──まずは、苫小牧市にはどのような課題があり、どういう目的で今回の取り組みが始まったのか教えていただけますか?

西川:はい。私は苫小牧市のシティプロモーション課に所属しており、市のPR施策、広報紙やSNSでの情報発信などを担っています。北海道というとのどかな大自然のイメージが強いかと思いますが、苫小牧市は、スポーツがさかんであったり、再生可能エネルギーの拠点として企業誘致が進んでいたりといった強みがあり、市としてこれまでさまざまなPR施策を実施してきました。

しかし、職員が4年に1度は異動するということもあり、施策が断続的で、統一感・一体感がない、という課題がありました。今後は本格的に「シティブランディング」に取り組もうと、プロポーザル形式で事業者を募集しました。

苫小牧市 総合政策部政策推進室シティプロモーション課 西川真彦さん

増田:その公募に、電通北海道として参加させていただきました。通常であれば、課題解決の戦略と、ロゴやコピーなどの表現物を提案することが多いかと思いますが、私たちは、電通Future Creative Centerの増原さん・小柴さんにもご協力いただいて、「未来を共創するプロセス」をご提案しました。

04_masuda.jpg
電通北海道Future Creative Center Hokkaido(FCCH) 増田光記さん

──「未来を共創するプロセス」とはどういったものですか?

増原:これは、一方的なご提案ではなく、企業・自治体などの皆さまと対話しながら意志を引き出していく新しいクリエイティブ手法で、「Future Creative Lead」と呼んでいます。変化が激しい時代において、未来を「予測」することは難しいし、そこに一律の「正解」はありません。だからこそ、対話の中で、みんなで価値を「発見」し、熱量ある「運動」へとつなげていくことを大切にしています。

05_Masuhara.jpg
電通 Future Creative Center(FCC) 増原誠一さん

西川:その共創プロセスを通して、バラバラなPR施策をつなぐ苫小牧市の「マグネットコンセプト」を作りましょうというご提案をいただき、強く共感しました。行政だけで考えるのではなく、市民・企業・団体の皆さんと対話しながら、一体となって、苫小牧市の価値を再構築していこう、と。目指すものの共通認識を持てたことが、電通北海道さんに本件をお願いしたいと思った一番の理由です。

小柴:日頃さまざまな自治体のお仕事をさせていただいていますが、「シビックプライド」こそが、未来を変える力になる。私はそう信じていますし、そういう事例が全国にはたくさんあります。

苫小牧市は、GX(グリーントランスフォーメーション)戦略地域に指定されるなど先進的なイメージがありましたが、住民の皆さんはあまり自分事化できていなかったのでは、と考えました。そこで、みんながオーナーシップや希望を持てるような旗印・掛け声を作れたら……と。それこそが私たちの目指す「マグネットコンセプト」でした。

06_Koshiba.jpg
電通 Future Creative Center(FCC) 小柴尊昭さん

西川:お話を伺って、一緒につくっていく未来がすごく想像できました。一方通行のプロモーションではなく、地域の皆さんを巻き込んだ企画。単発で終わることなく、市として「自走」できる未来まで、電通北海道さん・電通さんは考えてくださっていると感じました。

市長も、FMラジオパーソナリティも、まちづくりや企業の皆さんも。みんなで未来を語り合おう!

──「未来を共創するプロセス」では、具体的にどのような人たちがどのような議論をされたのでしょうか?

西川:市長をはじめ、FMラジオパーソナリティ、UDC(アーバンデザインセンター苫小牧)や苫小牧タウンマネジメントといったまちづくり関係団体、地域の建設会社や電力会社といった企業の方々、さらには観光協会や商工会議所、地元の人気イベントの主催者まで、本当に多種多様な領域の皆さまにご参加いただきました。

小柴:私たちからは「未来をつくるキープレーヤーの方に集まってほしい」というリクエストをさせていただいただけなのですが、西川さんのお力添えあって、幅広い業種から、まちづくりに非常に意欲的・主体的な方々が集まってくださいました。

皆さんと、ノーザンホースパーク(馬のテーマパーク)という素晴らしい自然に囲まれた由緒ある場所で、隣で馬が歩いているのを見ながら(笑)、「Future Creative Session」を実施しました。

07_WS1-WS4.jpg

増田:私も増原さんや小柴さんから学んだのですが、このセッションは、従来の広告制作やワークショップとは、アプローチがまったく違います。通常は、どんな仕事も「課題」から入って、それを解決するためにどうするか……という思考のプロセスをたどることが多いですよね。でも、「Future Creative Lead」の考え方に基づいたこのセッションでは、苫小牧市の「ありたき未来」をみんなで一緒に想像する。そしてその未来を実現するために、今、苫小牧市が持っている価値や強みを掘り起こし、再発見して、アクションを共創していきます。

この手法・プロセスに、やはりすごく意味があるなと感じました。

西川:「課題」から入らない、というのは私もすごく新鮮でした。これまで多くの事業者さんとやり取りをしてきましたが、「課題」から入らない、あるいは「結論」を出さなくていいセッションは初めてでしたし、行政だけでは絶対にできなかったと思います。

増原:そこは、われわれも実はすごく大事にしています。会議や議論というのは常に「課題」から始まるので、みんな「課題疲れ」しているし、「課題」から入ると、熱が入っていかないんですよね。だから私たちは、未来の「価値」と「可能性」から入ることにこだわっています。

マイナスからゼロではなく、ゼロからプラスを考えることで、ポジティブな熱量を持てる。その「意志」と「熱量」からしか、未来は動かない。そう信じてやっていますし、西川さんにもそれを感じていただけて、すごくうれしいです。

──セッションでは、どのような気づきがありましたか?

西川:私は苫小牧生まれ苫小牧育ちなんですが、「苫小牧の魅力って、把握できていなかったな……」というのが率直な気づきでした。セッションの内容は、当日その場で、電通さんがグラフィックレコーディングにまとめてくださったのですが、人・自然・産業・文化の4つの領域で資産を整理していただき、改めてこんなにたくさん良いところがあったのか……と。

知っているつもりでも、ずっと苫小牧にいると分からなくなっていることがある。それに気づかされ、本当に圧倒された時間でした。

08_GraphicRecording.png
グラフィックレコーディング:中尾仁士さん
09_FutureTomakomai.png

増田:私が印象的だったのは「人」ですね。苫小牧ってこんなに熱い人が多いんだ……!というのが発見でした。どう考えても、この町の未来を作っていく中心は「人」だなと感じました。

増原:「人」の魅力は本当にそうですよね。グラフィックレコーディングの真ん中にも「人」が描かれていて、主体的に町の未来をつくろうとしている方が多いのが特徴的でした。

よく、地域活性化の議論では「関係人口」(地域と継続的に関わる人々)を増やそうという話もありますが、むしろ「共創人口(ともに地域をつくる人々)」が苫小牧の価値になっていくのでは、と感じました。

増田:そういう人々の熱量をいかに引き出せるか?みんなの背中を押していく「マグネットコンセプト」が作れるか?という視点で、議論を重ね、磨いていきました。

──最終的にできた、苫小牧市の「マグネットコンセプト」はどのようなものですか?

西川:「TOMAKOMAI-SHIP」というコンセプトです。私はこれ、すごく苫小牧らしさがあふれていて、良いなぁと思っていて。「SHIP」というのは、「船」という、港町である苫小牧の象徴でもありますし、「Friendship」「Relationship」など「関係性」を示す言葉でもあります。

この「関係性」に着眼して、市民の思いを掘り起こしながら進めていくこれからの苫小牧の事業(具体的活動は2027年~)は、絶対におもしろいものになっていくだろうなと、ワクワクしています。

10_Tomakomai-ship.png

小柴:ここまでのプロセスにおいて、苫小牧市の方々が常にオープンかつフラットでいてくださったことに、とても感謝しています。いろいろな事情やお立場ももちろんある中で、バイアスや色眼鏡を持たず、皆の意見を受け入れてくださいました。主体である苫小牧市さんのそういう姿勢があってこそ、アイデアや熱量が増幅していったと感じています。

地域愛から生まれる「意志」や「熱量」。それこそが、未来の起点に

──「地域」のため、また「未来」のために、これからどのようなことに取り組んでいきたいですか?

西川:まず、昨年の自分と今の自分を比べた時に、マインドが本当に違うなと感じています。こういう職員を、もっともっと増やしていきたい。やはり地域をPRし活性化させるには、まず自分が、自分の町に誇りを持つことが本当に大事なんだと改めて思います。

また、電通さんにまとめていただいた苫小牧の資産を見て、これは「過去」から積み重なってきた財産なんだろうなと強く感じました。先人たちのものを受け継いでいること、それがあるから今があることを、実感し感謝してこそ、人の心に響く発信ができるのではと思っています。

小柴:過去と未来のつながりが意識できるってすごくすてきなことですし、それが感じられる町って、すばらしいですね……!

当たり前のことを言うんですけど、日本は地域の集合体ですよね。この国には、気候風土や歴史も多様で、それぞれの持ち味と思いにあふれた地域がたくさんある。もちろん課題もいろいろあると思いますが、ポテンシャルのない地域はない。未来の起点、未来の種のバリエーションが、地域分ある。今回、苫小牧市の皆さんとご一緒する中でも、それをすごく実感しました。

増原:一律ではないからこそのおもしろさがあるよね。それぞれの文脈・文化の中でつくられた「その土地ならでは」を探究することに可能性があるし、そのプロセスや皆さんの意志に、われわれも伴走していきたいと考えています。

近年は、企業の方からも、未来についてのご相談が本当に増えています。皆さん、日本や社会を良くしたいという強い思いを持っている。だから企業の未来も、地域の未来も、併せて考えていくことが必要だと思うし、みんなで共創して取り組んでいきたいですね。結果として、日本全体に活力が生まれて、ワクワクできる未来につながれば、こんなにうれしいことはありません。

増田:私は、生まれも育ちも北海道です。愛するこの地で、どうやってワクワクする未来を作っていくか。広告で培った、言語化・可視化・物語化、そして実装までのスキルは、そういう未来づくりに生かせると確信しています。それを担っていく組織として、電通北海道ではFCCH(Future Creative Center Hokkaido)も立ち上げました。

また、北海道が持つ課題(人口減少、後継者不足、一極集中、インフラ維持、気候変動による産業影響等)は、日本全体が抱える課題でもあります。北海道での成功事例を、日本の未来につなげていきたい。地域の皆さんと一緒に、ポジティブな「熱量」を育て、広げていくことに、これからも挑戦していきます。

11_Last.jpg
「Future Creative Session」の様子(中列右から、電通 Future Creative Centerの増原誠一さん、小柴尊昭さん、電通北海道Future Creative Center Hokkaidoの増田光記さん、後列右から2番目がチームメンバーの電通CXCC高橋理さん)

この記事は参考になりましたか?

この記事を共有

著者

西川 真彦

西川 真彦

苫小牧市

総合政策部政策推進室シティプロモーション課

増田 光記

増田 光記

株式会社 電通北海道

クリエイティブ・ディレクター

札幌のプロダクションから広告業界をスタートし、電通テック(現 電通プロモーションプラス)札幌支社を経て現在に至る。「考えつづける」ことをモットーに、本質課題を捉えた戦略づくり、ストーリー構築、コアアイデアの発見~クリエイティブ表現で、クライアントが抱える課題に最適な解決策を粘り強く探す。現在は、広告クリエイティブの枠を超えて、未来づくりの領域に挑戦中。
小柴 尊昭

小柴 尊昭

株式会社 電通

フューチャークリエイティブリード室

クリエイティブディレクター

電通未来創造グループを経て現所属。「人起点」の変革をテーマに、企業の組織・人材活性化や、地域の未来づくりを支援。人の熱量を増幅させるクリエイティブと、社会課題解決に向けた持続的なプロジェクト運営がモットー。ライフワークとして写真の本質力を活用した課題解決アプローチ「フォトリューション」も実践。
増原 誠一

増原 誠一

株式会社 電通

Future Creative Lead Office

マネージング・ディレクター

ますはら・せいいち/電通 Future Creative Lead Officeマネージング・ディレクター、Future Creative Center統括プロデューサー。企業の未来構想に向けたトータルプロデュースを実施。ブランドの思想を伝えるための幅広い企画開発、プロジェクトマネジメントを担う。

あわせて読みたい