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金融ビジネスにイノベーションを!No.2

「IT企業が金融サービスを生む」リーマンショックが生んだイノベーション

2014/06/02

金融イノベーションは、リーマンショックがきっかけになって広がりを見せました。金融機関中心の金融サービスに、なぜインターネット系の企業が乗り込んできたのか。その経緯や、アメリカと日本の最新イノベーション事情について、前回に続きISIDの飯田哲夫さんにお聞きしました。

リーマンショックをきっかけに、一大イノベーションムーブメントがやってきた!

――海外の金融イノベーションについて教えてください。日本よりも進んでいるようなイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?

飯田:リーマンショックの前後で、ガラリと状況が変わりましたね。リーマンショックは、所得が高くない人に住宅ローンを貸し付ける「サブプライムローン」がきっかけで起こりました。ローンを返済しきれない人が続出し、銀行の財務状況が悪くなったら、今度はむりやり家を取り上げる“貸しはがし”を行い、生活者の足元を見るような対応を続けてきた。それでも結局、銀行は破綻してしまって、こうした一連の動きを見たアメリカ国民が「銀行は信用できない」と猛烈なバッシングを始めたのです。

そこで登場したのが新興企業。Googleのようなネット系の企業がインターネット決済の仕組みを開発したり、ベンチャー企業がお金の借り手と貸し手を結びつけるサービスを開発したり…。ものすごい数の“金融機関以外のIT企業”が、次々と新しい金融サービスを立ち上げました。

そうして見えてきたのが、「利用者視点の金融サービスって、まだまだいろんな工夫ができるんだな」ということでした。インターネットを使えば、銀行を挟まず個人間でお金の貸し借りができちゃうし、預けたお金の使われ方も追跡できます。もちろん、お金を貸す側は、より高い金利での利回りが得られますし、借りる側は、低い利子で融資してもらうことが可能です。

アメリカの動きを考察してみて、インターネットやモバイルの技術を活用すれば、いままでにはなかったような新しい金融サービスが組み上げられるということが分かってきました。こうした流れを日本にも取り入れて、金融業界の活性化を促したいと思い、国内で金融イノベーションの可能性を追求しようと決心したのです。

Facebookを利用して、預金の目的を宣言! 支援者を集める金融サービス

――海外ではどんな成功例があるのでしょうか? 何か面白い事例があったらお聞かせください。

飯田:たくさんあるんですが、なかでも「面白いな」と思ったのはFacebookを通じて預金商品の価値を上げた、とあるベンチャー企業の取り組みですね。

まず個人のお客さんに預金の目的を設定してもらい、その上で預金を開始してもらいます。次にFacebook上で、例えば「家具を買う」などと預金の目的を宣言してもらうんです。すると、その人を応援したいと思う友人・知人から寄付が入る。さらにベンチャー企業が、提携しているリテーラーに情報を公開します。そうすると今度はリテーラーが、割引クーポンを発券してくれる。「この人は家具を買いたいんだな」ということが明確に分かっているので、クーポンを発券することで確実な購買につなげられるんですよね。

金利自体は普通の定期預金と変わらないんですが、サービスを利用することで支援者が付き、リテーラーが割引をしてくれるシステムになっていて、結果的にはより高い金利で運用していたような効果が得られます。これは、ネット系のベンチャー企業が利用者目線で「外向きに情報発信をしよう」「リテーラーとパートナーシップを組んで、ものの値段を下げるアプローチをしてみよう」という発想を持ち込んだからこそ実現できたサービスです。金融機関からは生まれにくい、まったく新しい金融商品だと感じました。

 

国内でいまアツイのは、やっぱりクラウドファンディング!

――日本国内では、どのような動きが興っているのでしょうか? いまいちばん盛り上がっている金融サービスは?

飯田:盛り上がっているのはクラウドファンディングですね。いま、マイクロファイナンスといって、新興国の貧困層が経済的に自立できるよう、事業を開始するときの立ち上げ資金を援助する仕組みが流行っています。クラウドファンディングをやっている企業が日本国内の個人資金をとりまとめて、マイクロファイナンスへ投資するような流れができつつある。社会貢献のひとつの形としても注目されているんですよ。

こういう投資のおもしろさというのは、自分のお金がどう使われるかが見えるところにあると思います。「誰かを応援したい」「役に立ちたい」、そういう“思い”がお金と一緒に広がって、単なる利回り以上の喜びや幸福感を得ることができる。金融というのは、単なる手段から、その先にある目的の達成を支援するサービスへと変わりつつあるのかもしれませんね。

(第3回につづく)