人もペットもうれしい社会を。No.15
セッション#2-2
「ペットオーナーができること、これからすべきこと」
2014/12/17
前回に引き続き、ベネッセコーポレーションの『いぬのきもち』『ねこのきもち』編集長を担当した渡邊恵子さんと肥山栄孝さんをゲストに招き、“人のペットの共生”に向けた課題であるペットオーナーの「しつけ」意識についてThink Pet Projectメンバーの大崎孝太郎さんが話を聞きました。
(左より)渡邊恵子氏、大崎孝太郎氏、肥山栄孝氏 |
ほえることを“まずい”と思わないオーナー
大崎:“人とペットの共生”という観点で考えると、少しずつですがペット可のカフェやマンションなどが増えてきて、社会的な受け皿も広がっていると思います。しかし一方で、いまだに街中にはフンや尿の放置を注意する看板がありますし、ペット可の店で大声でほえるなどのトラブルがあって、ペットに対する悪いイメージが払拭されていないのも事実です。これは一部の方ではありますが、そういったことはいまだに起きています。今後、ペット産業が発展するためにはこういった課題にも応えていく必要がありますよね。
渡邊:多くのペットオーナーの意識が同じようにならないと難しいのかもしれません。たまに弊誌で犬とお出掛けできるスポットの特集を組んでいるのですが、掲載を断られてしまうスポットもあります。なぜかというと、全てのペットオーナーが周囲を考えられる人ではないことを経験で学んでいて、『いぬのきもち』でたくさんの人に知られることを警戒されるんです。受け皿が広がっているのは確かですが、マナーの問題がクリアされないとそのスピードはなかなか速まらないのではないでしょうか。
肥山:ほえグセやかみグセには理由があって、いろんなサインだったりします。その理由を知ることは愛犬のことを知るためにも大切なことなんですが、「無駄ぼえや、かんだりすること」を放っていて、サインを見逃したり、問題行動につながって他の人の迷惑になるかもしれないということを、ペットオーナー自身が認識できているかどうかが問題だと思っています。最近はドッグランのあるキャンプ場も増えていて、そこに訪れる多くの人たちはきちんとしつけが出できています。でもごくまれですが、夜中に犬がほえているのに全然気にしないペットオーナーもいます。しつけができていないことのまずさよりも、それが気にならないことが一番まずいと思うんです。
大崎:弊社の社員で犬が苦手な人がドイツへ出張に行ったとき、リードなしで散歩している犬に会ったそうですが、日本の犬と違って怖くなかったと言っていました。ドイツには犬の学校があって、1年間かけてしっかりとしつけを覚えさせるという話を聞きます。犬税もそうですが、ペットオーナーの意識を変えるにはインフラづくりも必要になってくるのではないでしょうか。
肥山:ドイツのように法律で変えていくのは、日本だと少し難しいかもしれません。ただ日本も10年前に比べたら、ペットオーナーのマナーは向上していますし、マナーに対する世の中の関心も高まっています。私たちの世代だと、子どもの頃に犬のフンを踏んだ経験のある人がけっこういますよね(笑)。でも今は、道端にフンが落ちていることはほとんどない。飼い主が責任を持って処理すべきだというのが、世の中の常識になっています。このように、今後も社会の変化に応じてペットオーナーのマナーももっと向上する可能性はあります。
事業として後押しできること
大崎:ペットオーナーのしつけやマナーに対する意識が向上すれば、社会の中でペットと過ごせる時間や場所が多くなるので、結果的に産業の発展にもつながりますよね。Design with Pet Projectでもこれからさまざまな提案していきたいと考えているのですが、民間ではどんなことができると思いますか?
渡邊:ペットに関する用品の充実もマナーやしつけの向上に貢献しています。先ほどのフンの話ですが、以前はティッシュやビニール袋を使っていましたが、今は簡単に処理できる用品が販売されています。賛否両論ありますが、ほえたりかんだりすることを防ぐ製品もあります。便利で簡単になればペットオーナーの負担も減って続けやすいので、新しい用品を開発することで解決するというのもひとつの方法ですね。
肥山:それから、ペットに関する知識や情報を発信し続けることが大切だと思います。ペットオーナーが動物の生態を理解したり、ほえる理由やかむ理由を知っておくことで、対処できるケースも多いんです。だからこそ、『いぬのきもち』『ねこのきもち』は創刊時からずっと生態やしつけの特集を組んでいますし、今後もそのような啓発活動を担う事業が必要とされるのではないでしょうか。
大崎:そうですね。ペットオーナーとペット、そして飼っていない人にも配慮した仕組みがしっかりと整っていれば、安心して飼える人たちがさらに増えますよね。
肥山:何よりも大切なのは、ペットを飼うと決めたときに、良いことだけでなく暮らしの中で起こり得る問題や、飼っていない人たちの気持ちをどれだけ想像できるかだと思うんです。最初のきっかけは一目ぼれでもよいのですが、責任を持って飼うという覚悟、そのために必要な知識を持つ姿勢を忘れてはいけません。マナーだけでなく殺処分の問題も、そういった覚悟や想像力の欠如から生じるのではないでしょうか。すでに飼っているペットオーナーだけでなく、これから飼う段階の人たちに向けても、事業としてしっかりと伝えていくべき部分は多々あると思います。そういった活動の積み重ねが、ペットオーナーとペットが幸せに暮らせる社会、飼っていない人も平穏に過ごせる社会につながるのではないでしょうか。
大崎:本当にそう思います。ペット産業の立場から後押しできることがたくさんあると思うので、今後も皆さんと一緒にあらゆる可能性を模索しながら、社会の変革に少しでも役立つプロジェクトにしていきたいと思います。