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プレミアム消費者“ワーママ”が市場を動かすNo.1

「育児」も「仕事」も諦めない!

プレミアム消費者“ワーママ”が市場を動かす

2014/11/28

特集「育児」も「仕事」も諦めない!プレミアム消費者“ワーママ”が市場を動かす

第1子出産の平均年齢が30.4歳と、30代の出生率は上昇中。そして小さい子どもを育てながら働くママ=“ワーママ”は30代では過半数に達しました。今後も確実に増え続けるワーママは、時間がない分、問題解決のためには惜しまずお金を使うプレミアムな消費者。ワーママに深い知見を持つ藤村美里氏を迎え、電通ママラボがフルタイムのワーママを中心に徹底解剖します。

左から、藤村美里氏、田中理恵氏

スマホとSNSはワーママの必需情報源

田中:日経DUALで「藤村美里の働くママ1000人インタビュー」を連載されていますが、テレビディレクターの藤村さんが、テレビではなく、あえてネットという媒体を使ってこの連載を始められたのはなぜでしょうか。

藤村:ワーママには視聴時間が限定されるテレビより、隙間時間にスマートフォン(スマホ)で見られるネットが向いています。でも文字と写真だけだときれいに収まり過ぎて、その人が“ものすごい早口”だったりとか“パワフルな感じ”などのワーママならではのリアルさが伝わりにくいんですね。その点、やはり映像の訴求力は大きいので、動画も意識的に使っています。

田中:なるほど。たしかにワーママのネット活用度は非常に高いですね。

藤村:専業ママと違い、ワーママには子育てに関する情報や悩みをママ友と共有する時間がなかなか取れません。けれどわが子と離れている時間が長い分、子育てに関する情報や知識を、専業ママ以上に渇望している気がします。だから通勤中にスマホで、子どもの寝かしつけと家事が終わった後、自宅のパソコンで、ガーッと情報収集などをする。

藤村美里氏
藤村美里氏

田中:藤村さんは働くママの異業種交流会「ワーキングママパーティー」も主宰されていますが、どんなワーママが来るのですか。

藤村:職種や子どもの年齢はさまざまですが、ほとんどが一人参加。ネット検索で私たちのSNSを探し当てて積極的に申し込んできます。

田中:知り合いがいないパーティーに子連れで来るって、すごい行動力ですね。

藤村:その後は参加者同士がフェイスブックなどのSNSでつながっています。私もそうですが、ワーママは、相談相手を求めているように感じます。子育てと仕事を両 立させようと闘っている中で、ふと落ちてしまう瞬間もある。切実に誰かに話を聞いてほしい。でも、会社の同僚には遠慮があるし、同じ保育園のママ同士とは本音で話しにくかったりする。その孤独を埋めてくれるのが、ほどほどの距離感のSNSで交流できるワーママ友達なのかもしれません。お互いの空き時間に共感し合えるちょっと遠い「同志」のような関係。

田中:SNSくらいの距離がちょうどいいんですね。気楽に愚痴も言えて、ワーママライフに役立つ情報も共有し合える。職場でも私生活でもなく、公私の間でママ同士がつながりたいニーズはありそうですね。

問題解決のためには、お金を惜しまない

田中:ワーママといっても、その働き方やライフスタイル、収入に幅がありますが、連載を拝見しても、タイプは千差万別ですね。

藤村:バリバリ働きたい管理職やキャリア志向タイプ、時短、フリーランス、自営…。また、子どもが一人か二人かでも働き方が変わってくるので、ワーママ像をひとくくりにするのは難しい。取材でもいろいろなタイプの方を取り上げて、バランスを取るように留意しています。

田中:それでも「ワーママだからこそ」の消費傾向はあるのでしょうか。

藤村:ワーキングママパーティーの参加者に仕事復帰の際に買ったものを聞くと、お掃除ロボットや食洗機、自動洗濯乾燥機など、やはり家事の時短に関するものが多かったです。忙しいから、少々高額でも役立つと判断すればぱっと決断して購入する。他には、子どもの教育、家事代行など。ファッション、あるいは語学など自分への投資も…。特徴的なのは、民間学童保育的なサービス。夕食や送迎付き、英語などの習い事が託児中に受けられるなど、ワーママのニーズに応えたものがここ数年で急増していて、そのあたりに最近、お金が落ちている感じがしています。

田中:確かに、夕食や送り迎え付きというスペックは、フルタイムで働くワーママならではの優先事項ですね。

藤村:子どもと一緒に過ごす時間が少ない分「子どものため」という大義名分に弱い。価値ある体験をさせてあげたい、喜ばせたい。そのためにはお金を惜しまない人は多いです。

田中:子ども孝行的なお金の使い方ですね。

ワーママが抱く潜在的な「罪悪感」

藤村:さらに、ワーママにはどうしてもぬぐいきれない罪悪感があるように感じています。自分が専業主婦の母親に育てられたようには、子どもにしてあげられない。家事や教育をお金で代替しているように感じることがある。どんなに自分が働いていることを肯定してもゼロにはならない罪悪感を、和らげてくれるものやサービスを求めているように思います。

田中:罪悪感を和らげるプラスアルファの理由や動機付けに、ビジネスチャンスがありそうですね。

田中理絵氏
田中理絵氏

藤村:例 えば最近「働きながらママになることの現状」を知りたい独身女性が増えているように感じていますが、ワーママ間で大学生がインターンとして共働き家庭で子どもの世話をするサービスが話題です。わが家でもお願いしていましたが、子どもと真剣に向き合ってくれる大学生を子どもが心待ちにしていること、私が大学生の就活相談を受けることで、罪悪感が軽減されました。多少なりとも社会貢献している気持ちになりますしね。

田中:自分の都合だけで子どもを預けるのではなく、次世代のワーママ育てというか、少し社会活動とリンクする感じがいいですね。

藤村:それにしても、家事代行やシッターサービスの利用をもっと肯定的に捉える認識が社会で広まれば、必要な人が後ろめたさを感じないでもっと気軽に利用できるのですが。

田中:本当にそうですね。本日の対談でSNSや社会活動など、公私の間、社会と自分の間をきっちり分けるのではなく、バランスをとって「つながっていたい」というママの本音が見えてきたように思います。

ママラボ(ロゴ)

「ママが笑えば、日本も笑う。ママと家族、ママと社会の間に有機的な接点を増やしたい」という考えのもと2008年に設立。ママと子どもの本心と真摯(しんし)に向き合い、リアルなインサイトで課題解決策を提案するワークタンクとして、さまざまな業種・業態におけるマーケティング戦略策定のコンサルティン グ・プランニングを実施。

対談を終えて「未来のワーママ」について

電通ママラボ 田中理絵
お互いにワーママ同士でもある藤村さんとの対談は、いろいろと話が盛り上がりました。対談の中ではご紹介しきれなかった、これからの時代を感じさせる発見を3点お伝えいたします。

●ワーママのロールモデルは30代ではなく、20代に求められている。

ワーママは収入も職業もさまざま。さらにワーママの中でも、バリキャリとゆるキャリがいて、どんどん多様化が進む。そんな中、丸ごとまねる「ロールモデル」 は、もはや求められていないのでは?そうつぶやいたところ、藤村さんから「確かに30代には必要ないかもしれませんが、20代の学生は知りたがっています」というコメントを頂き、なるほどと思いました。まさに今を闘っているワーママ本人のためにではなく、「ワーママ予備軍」にそのニーズはある。こ れからの人生設計、何を優先して、何をあきらめ、どうバランスをとるか。将来を考える学生をターゲットにしたワーママのロールモデルがわかるイベントや雑誌の特集も響きそうです。

●ワーママをきっかけに専業主婦も助かるサービスが出てくる。

平均的にはワーママが教育費を掛けているけれど、実は、教育にお金を掛けるのは職業というより意識の問題。教育の周辺、生活面も含めて付加価値のある「教育サービス」が求められてきます。また、日々子どもと向き合い続ける専業主婦にとっても、保育を含めたサービスを使うことが当たり前の時代になると、普段の自分のやり方との違いを保育のプロに学んでみたり、子どもにとっても新しい刺激になったりと、育児に少し行き詰まったときにも頼りになりそうです。家事・育児のどの部分を他者に任せたいかは人それぞれですが、ワーママの増加をきっかけに、ママの負担がパパや祖父母にスライドするだけでなく、社会インフラ、サービスインフラ、意識の変化で、みんなが助け合うのが当たり前、シャドーワークとされてきた家事・育児もプロの領域があり、メソッドを学び合う、という価値観に変わっていきそうです。

●社会貢献とサービスの間に、ビジネスチャンス。

「サービスを利用する」お客さまの感覚だと、いかにプロの品質のよいサービスをコスパよく使うかということになりますが、社会の助け合いの仕組みに参加する感覚 だとお金や効率ではない、心の満足が求められてきます。品質はそこそこでも、その仕組を使うことで、自分だけでなく、他の誰かも助かりそう。お金を払う価値を感じる、そんな画一的ではない、かつてのご近所コミュニティーに近いマッチングサービス。それは、皆が使う大きなサービスにはならないかもしれず、少数の人向けの気の利いたサービスがたくさんできるのかもしれません。その小規模で成立するスモールビジネスの束が、多様なワーママを支えていく。仕事をする自分だけでなく、「ママの自分」として社会とつながりたい。その心をくすぐる動きが、SNSのようなコミュニケーションだけでなく、マッチングサービスなどの形でも動き始めています。


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