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顧客を動かすデジタル・マーケティングの実践No.7

「コンテンツマーケティングの進め方」前編

~マーケターが編集者のように考えるために必要なこと~

2014/08/19

世界で注目されているコンテンツマーケティング。企業自らがメディアとなりコンテンツを発信することでビジネスチャンスを拡大していく施策で、海外を中心にさまざまな企業が実践している。前編では、コンテンツマーケティングとは何か、どのような視点が必要なのか、そして編集者のように考えるとはどのようなことなのかを、書籍『コンテンツマーケティング27の極意』に沿って徳永が解説する。

マーケターは編集者になる心構えが必要

コンテンツマーケティングをネットで検索すると、英語で10億4000万件、日本語でも1200万件ヒットし、アマゾンでは3000冊を超える本が出版されています(2014年5月現在)。アメリカでは、「コンテンツ・マーケティング・インスティテュート」という団体も設立されており、代表であるジョー・ピュリッジ氏は、2001年ごろからこの考え方を提唱しています。このような社会的トレンドを踏まえ、われわれは「CONTENT MARKETING」という本を翻訳しました。作者のレベッカ・リーブ氏は、デジタルマーケティングやメディアの編集経験、検索エンジンマーケティングに関する知見も持っている方です。邦題は『コンテンツマーケティング27の極意』で2014年1月に刊行しました。「Think Like a Publisher(編集者のように考えよう)」という言葉をサブタイトルにしています。この本に沿って、コンテンツマーケティングとは何かについて紹介します。

ここでいうコンテンツは、ウェブキャンペーンやバイラル系の動画、ウェブ上の記事などだけではなく、白書や、投資家向けの動画、ウェブ上に設置したニュースルームやセミナーなども含まれます。コンテンツマーケティングは、適切で価値ある情報(=コンテンツ)をターゲットに提供することにより、企業の利益につなげていくことを目的とします。

原書「CONTENT MARKETING」のイントロダクションがとても象徴的で、書き出しは「Content-ment」という言葉です。Contentとは人を満足させる、という意味の動詞です。この言葉には、レベッカ氏が本を通して伝えたいことが込められています。それは、「顧客を満足させられるものこそがコンテンツ」「コンテンツマーケティングはカスタマーサービスと同義」という2点です。つまり大事なのは、顧客が求めているタイミングで顧客にとって価値ある適切なコンテンツや娯楽を届けることであり、テレビや新聞などのメディアを使わなくても、ウェブやソーシャルメディアを使って企業自身が提供できるものだということです。コンテンツマーケティングの目標は、注目を集めるため、クライシス対応のため、ブランドロイヤルティーを上げるためなど多種多様です。

そして、地方の小さな個人経営の会社からグローバルな大企業まで取り組むべきものであり、それぞれの組織やブランドの目的に合わせて、適切なコンテンツを考え組み立てていくことが必要となっています。

コンテンツマーケティングが注目される背景には、企業からのメッセージをいつ、どのタイミングで受け取るかを決めるのが、企業ではなく消費者になってしまったことが挙げられます。これまでは、製品やブランドの情報をどこに出せば消費者がどう動くか、企業がある程度予測してコントロールできましたが、今の消費者は、自分の都合のいいタイミングで興味のある情報にアクセスし、必要なときは検索で情報を探すのが普通です。企業は、彼らの「興味ある情報」の情報源になるか、検索でヒットしない限り自分たちの情報を届けることができず、ビジネスにつながらない状況です。もう一つの側面として、オウンドメディアやSNSの登場によって企業のメディアバイイングとコンテンツ制作のコストが下がって実施しやすくなったことがあります。また、システムやデータベースの視点からビジネスを考えた際も、顧客が行動や発言をしてくれない限り、ビジネスに必要な顧客インサイトを把握するためのデータは集まらないため、顧客との接点には彼らが何らかアクションしてくれるコンテンツが必要になってきます。

企業がメディアとして次々コンテンツを発信していくためには「編集者のように考えていく」ことが必要です。これからのマーケターは編集者になる心構えが求められるのです。「編集者のように考える」とは、具体的には、広告と同じように、読者を知り、テーマやメッセージを設定することや、編集カレンダーで運用を管理すること、占いや天気予報など毎日見たくなるコンテンツをつくること、インタビュー記事を駆使すること、ユーザーコメントに耳を傾けて、きちんと対応していくことなどがあります。過去に公開したコンテンツを進化させ、新たな視点で再活用するのも編集者のやり方です。

後編は8/26(火)に更新予定です。