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広報パーソン必見!上場企業479社の広報力No.14

「8つの広報力」のバランスを読み解く

2014/12/08

企業広報戦略研究所は、日本の上場企業479社から回答を得た「第1回 企業の広報活動に関する調査」の結果を元に、企業の広報力を「情報収集力」「情報分析力」「戦略構築力」「情報創造力」「情報発信力」「関係構築力」「危機管理力」「広報組織力」の8つに分類し、「広報活動オクトパスモデル分析」を行った。これまでの連載で、この8つの力それぞれについて説明をしてきたが、今回はその8つの指標のバランスについて考えたい。

8つの広報力

「8つの広報力」

■ 日本企業の広報は情報の発信・収集に注力

もちろん8つに分類された広報活動がまんべんなく実行され、オクトパスモデルにおいて大きな円を描くことが望ましいのは自明である。しかし全体平均(図1)を見れば分かる通り、やはり多くの企業が「情報発信力」次いで「情報収集力」により力を入れていることが分かる。これはパブリックリレーションズのことを「広報」(パブリックインフォメーション)と呼ぶ日本企業の広報部門の実態であり、まずは情報発信、リリースを作り発送する、それをウェブサイトに掲載することが広報部門の第一義であるのだろう。したがって、多くの企業のオクトパスモデルは全体に丸いが、やや上下に尖った形をしている。

図1:広報活動オクトパスモデル分析_※総合ポイントの高い順にS,A,B,Cとランク分け

■ 販売促進中心の「エイト」型広報

しかしこれとは別に、いくつかの特徴的な形をしたモデルも散見された。これらの分類とその発生の背景を推察してみよう。

全体に比べて「戦略構築力」と「危機管理力」の数値が低い集団がある。私たちはこれらのグループを「エイト」と名付けた(図2)。文字通り8の字に似ているからである。「戦略構築力」は経営戦略と広報戦略の整合性に注目したものであり、「危機管理力」は企業の危機管理活動への広報部門の関与度合いに注目している。

したがってこの2つの力が弱いということは、財務・経営計画部門や法務・総務部門との連携が弱い、逆に言うと広告宣伝や事業部門との連携が強いマーケティング中心の広報活動を行っている販促型の広報部門であることが推察される。

図2:オクトパスモデル <エイトの例>

■ 経営企画中心の「クロス」型広報

これとは逆に「戦略構築力」と「危機管理力」の数値が高い集団がある。「情報発信力」「情報収集力」と合わせて4つの指標がとがっている。私たちはこれらのグループを「クロス」と呼ぶ(図3)。「エイト」とは逆に、経営計画や危機管理に注力し、事業の現場からは比較的遠い経企型の広報部門といえる。もちろん「クロス」と「エイト」どちらが良いというわけではなく、業種やその企業の特性に合わせた広報部門の位置づけがその形ならしめているのであろう。

図3:オクトパスモデル <クロスの例>

■ 8つの広報力のバランスは売上高と相関あり

ただ広報力の総合ポイントは、企業規模(売上高)と密接な相関のあることが判明している。企業が発展し大きくなっていけば、おのずと広報部門の活動領域も増え、8つの分野に満遍なくポイントするようになる。「エイト」や「クロス」はその発展段階における特徴的な姿といえるのではないだろうか。ほかにも「ピン」「パックマン」「ダイヤモンド」「レフトイヤー」「ライトイヤー」などさまざまな形態を発見したが、それらの紹介は別の機会に譲ることとしたい。


企業広報戦略研究所(C.S.I.)

企業広報戦略研究所について
企業広報戦略研究所(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称CSI)とは、企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制等について調査・分析・研究を行う電通パブリックリレーションズ内の研究組織です。