【続】ろーかる・ぐるぐるNo.42
プログラミングとデザイン、手料理
2014/10/30
長野県千曲市の「木の花屋(このはなや)」は信州の伝統的な漬物や佃煮を製造販売しているお店。もう少し寒くなると、自社農場の無農薬で育てた野沢菜を漬け込む作業で大忙しになるそうです。
霜に当たった野沢菜 |
ご縁があって専務の宮城さん、営業企画の中澤さんといろいろお話ししたのですが、とにかくこのお二人が熱い!「漬物文化には農産物や里山の生き物、そして人々とその生活を守る役割があると思うんです」「山間の耕作放棄地で地元の方々に伝統野菜なんかを育ててもらって、それを加工して食卓につなぎたい」「漬物はお料理の調味料にも使えるの。野菜はもちろん、発酵や熟成のうま味がたっぷりだから」などなど。
以前はいわゆる下請け業務も多かったのですが、理想を持った自社ブランド開発に、少しずつ着実にお客さまの支持が集まっているそうです。
木の花屋工場見学 |
ローカルで頑張っている皆さまのお話を伺うだけでなく、製造の現場まで拝見する機会はとても貴重です。北九州の「味の丸屋」は無添加・無着色の辛子明太子が名物。ともすると「最近そういう商品、多いですよね」なんて訳知り顔の感想を言ってしまいそうですが、工場で手順の一つ一つを見せていただくことで、どれだけの苦労と工夫を重ねているか如実に体験することができました。
味の丸屋工場見学 |
富山の生地蒲鉾では伝統的な細工蒲鉾のつくり方を見せていただいたり、焼津でまぐろ卸をしているマルイリフードサプライでは「マイナス60度の冷凍室」を体験したり。
生々しい現場を経験するたびに、「これほどプロフェッショナルな方々に対して、広告屋のぼくに何かできるのだろうか?」という不安が襲ってきます。この問いに対する基本的な答えは(この連載のメーンテーマでもある)「イノベーションを起こすチカラのある言葉を開発する技術」なのですが、最近、もうひとつの側面があるように感じています。
これが富山名物「細工蒲鉾」 |
半袖ですがホントにマイナス60度 |
堀江貴文さんは首都圏コンピュータ技術者 パートナーフォーラム 2014の特別講演で、プログラミング能力を持っているエンジニアはふつうの人が越えられない壁をすでに越えているのだから、どんどん面白いアプリ、サービスを世に出して、世界を変えてほしい、そしてエンジニアには、仕事のためにコーディングするのではなくイノベーションの種を見つけて、改善することを目指してほしい、そうでないとエンジニアをやってる意味なんかないという趣旨の発言をなさったそうです。
たしかに「プログラミング」によって、世の中の不便を解決することができます。そしてそこで特徴的なのは実際にプロトタイプをつくって、試行錯誤しながら精度を上げていく思考プロセスです。プログラミングは現実的に、身体的に思考するのに有効な技術です。
イノベーションを求めている企業の皆さまにぼくがご提供できるもうひとつの技術とは、このプログラミング同様「つくりながら考える」ための手立てです。
例えば新商品開発プロジェクトには必ずアートディレクターに参加してもらうのですが、彼らの「デザイン」力は、まさに形をつくりながら考えるプロフェッショナルな技術です。
そしてもうひとつ。とてつもなくアマチュアなのがぼくの「手料理」力。なにか食べるとレシピが想像でき、また実現したいイメージをレシピとして表現する能力です。もちろんぼくのレベルなんて下の下もいいところなのですが、それでも必要があれば図々しく具体的な「料理」の形でお話しします。時には自作のスイーツをパティシエに試食してもらうことすらあります。
プログラミング同様、デザインも手料理も「意図を形にする」技術です。そしてこれがあると机上の空論にはまることなく実感に基づいて議論することができます。
「食」に関する商品開発のお話があれば、これからも恥を忍んで、わが「手料理」力を発揮しようと思います。まったくもって、いい迷惑でしょうが!!
下手な「手料理」をする隙がなく旨い味の丸屋明太子 |
さて次回は学生時代初めてマーケティングを教わった田内幸一先生のお話をしようと思います。
どうぞ召し上がれ!