スポリューションNo.7
スポーツ×ハンディキャッパー
2020年東京パラリンピックで世界を変える!(後編)
2014/06/04
スポーツコンテンツをメディア枠と捉えるだけではなく、ソリューションとしても捉えることで、新しいビジネスチャンスを生み出す ことにトライしているソリューションユニット「SPOLUTION(スポリューション)」チーム。そのチームメンバーたちが、それぞれの視点から、これか らのスポーツ関連のビジネスチャンスについて、リレーコラム形式でご紹介します。
「スポリューション」チームメンバーの後藤啓介です。
前回に引き続き、日本を代表する義足デザイナー・遠藤謙氏を迎えての対談です。今回は、いよいよ本題の2020年東京パラリンピックの話に入ります。2020年には、パラリンピックがオリンピックを超えるかも!?
後藤:では、スポーツ義足について。 2020年のパラリンピックの話をメーンに聞いていきたいのですが、まず、今のスポーツ義足の技術革新がどのように進んでいるか、教えてもらえますか。
遠藤:素材の進化が大きいです。カーボンファイバーやカーボン複合材が使われるようになりました。これらがバネとなるわけです。人間の走る動作は、足をバネのように使うんですね。理想は、スポーツ義足を着けることにより、人間の足より軽いバネで、人間の動作をより少ない力で再現させることです。トランポリンに乗ると高く跳べるじゃないですか。あれとまったく同じことです。
少し話が飛びますが、今のオリンピック100m世界記録は、ご存じウサイン・ボルト選手の9秒58。一方、パラリンピックの(義足の)世界記録は10秒57。約1秒の差があります。では、この10秒57はオリンピックではいつの世界記録だったかっていうと、なんと100年前なんです。つまり、人類は1秒間縮めることに100年間を費やしました。でも、パラリンピックの選手は、1秒間を縮めることを1年間でやってのけました。イノベーションという意味では、いま大きな革新が起こっていると言えます。
後藤:なるほど!この流れなら2020年、パラリンピック選手の記録がオリンピック選手を超えられるかもしれない、と。
遠藤:もちろんあると思いますし、僕はそういう義足を作ることを目標にやっています。
後藤:おー、すごい!では、2020年パラリンピック、そして、その先に目指していることを教えてもらえますか?
遠藤:まず問題意識として、研究者を見てみると、論文を出すとか、長期的な視点で研究している人が多い。もちろんそれ自体が悪いわけではないんですが、それが世の中にプロダクトアウトするというストラテジーをなかなか組めていないのは問題だと思うんですね。
僕の中では、それを打破するひとつのきっかけがパラリンピック。パラリンピックが最先端技術を作る場であり、それをみんなにお披露目する場となる。その先に、その技術を使って、途上国の安価な義足や、高齢者の歩行をサポートするもの、あるいはエンターテインメント性を持った健常者が使えるデバイスに落とし込んでいく流れをつくりたいと考えています。そう、F1を想像してもらうと分かりやすいかな。
パラリンピックで最先端技術が人間をどこまで速くできるかっていう挑戦をしながらも、どうやったらその技術でみんなに動く喜びを与えられるか、に挑戦したいと思っています。
あと一つ、昔から義足のデザインをやっていて感じるのは、障がい者という見方です。心のどこかでかわいそうだなと思ってしまう。僕も正直そういうことがあります。やっぱり、そこを変えたい。
両足義足のオスカー・ピストリウス選手がロンドンオリンピックに出場したとき、かっこいい!って思った人も多くいたと思うんです。2020年にはもっともっと多くのヒーローが出てきて、障がい者への見方というのを変えていきたい。パラリンピックだけの話じゃなくて、社会全体において障がい者に対する偏見をなくすきっかけにもしていきたいと思っています。
後藤:ありがとうございました。これからも遠藤さんの活動をサポートしていきたいと思っています。今後もよろしくお願いします。
遠藤:こちらこそ、よろしくお願いします。
★「スポリューション」チームとは?
スポーツコンテンツを、「メディア物件」として捉えるだけではなく、事業課題や、プロジェクト課題を解決するための「ソリューション」として捉え、企画する電通社内ユニットです。
チーム内には、スポーツプランニングの実績が豊富な、戦略プランナー、プロモーションプランナー、コピーライター、アートディレクター、テクノロジスト、コンサルタント、プロデューサーなど、多種多様な人材を揃えており、ソリューションディレクター制によって、「表現のアイデア」だけでなく、「解決策のアイデア」を、ワンストップでご提供いたします。