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金融ビジネスにイノベーションを!No.6

セルフサービスの次の時代がきている
“How can I help you?”のウェブ接客

2014/08/04

欧米の金融機関で、ここ数年でデファクトスタンダードとして受け入れられているのが、「なにかお困りごとはありませんか?」と積極的に話しかけてくる、対話形式のウェブ接客です。日本の金融機関にも近々導入される予定で、ウェブサイトでのコミュニケーションが大きく変わる可能性があります。最新のウェブ接客ソリューションについて、電通国際情報サービス(ISID)の瀧下孝明さんに聞きました。

ネット上で迷っている生活者を見つけ、「お困りごとはありませんか?」と声をかける、画期的なウェブ接客

――瀧下さんは、日本ではまだ普及していない、新しい金融ソリューションの提案も行っているとのことですが、現在、どのようなソリューションを提供したいと考えていますか?

瀧下:ウェブ上で困っている人、迷っている人を後押しするような、ウェブ接客のソリューションを提供したいと考えています。導線設計やマーケティングをやっていて、改めて「インターネットってセルフサービス型だな」と思うことがよくあります。これまでのインタビューでもお話しした通り、金融機関はかつて店舗での対話をメーンに信頼関係をつくってきました。困っているお客さまを見つけて相談に乗ってあげたり、新たな情報を提供したり。そういう対話が、金融商品の販売につながり、生活者からの信頼を醸成していった。それならインターネットでも、セルフサービスではなく、“How can I help you?”のサービスをすればいいじゃないかと。

インターネット上でアクセス解析をしていると、すごい数の人が商品ページを見ているのに、申し込みページに遷移したところで、相当数が離脱していることが見て取れるんですよね。現状の金融機関のウェブサイトに「なんとなく」アクセスするという人はまずいませんから、多くの生活者が目的を持ってやってきて、そして、目的を達成することなくサイトを離れている、ということになります。これはアクセス解析に加え、生活者調査の結果からも顕著でした。

そこに“How can I help you?”のウェブ接客を取り入れたら、商品販売に結び付く確率や、コミュニケーションそのものが劇的に変わるんじゃないかと。もし、生活者が本当に困っているのなら、ウェブサイトが、かつての店舗のような豊かなチャネルとして機能するようになるのではないかと考えています。加えて、これまでのセルフサービス型のウェブサイトでは明らかにされなかった、「生活者が具体的に困っていること」も改めて知ることができます。

――具体的には、どういったサービスが展開されるのでしょうか?

瀧下:たとえば、商品のページを見て、申し込みのページに進んだ人が、いきなり全然関係ないページに移動しちゃったとしますよね。そういう人だとか、1つのページに2分以上滞在している人、特定のキーワードでやってきた人に対して、チャットのような会話形式で「なにかお困りじゃないですか?」とお声がけをするんです。そして、オペレーターが分からない事や悩みについて丁寧に対話をする。バーチャルエージェントのような自動応答プログラムではなくて、あくまでも生身の人間が対応するところがポイントですね。

実はこのシステム、すでに欧米ではデファクトスタンダードになっているんですよ。アメリカの名だたる銀行が導入しており、イギリスやオーストラリアの銀行でも導入が進んでいます。

金融マーケティングが起こすイノベーション

――日本でウェブ接客を導入し、成功している企業というのはあるのでしょうか?

瀧下:航空会社さんで導入されているケースがありますね。ただ、金融機関で本格的に導入されているところは、まだありません。まさにこれからという状況で、ちょうど今、われわれが日本に持ってきて展開しようとしているところです。

ここ1年ぐらいでLINEが急速に浸透し、日本でもネット上でのテキストコミュニケーションがすんなり受け入れられるようになってきました。タイミング的にも、日本のマーケットに入れ時なんじゃないかと。おそらくこれから、金融機関のネットコミュニケーションが2014年以降ドラスティックに変化すると思いますよ。

――それは楽しみですね! 一通り話を伺って、ISIDと瀧下さんが、とても幅広い取り組みをされていらっしゃることに驚きました。

瀧下:ISIDの金融リテール領域の取り組みは、まずシステムインテグレーターとして、インターネットバンキングやコールセンターのシステムを構築してきました。一方で、それだけを提案していても、金融機関の課題解決には必ずしも結びつかないという事実もあるんですよね。だから僕らのようにマーケティングだけをやる部署があって、クライアントの課題をしっかりと把握した上で、マーケティングとITを結びつけるという手法で課題解決にあたります。今後もISIDの技術力と金融リテール領域へのマーケティング力、そして電通グループの総合力を生かして、生活者と金融機関とのギャップを埋める金融マーケティングに踏み込んでいきたいと思っています。その結果、金融機関が抱えるさまざまな課題が解決し、日本で眠る膨大な預貯金が動きだして、やがて日本の金融業界全体が活性化すればいいなと思っています。