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書籍『電通デザイントークVol.2』 齋藤精一×中村勇吾×飯田昭雄「つくる機会をつくる」

Dentsu Design Talk №48

  • 齋藤 精一
  • 中村 勇吾
  • 飯田 昭雄

2015/02/13

書籍『電通デザイントークVol.2』

齋藤精一×中村勇吾×飯田昭雄「つくる機会をつくる」

書籍『電通デザイントークVol.2』が2014年12月19日から好評発売中です。
今回はその中のSession3から、アート、コマーシャルの領域で立体、インタラクティブの作品を多数作り続けているライゾマティクス代表取締役の齋藤精一氏と、数多くのウェブサイトや映像のアートディレクション、デザイン、プログラミングの分野で活躍されている中村勇吾氏、そして広告から社会貢献活動まで横断的に関わるアートバイヤー、電通レイザーフィッシュの飯田昭雄氏が“建築的思考”について語り合ったその中身を少しご紹介いたします。

企画プロデュース:電通イベント&スペース・デザイン局 金原亜紀

ミクロとマクロの両方の視点を持つこと

飯田:今の仕事で、建築で学んだことを一番生かせているのはどういうところですか? 僕の場合は忍耐です。編集も建築と同じで作業は地味なんです。僕がやり始めた90年代前半はアナログとデジタルが入れ替わる時期くらいで、原稿用紙に原稿書いて、レイアウトは台紙作って切り貼りしたりしていて、すごく地味な作業。今やっていることもアウトプットは華々しいけど、その裏側にある汗とか忍耐とかが自分にとっては大事で、結局は根気と人との関係が全て。アートバイヤーは人とどれだけ広く深く関わって、どういう器を作って、どうやってそこに人を集めるかが勝負だから。

中村:僕はやっぱりモノの見方ですかね。構造の仕事をしていたときは、完成形のひとつを結果として見るんじゃなくて、可能性の幅として見るんです。例えば、橋を造るときに強風が吹いたらこうなる、10トントラックが全部並んだらこうなる、地震が来たらこうなる、といろんな確率的な挙動をするなかで、ある一定の安全圏内に収まるようにモノを作るんですけど、そういう思考は今もずっとあります。ウェブメディアとしてこういう使われ方、あんな使われ方、といろんな幅を考えていくなかで、その様々なケースにおいて概ね良いと捉えられる確率をできるだけ高めていく、というように、ひとつの結果として「良い」ではなく「良いの確率」を上げていく思考は染み付いています。

齋藤:手法的に考えるとミクロとマクロの視点ですね。 例えばエレベーター室をちょっと動かすと、ミクロで見ていると鉄骨自体が動くだけなんだけど、マクロで見るとそれによってファサードのデザインに影響してちょっと変わるんですよ。今やっている仕事でも、「この人のモチベーションが下がったら完成形でここまで変わってしまう」とか、超ディテールのことを個々に話しつつ、マクロに引いた目線で全体を考えている。建築でいったらドア1個のディテールから都市レベルがどう変わるかというスケールアウトの方法。僕が 建築事務所にいるときにすごく優秀なのはミクロとマクロが両方見られる人で、両方の目線を持ったままプロジェクトを進められる。24個のドアのディテール をこう変えると全部の金額がこれだけ下がるからシングルのガラスがダブルになるとか。ここまで考えるのかと。結構、建築の人はそういうのが得意じゃないで すか?

中村:あと、すごく長く時間かけたものに価値があるとか。一瞬で作ったものに価値がないとは言わないけど、やっぱり一つのものにつぎ込むいろんなものが、建築に比べると今やってる仕事は軽いな、というコンプレックスがあります。

飯田:でも逆に建築家の人がこっち見たらいいなと思うかもしれないけどね。ある意味僕らは自由にやれていて、建築家とも仕事ができるし、都市的なことにも関われているし。逆に建築家の人を見ていると業界としてしがらみとか卒業大学がどうだとか乗り越えられない壁があるじゃないですか。建築は建築で、そういう自由度の低さでは大変なところもある。

職業にとらわれない建築的思考

齋藤:この前、建築系の人たちと話をしているときに思ったんですけど、建築の人って結構物事をネガティブな視点から見るじゃないですか。マイナスの思考からプラスに持っていくというか。昔、商業施設とか作るときに僕が大きなミラーボールをつけようとすると、「下が公道です」と。じゃあ行政の担当のところに行きましょうと言うと、「そんなの無理です」と。建築のチームは「無理なんじゃないか」から「んー、ギリギリできますかね」の閾値を取る。僕なんかは「まだイケるでしょ!」というアホのプラス思考だから。建築の人たちは一番最初に形を決めるときは楽観的に組んでいくんだけど、計画が始まったり見積もりを取り始めると一気に現実に戻るじゃないですか。「ここは無理です」とか。でも僕の仕事は最後まで楽観視でいく。そもそも社会に与える影響とか、安全性の基準レベルとかが違うけど、そこの思考はちょっと違うなと思いました。

飯田:個人的には今、建築は構造物を建てるだけが建築じゃないなと思っていて、建築的な考え方を街づくりに用いていたり、もっと本来の昔あった建築の思想に立ち返っている気がします。コミュニティを作るとか、人と人のつながりを作ることで街が次のステージに上がるとか。そういう意味においては先祖返りじゃないですけど、帰っていると思います。
個人的にも大学で建築科を卒業して、編集という業種を経験して、すごく大きなサイクルが一周した。そこへ立ち返ったときに、自分の学生時代は六ケ所村に核燃料の再処理施設を作ることで揉めていた時代で、実は僕の父親も建築をやっているのでそのプロジェクトに関わっていました。自分はガキだったから「本当にいいのか」と親子喧嘩もしたんですが、その影響で実は僕の卒業制作は六ケ所村に循環式の風力発電と水力発電を利用したプラントを作るというものだったんです。3.11 で福島がああいう状況になって、改めてみんなでエネルギーのことを考えて、宮城県の人とか石巻の農家の人たちと、放射性物質を発酵食品を使って体内から排出できるということを研究しています。そういうのが今自分の中で巡ってきていて、今や現在の職種とか関係ない、自分が持っている引き出しは広告だろうが街作りだろうが建築だろうが、何でも使えるものは使う! と感じている。それが建築的思考なのかなと思ってます。

<了>

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