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金融ビジネスにイノベーションを!No.1

「日本の金融を強くする」

金融イノベーションってどんなもの?

2014/05/19

いま、金融業界に、大きなイノベーションが巻き起ころうとしています。モバイル端末による電子決済から、クラウドファンティング、P2Pレンディング…。銀行ではなく、ITベンチャーやインターネット企業が牽引する新しい金融サービス、そのトレンドについて、株式会社電通国際情報サービス(ISID)の飯田哲夫さんに聞きました。

金融業界のビジネスを、より良く面白く変革したい!

――飯田さんは、ISIDでどのようなことをしているんですか?

飯田:金融の世界にイノベーションを巻き起こす、新しいシステムの企画開発に取り組んでいます。もともとは銀行をはじめとする金融機関向けの“お堅い”システム開発を行っていたんですが、銀行の求めるものだけを受動的に作っていたのでは、金融業界全体をより良く、面白く変えていくことはできないと思ったんです。

私たち金融ソリューション事業部が目指しているのは「お客様の真の課題を解決する」こと。そのために、単純にバックエンドのシステムを作るという観点ではなく、生活者の目線で、創造力あふれる金融サービスを追求したいと考えました。

――「創造力あふれる金融サービス」とは、具体的にどういったものを指すのでしょうか?

飯田:身近なところだと、「PayPal」が分かりやすいのではないかと思います。「PayPal」は、電子メールのアカウントとインターネットを利用した、クレジットカードの決済サービス。アメリカのPayPal社がすべての決済を仲介するため、カードに記載された重要情報が取引先に漏れる心配がありません。また、銀行の海外送金サービスに比べ、手数料が安く済むところも魅力です。いくつもの支店を経由して送金を行う銀行サービスの場合、経由した支店の分だけ手数料が積み上がってしまいます。一方の「PayPal」は、PayPal社の手数料だけを支払えばOK。利用者にとってメリットが大きく、だからこそ世界中でこれだけの支持を集めているのです。

他にも、インターネットを通じて“お金を借りたい人”と“お金を貸したい人”を引き合わせる個人間融資サービスのP2Pレンディング(Peer to Peer Lending/ソーシャルレンディング)、企画段階のプロジェクトを公開し“パトロン”と呼ばれる出資者を募る投資サービス、クラウドファンディングなど、さまざまな金融サービスが生まれています。

いずれも、インターネット関連の企業やベンチャー企業など、金融機関ではない組織が牽引しているところが特徴。金融機関主導では実現できない金融サービスが、いま、世界中で創出されているのです。

金融機関主導の金融イノベーションが生まれにくい理由って…?

――どうして、金融機関主導の金融イノベーションが生まれにくいのでしょうか?

飯田:金融システムという領域の“堅さ”が、障害になっているのだと思います。銀行が提供する金融システムは、いわば社会のインフラです。常に生活者や企業を守らなければいけませんし、安心・安全に運営されていて当たり前。ATMが止まることのないように、決済サービスに間違いがないように、ある意味保守的に、とても手堅く作られています。法律による規制も年々厳しさを増しており、どんどん新しく面白いことが生まれにくい領域になってきているんですよね。

加えて、現在の日本は“お金に対する社会不安”が高まり続けている状況です。増税で負担を感じている人、高齢化社会で老後の蓄えに不安をもつ人、格差社会により低収入から脱することができない人…。多くの国民が経済的な心配を抱えており、1500兆円といわれている個人資産が、なかなか投資の方向へ向いてくれないのです。だからこそ余計に、定期預金や確実な融資といった守りのサービスが重視されてしまうのでしょう。

しかし私たちは、こうした状況だからこそチャンスがあると考えています。安心・安全だけに向いていた目線をちょっと変えるだけで、新しい価値が生まれるんじゃないか。本当はもっとチャレンジできることがあるんじゃないか。守りのシステムではなく攻めのサービスを作り出すことで、金融システムの世界にイノベーションの風を吹き込めると確信しています。

 

テクノロジー×マーケティングの発想で、生活者目線のサービスを創造する

――より良い金融サービスを生むためのポイントがあったら教えてください。

飯田:具体的なコツではなく恐縮ですが…。なによりもまず、我々のようなテクノロジーを持つ組織が、主体的に動くことが大切だと考えています。日銀短観によれば、金融機関が行う設備投資のうち、実に46%がIT関連の設備投資だといわれています。一般企業の場合は9%程度だといわれているので、いかに金融機関がテクノロジーに依存しているかが分かりますよね。インターネット関連の企業や、システムインテグレーター、ITベンチャーが、テクノロジーの力で金融システムを変革する。そういう志を持って、金融業界をより良くするための提案を行うことが欠かせません。

その際に必要なのがマーケティング力。利用者がなにを望んでいるか分析し、生活者の目線で企画開発を行うことが肝要です。先にも述べた通り、どうしても金融機関は、規制を意識して提供者の目線でサービスを行いがちです。ATMやインターネットバンキングの操作画面など、至るところに説明責任を果たすための説明書きを表示して、リスクを徹底的に回避しようとしてしまう。こういった産業でイノベーションを起こすには、自由に動ける外側の組織が、いかにユーザーの立場に立ったアイデアを持ち込めるかが勝負になると思います。

ISIDは、金融系のシステム開発で培ったテクノロジーと、電通グループのマーケティング力を併せ持つ、ちょっと特殊なシステムインテグレーターです。こうしたユニークなポジションを生かし、金融業界全体を活性化させるイノベーションを巻き起こせれば、こんなにうれしいことはありません。

(第2回に続く)