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広報パーソン必見!上場企業479社の広報力No.15

広報力向上と収益増の相関関係とは

2014/12/22

■ 広報力の見える化に貢献
 「広報オクトパスモデル」が「PRアワード」の部門最優秀賞に

先日、日本パブリックリレーションズ協会が主催する2014年度「PRアワードグランプリ」で、これまで当企業広報戦略研究所が連載してきた「広報オクトパスモデル」がイノベーション/スキル部門で最優秀賞に輝いた。

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電通PRの「広報オクトパスモデル」が部門最優秀賞~PRアワードグランプリ
[2014.12.12]

 

表彰式にて。同研究所上席研究員で初回および今回コラムの著者・北見(左)と 副所長で過去コラム#02、05、13担当の阪井完二
表彰式にて。同研究所上席研究員で初回および今回コラムの著者・北見(左)と 副所長で過去コラム#020513担当の阪井完二

 
まず、この受賞は、調査にご協力いただいた企業の皆様のおかげであり、回答企業各位にこの場を借りて感謝申し上げたい。また、これまで連載してきた広報力評価モデル「広報オクトパスモデル」がこうして、広報業界のイノベーション/スキルとして認められたことを大変うれしく思う。把握がしにくく、比較が難しい企業の広報力を、「8つの広報力」に分解し、「見える化」することで、日頃悩まれている広報部門の皆様のお役に立つことができれば大変ありがたい。

最終審査会の講評では、審査員から「今後も大変期待している」「発展を期待」というお言葉を多数いただいた。この「広報オクトパスモデル」には、どのような可能性が秘められているのか、連載の最後として述べてみたい。

■ 上場企業データであるからこそ公開データとの分析が可能に

広報オクトパスモデルの開発にあたっては、「第1回 企業の広報活動に関する調査」として、日本の上場企業(東証1部・2部、マザーズ、ジャスダック、札証、福証など国内上場企業。広告・PR業は除く)3503社を対象に、郵送法および訪問留置法で調査し、479社 (回収率13.7%)から回答を得た。これまでの連載は、この479社の調査データに基づいて、上場企業の広報力の実態に迫ったものである。

これらのデータを「8つの広報力」に分類し、当研究所が独自に開発した「広報活動オクトパスモデル」の指標とし分析を行うことで、上場企業の広報力を「見える化」することができた。

調査対象企業が上場企業であるということは、情報公開されている財務パフォーマンスデータや、イメージ調査など様々な外部調査データとの統計的な分析が可能になるということである。これが「広報オクトパスモデル」の更なるデータ活用の可能性である。

「広報力スコア」と「財務データ」の相関関係を分析

(この内容は、2014年10月に行われた日本広報学会第20回研究発表全国大会で発表したものである。)
 

「広報オクトパスモデル」を更に外部データを用いて分析することで、上場企業の広報活動を再評価することができることから、当研究所では、広報力スコアと財務データとの相関分析を行った。財務データの他にも、新聞記事やテレビ番組での露出、日経企業イメージ調査などとの項目について分析を行ったが、本稿では財務データ分析の一部をご紹介したい。

これまで一部の研究者が、広報と財務データの関係分析を試みているが、ここまでの大規模調査かつ体系立てられたものは他には存在しない。

分析に使用した財務データは下の通りである。

<財務データ>
最も広報力が高かった「Sランク企業(73社)」を対象に「日経NEEDS-FinacialQUEST2.0」に収載されている2013年度の財務データから「利払後事業利益増加率(前年同期比、5年間平均※)」「経常増益率(前年同期比、5年間平均※) 」を用いた。
※5年間平均=2013年度から過去5年間の平均増加率
なお、データが未収載の企業は、欠損値とした。
 
 

相関分析の結果は、下記の通りである。

表1 財務データと広報力スコアとの相関関係

■ 広報力向上は、中長期的な利益増加と相関

黄色いハッチングの部分に注目していただきたい。統計的に有意な相関関係が示されたデータである。事業利益増加率、経常利益増加率ともに、前年同期比との相関ではなく、5年間平均の増加率との間で、有意な相関関係を示している。

これは何を意味するのか?
「広報は漢方薬」という表現を耳にしたことがあるが、5年間平均との相関関係が示しているように、広報力が向上すると、中長期的な利益増加に貢献するということが示唆されたのである。

このような財務データとの関係は、なかなか示すことができなかったのが広報部門の泣き所であった。経営者に広報部門の意義を財務の視点から示すことができなかったのである。経営者に対して広報活動がどのように利益に貢献しているのかを示すことができれば、広報に投資する意味が見えてくる。

加えて、各広報力との相関を見ると、「情報分析力」「戦略構築力」と利益増加率との相関が高いことが示されている。広報というと情報発信ばかりに注力しがちであるが、情報発信ばかりではなく、収集した情報を分析し、戦略性を持って、PRメッセージやストーリーを構築していくことが利益増加に貢献すると示唆された。こうした広報活動のプロセスと利益の関係も明らかにすることが可能となった。

■ 広報業界にますます意義あるデータを

このように、「広報オクトパスモデル」の広報力スコアデータを用いて、様々な外部データとの関係を分析することで、広報活動に対する意義づけを再構築することが可能となる。近年、情報流通構造が変化し、企業のコミュニケーション活動において、広報の重要性が増している。そのことを肌感覚だけではなく、データとしてのファクトを示したい。「広報オクトパスモデル」がその一助になれば幸いである。

課題もまだまだたくさんある。例えば、今回、提示した分析に使用したデータも、時間、労力の制約がありSクラスの企業(73社)だけを対象としたデータである。全数(479社)で分析を行えば、違った結果になるかもしれない。

企業広報戦略研究所では、課題を一つずつクリアにして、広報業界に貢献できるように、これからも様々な調査・分析活動を行って行く予定である。面白い分析結果が出た際には、また報告させていただきたい。


企業広報戦略研究所(C.S.I.)

企業広報戦略研究所について
企業広報戦略研究所(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称CSI)とは、企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制等について調査・分析・研究を行う電通パブリックリレーションズ内の研究組織です。