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井口理氏インタビュー

「今こそ目指す広告とPRの融合」第1回

2014/05/19

今こそ目指す広告とPRの融合 電通パブリックリレーションズ 井口理氏

第1回

“戦略PR”という言葉が日本に登場して数年、コミュニケーション効果を底上げする策として、あらためて注目が集まっている。ホクト「菌活」や、熊本県 「くまモンのほっぺ紛失事件」などのPRを手がけた電通パブリックリレーションズ 井口理氏は、「今まさに戦略PRが実現する機運が高まっている」と語る。

 

ウェブ電通報で連載「新明解『戦略PR』」を始めて、半年以上がたちました。タイムリーな戦略PRの事例を紹介してきましたが、この2回ほどPRの基礎的な心構えやテクニックについて執筆したところ、アクセス数が事例に劣らず伸びるという体験をしました。“戦略PR”という言葉をきっかけに、これまでPRに関心の薄かった方々もPRに課題解決の糸口を求め始めていると実感しました。

いつも思うのは、広告やマーケティング業界では、常に新しい概念や手法を表す言葉が繰り返し提唱されるなぁ、ということ。5年ほど前から語られ始めた戦略PRも、そうしたバズワードの一つとして捉える向きもありますが、これは明確に違うと言いたいのです。本来PRは戦略に一番重きが置かれるもので、これまでのPR、すなわちパブリシティーと捉えられていた活動と差別化するためにあえて「戦略PR」という言葉が生まれたと考えた方がいいでしょう。

戦略PRとは、「パブリシティーを狙うだけではなく、広告やプロモーションと融合させてコミュニケーション全体を後押しする統合プラン」として私は説明していますが、最初はとてもあいまいな形で受け止められていました。例えば、伝えたい情報に関する興味を事前に高めておき、タイミングよく広告を打ってモノを売る、というステップが戦略PRのフレームだと曲解され、当時の事例は事前の空気づくりの話ばかりでした。結局、空気だけつくってもモノは売れず、慣れないことはやるもんじゃない、これは失敗だとすぐに手を引いてしまう企業が数多くありました。

でも、どこかで皆、広告だけではダメだ、PRとの融合はやはり大切だと感じ続けていたのだと思います。広告の祭典として始まったカンヌライオンズでもPRを広告やプロモーションと融合させ、コミュニケーション全体を設計するような素晴らしい事例が次々と紹介されるようになり、いつかこんな統合的なPRを試してみたいという期待感は、クリエーティブ担当者や、企業の宣伝部の方に根強く残っていたはずです。私もこの熱気を常に肌で感じていたので、電通流の戦略PRとして、コミュニケーション全体の融合に最大限に寄与するPRを研究し、提唱し続けてきました。

それが少しずつ実を結び始め、今まさに、日本で本来の戦略PRに取り組もうとする機運が高まっています。本腰を入れているところでは、戦略PRの実践を見据え、企業一体となって各部署が取り組めるように宣伝部と広報部の壁、あるいは事業部間の壁を取り払う組織再編にまで着手しています。そんな状況を見ると、ようやくスタート地点に立ったのだなと強く感じるのです。


第2回へ続く 〕