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セカイメガネNo.24

新字新語

2014/05/21

古来から今日まで、中国の人々は言語、文字の創造、改造を絶えず行ってきました。私はその事実にとても感服しています。

『史記・項羽本紀』の一節に「范増数目項王、挙所佩玉以示之者三、項王黙然不応」とあります。范増が項王に何度も目配せをし、身に着けていた玉を掲げ「劉邦を殺せ」と暗示しますが、項王は一向に応じません。この文で使われている「目」は本来名詞。けれども司馬遷はあえて動詞として使い、その場の雰囲気と人物に命を吹き込みます。2000年以上前の「鴻門の宴」の場に読者を連れていくのです。

英語を学ぶときも、中国人は自分たちのロジックに従って言葉を改造します。だから中国語の言語体系に即したChinglishが生まれるのです。“Long time no see.”( お久しぶり) や、“People mountain people sea.”( 人があふれ返っている)がその例です。中国風に味付けされた表現は中国以外の人々にも徐々に受け入れられるようになりました。

最先端のネット用語も次から次へと誕生しています。創造性あふれる言葉が星の数ほどあります。今、中国で最もはやっている一文字の漢字は「囧」です。字の形が困っている顔に見えませんか。「落ち込む」「悲しい」「しょうがない」の意味で使うのです。2008年ごろから、SNSなどで頻繁に登場するようになりました。もともとの意味は「明るい」なのですが、誰も気にせず別の意味で使っています。

ネット熟語も流行しています。「喜大普奔」「人艱不拆」「不明覚厲」などの言葉が一夜にしてネットを席巻しました。「喜大普奔」は、「喜 聞楽見」(大いに歓迎される)、「大 快人心」(快挙で皆が喜ぶ)、「普 天同慶」(世界の皆が祝う)、「奔 走相告」(事件に出合い、走って触れ回る)の各冒頭4文字を合体した造語。意味は単に「うれしい」なのです。

「人艱不拆」は、「人生そのものが苦しいのだから、つまらないコトを暴くのはやめよう」。ある歌詞の引用です。「不明覚厲」は、「何を言っているのか分からないが、大変素晴らしいと感じる」。こうした新語が怒濤のように押し寄せてきます。3時間ネットを見ていないと流行に遅れると信じたくなるほどです。

専門家たちは、こうした言葉は打ち上げ花火のように消えてしまうとささやきます。けれども、流行したからには文化と言っていい。存在意義があるのです。私は、こうした創造性、挑戦に大変感服しています。

(監修: 電通イージス・ネットワーク事業局)