雑誌広告の効果を見える化!
「第1回M-VALUE」レポート
2014/07/16
日本雑誌協会(以下雑協)と日本雑誌広告協会(以下雑広)は、ビデオリサーチの協力のもと2013年10月、雑誌広告効果測定調査を実施しました。業界共通で利用できる雑誌広告の客観的な基準値を整備・蓄積するための調査の第1回で、調査名称は雑誌広告の真の価値を伝えたいとの思いを込め「M-VALUE(エム・バリュー)」としました。19社33誌627素材を対象とし、1誌あたり約150人のモニターを確保。業界全体のスタンダードな広告効果の測定調査としては初めての試みです。ここでは、結果概要と調査のポイントを紹介します。 |
■雑誌広告の注目率平均は、50.2%
今回調査対象となった627素材平均の広告注目率(読者のうち、広告を「詳しく読んだ+確かに見た」広告注目者の割合)は50.2%。雑誌広告は、平均すると読者のおよそ半数にしっかりと認知されています。その広告注目者のうち6割以上が広告商品・サービスに「興味・関心」を抱き、5割が「購入・利用意向」を示しています。
■広告を見ての心理変容・レスポンス
広告注目者が起こす具体的な気持ちの変化では、「もっと知りたい」という情報欲求を示す人が約25%、「商品が目につくようになる」人や「店頭へ見に行きたくなる」人がそれぞれ20%前後などとなっています。さらに、注目者の7%が「公式サイト検索」、約4%が「来店」や「購入の検討」、約9%が「まわりの人への口コミ」といった実際のアクションを起こしています。
■「純広告」と「記事広告・タイアップ広告」、何を伝えるのが得意?
広告種類別に広告を見ての感想を比較すると、「純広告」が他方を上回るのは、登場人物やキャッチの印象付け、高級感の訴求などのインパクト面です。一方、「記事広告・タイアップ広告(TU広)」が上回るのは、機能・性能理解や親しみ感の醸成など、商品・サービスと読者との距離感を示す項目で、記事体の表現が商品・サービスを身近に感じさせる効果を発揮していることが分かります。
■「特殊面(表まわり)」のいいところ
雑誌広告ではどの面に掲載するかという「出稿ポジション」も重要なポイントとなりますが、中でも表まわりは、その雑誌の“もうひとつの顔”的な存在であり、読者の嗜好性を示唆するポジションともいえるでしょう。その「表まわり純広告」の効果を全627素材平均と比較すると、「表2見開き」(表紙の裏)や「表4」(裏表紙)の注目率はいずれも全素材平均(50.2%)を10ポイント以上上回っています。一方、広告を見ての「購入・利用意向」は全素材平均(50.2%)と極端な差は見られません。特にこの2つのポジションは、多くの読者の目を集めて広告をしっかり見せるのに効果的といえそうです。例えば、「中面純広告4C1P」(一般ページのカラー広告)の注目率平均は44.9%ですが、同サイズの「表4」は、その約1.4倍の効果を示しています。なお、「表3」はいずれの指標も全素材平均をやや下回る結果となっています。
■ワーキンググループ発足から3年。
議論や研究を重ねて、業界初の画期的な調査を実施
雑誌はテレビやインターネットなどに比べて広告効果が数値化しにくいメディアといわれてきました。というのも、雑誌の種類は実にさまざまでターゲットも異なるため、広告効果をひとまとめにして測ることや雑誌間で比較することは容易ではないからです。その一方で広告主は、広告を出稿する時になぜその媒体を選ぶのか、という明確な判断基準を求めています。なぜなら広告はターゲットに共感してもらってこそ成り立つコミュニケーションであり、ターゲットの共感なくして広告効果は期待できないからです。
雑誌広告業界を見渡せば、広告出稿の際の指標となるデータが全くないわけではありません。例えば雑協は年4回、雑誌の印刷部数を公表し、「マガジンデータ」を発行しています。他にも、出版社5社による、ファッションやビューティー関連の女性誌10誌を対象にした広告効果測定プロジェクト「マガジェンヌ」の実績があり、ビデオリサーチの雑誌広告接触効果調査「MAGASCENE AD(マガシーン アド)」もあります。出版社も個別に自社の雑誌の広告効果を測定してきました。
しかし業界全体としてのスタンダードな広告効果の測定調査というものはこれまでなく、メディア環境や経済環境が変化していく中で、出版業界も新たな取り組みの必要性を感じていました。そして、日本アドバタイザーズ協会(以下アド協)から「雑誌広告業界全体としての広告効果の測定手法の確立を」という要請を受け、具体的な手法について検討を開始。2010年10月にアド協と雑協の広告第二小委員会の加盟出版社10社(オレンジページ、角川マガジンズ〈現KADOKAWA〉、講談社、光文社、集英社、主婦と生活社、主婦の友社、小学館、日経BP社、マガジンハウス)でワーキンググループを発足し、議論や研究を重ねました。
その結果、作業を進めるには、広告会社、調査会社がワーキンググループに参加するのが望ましいということになり、2011年9月に電通、博報堂DYメディアパートナーズ、アサツー ディ・ケイ、ビデオリサーチ各社へ参加を依頼、承諾され、さらに雑広が協力し、雑協と雑広が調査主体となることが決定。2011年11~12月に実験調査を行い、そこで浮き彫りになった問題点を一つ一つ検証し、調査方法などを改善した上で、2013年10月に第1回 雑誌広告効果測定調査「M-VALUE」を実施しました。
■業界共通で利用できる、客観的な基準値の整備、蓄積を目指して
「雑誌広告効果測定調査」という名の通り、この調査は雑誌における広告の接触率や注目率をはじめさまざまな観点から効果を測るものではありますが、それは単純に雑誌広告の効果が高いとか低いとかを示すことが狙いではありません。そもそもこれまで業界全体としての指標がなかったため、この調査はあくまでも「雑誌広告に関して、業界共通で利用できる客観的な基準値を整備、蓄積すること」を一番の目的としています。
長期的に見れば、蓄積されたデータを、広告を出稿するときのひとつの目安として広告主に活用してもらうことで、広告主と雑誌の距離を近づけることも大きな目的です。例えば、各広告主が独自に収集しているデータに、業界共通の客観的なデータが加わることで比較検証が可能になり、雑誌におけるより効果的なマーケティング活動が実現すれば、調査の意義も大きなものになるでしょう。業界としてもこの調査を雑誌広告の価値の向上と活性化につなげていきたいと考えています。
■精度の高い調査を行うため、調査手法に数々の工夫と配慮
調査に当たって特に重視したのは、「読者をきちんと集めること」「雑誌を閲読している状態をつくりながら調査すること」「あらゆる広告を調査すること」の3点です。
調査モニターに関しては、ビデオリサーチが対象誌の読者であることをしっかり確認した上で調査への参加を依頼。雑誌ごとにモニターの数がばらつかないようにすることはもちろん、各雑誌読者の性別・年齢構成も考えながら、一誌あたりほぼ150人のモニターを確保しました。
回答は、調査資料としてモニターに雑誌を郵送する方法を取りました。モニターは、一定期間、雑誌を閲読した後、パソコンから調査サイトにアクセスして質問に答える方式にしました。なお、回答の際には雑誌を手元に置いてもらい、広告がどの位置に出ていたか、自分はどの広告に目を通したかを再確認しながら調査サイトのアンケートに答えてもらうようにしたのも大きなポイントです。こうすることでモニターが最初に閲読したときの印象を思い出しやすくなり、より正確な回答が期待できる他、特殊面など広告ポジションの優位性もきちんと測れるようになりました。
また、調査対象となる広告が偏らないように配慮しました。各雑誌の純広告とタイアップ広告の割合や、広告の業種の割合をチェックしながら、掲載広告のうち調査対象のものができるだけ雑誌全体の広告構成の比率と近くなるように、素材をビデオリサーチが選定。例えば、掲載されている広告のうち化粧品が5割、食品が2割であれば、調査素材もできるだけその比率になるようにしています。さらに、特殊面の広告は必ず調査することにしました。
この他、雑誌広告はいわゆるリーチを広げる目的よりも、見たことで商品が欲しくなったり、店に足を運びたくなったり、心理変容やレスポンス行動を促す働きが大きいメディア特性であることも考慮して調査項目を立てています。接触率や注目率はもちろんのこと、広告を見たことで起こる気持ちの変化や実際の行動、口コミ行動などを調べる項目を充実させました。同時に、広告ビジュアルから受ける印象などクリエーティブ評価も質問項目にプラスして、さまざまな角度からデータをとることを心がけています。
また、さまざまな雑誌ジャンルについてのデータを整備するため、週刊誌、ビジネス・マネー誌、女性ヤング誌、生活実用情報誌、ビューティー・コスメ誌などを網羅できるよう出版社に参加を募りました。
これら調査フレームの構築の他に、懸案となっていた調査費用については、参加する出版社と広告会社、およびビデオリサーチが出資して行うことが決まり、調査結果についてはそのデータを必要とする広告主、広告会社に有料で提供して活用してもらう仕組みもまとまりました。
■調査データの質を向上させるには、多くの出版社と広告会社の参加が不可欠
1回目の調査を終えて、調査の方法や項目については枠組みがほぼ整いました。これから調査を重ねていくことで、各項目のデータ数値のガイドラインが見えてきて、個別の広告を判断する基準値が整備されていくと思われます。なおこの調査は、年1回ペースで継続する予定です。
今後検討すべき案件としては、調査時期を固定すると、季節的な面で広告の商品やサービスが固定されがちになるので、調査時期をどうするかについて考える必要があります。また、蓄積されたデータのより良い活用方法や、その成功事例を業界全体で共有していくことについても議論を重ねる余地があります。
中でも当面のいちばんの課題は、調査に参加する雑誌を増やすことです。今回は19社33誌を対象に調査しましたが、ジャンルによっては1誌しかないものもあり、ジャンルごとの特徴を見るには適当ではありません。いずれのジャンルもたくさんの雑誌が調査に参加してこそ有効な基準値が得られるので、データの精度や質を向上させるためは、多くの出版社と雑誌に参加していただく必要があります。また、調査の規模を拡大して業界全体でこの枠組みを広く活用してもらうという意味では、広告会社の協力も欠かせません。特に調査にかかるコストは、参加社が多いほど1社あたりの負担も軽くなり、調査に参加することは広告会社にとってもメリットのあることなので、出版社と広告会社には、この調査に対しての理解を深め、協力いただくことをお願いします。
この調査によって得られるデータが雑誌広告のスタンダードと認知されれば、広告主の皆さんも自信を持って広告出稿時の選択説明ができるようになります。広告の出稿に雑誌を今まで以上に活用していただくためにも、そして雑誌広告業界がこの新たな取り組みを通して発展していくためにも、多くの会社の参加を望みます。
第1回 雑誌広告効果測定調査「M-VALUE」概要〈調査方法〉 パソコンによるインターネット調査 〈調査エリア〉 全国主要7地区(16都道府県) 〈調査対象者〉 〈調査対象雑誌〉 〈調査広告素材数〉 1誌につき最大20素材 〈調査項目〉 〈実査機関〉 株式会社ビデオリサーチ |