リアルタイム動態分析(ジオセンサー)
2014/09/16
リアルタイム動態分析(以後ジオセンサーとする)とは、どういった技術なのかご存じだろうか。
実はジオセンサーという1つの技術があるわけでなく、いくつかのセンシング技術の総称なのである。今後はさまざまなタイプのジオセンサーが出てくることが予想される。
「人」「時間」「空間」をリアルタイムに捕捉するテクノロジーがジオセンサー
ジオセンサーの技術の中で、最も知られていて重要なのがGPSである。
GPSという言葉は誰でも知っているが、何の略なのかは、あまり知られていない。これはGlobal Positioning Systemの略で、衛星測位システムを意味している。今では多くの携帯端末にGPS機能が付いており、携帯端末の位置がリアルタイムに分るようになっている。屋内で衛星の電波が届かない場合には、携帯端末が地上の基地局のアンテナと通信して最寄りの基地局から位置を割り出す仕組みになっている。
「人」「時間」「空間」、これらをリアルタイムに捕捉するテクノロジーをジオセンサーと定義しよう。文字通り、リアルタイムに動態を分析するということだが、「動態」とは人の場合や自動車などのモノの場合もある。また人もモノも、単体の場合があれば複数の場合もある。
サービスを提供する企業側の視点で考えると、対象が個別の顧客の場合と、複数の顧客の両方が考えられるということになる。
つまり、企業はジオセンサーによって「人」「時間」「空間」を詳細に捕捉しながら
①個別の顧客へのサービス提供(CRM)
②複数の顧客へのサービス提供、サービス開発(マーケティング)
が同時にできる可能性があるのだ。
公共機関がジオセンサーを構築し、企業はそのサービスを活用する
店舗を持つ企業は自らの顧客を店舗内で捕捉(顧客の持つスマートフォンアプリと、店舗に設置したiBeaconを使用)し、その情報をCRMやマーケティングに生かそうとし始めているが、店外の顧客の動きまでも捕捉する場合は、ジオセンサーが必要となる。
その場合、その企業が独自にジオセンサーの仕組みを構築するのはコスト的には割に合わないだろう。そこで、公的機関がジオセンサーの仕組みを構築し、企業はそのサービスの活用を通じ連携することが考えられる。例えば「災害用ジオセンサーシステム」はどうだろうか。地震や台風、洪水などの自然災害時に、個人の携帯端末に避難経路が表示されたり、事前登録しておいた家族の位置情報がリアルタイムで把握できたり、個人個人の動きだけでなく、交通の混雑具合や被害が出ている地域と安全な地域といった情報も伝えてくれるものだ。
また、公共のジオセンサーでなくとも、携帯電話の基地局データから人々の動きを捕捉し、マーケティングデータとして販売するビジネスは既に始まっている。このようなマーケティングデータ会社が、個人個人の情報を集合知として蓄積していくと、これまで知り得なかった知見が得られ有効なマーケティングデータとなるため、各企業用にカスタマイズ可能なAPIが増えていくだろう。
個人が自分の情報を企業に提供することで、有益なモノコトを手に入れる
一方、企業側の視点ではなく生活者側の視点で考えると、自分のためにジオセンサーを活用する事例は既に一般的になりつつある。ジョギングを楽しむ人が、スマートフォンを腕に着け、ジョギング用のデータ取得アプリによって自分の走ったコースや距離、その時のペース配分などを知ることができる。また別途心拍計を身に着け、その心拍計とアプリがBluetoothで連携されることでリアルタイムの心拍数まで把握でき、記録もできる。
このように、まず個人が自分の興味ある分野で使用することでジオセンサーに関するリテラシーが高まっていく。ジョギングのアプリで自分の健康管理をするだけでなく、他の可能性が派生してくると思われる。生活者はジオセンサーのようなテクノロジーによって貴重なライフログ(個人情報)を可視化できるようになったのだ。
となると、企業が個人情報を取りに行くよりも、個人が自分の情報を企業に提供することで、個人にとって有益なモノコトを手に入れるというコミュニケーションが成立するのではないだろうか。例えば、定期的にジョギングをして心拍数も正常だという人は、その情報を生命保険会社に提供することで、より安く保険料プランを提示されるかもしれない。
企業が生活者に向けて「広告」を打つことは無くならないだろうが、個人が企業に向けて情報提供をする「個告」コミュニケーションが発生する可能性がある。
このシリーズは「個人と企業をつなぐコミュニケーションテクノロジー」というタイトルだが、「個人が企業とつながるコミュニケーションテクノロジー」という時代にむかっているのかもしれない。