外からのコードを モード化する際に大切なこと

「新・日本力」の鍛え方 №4

  • 松岡 正剛
  • 浜野 潤
  • 中尾 潤

2015/01/23

外からのコードを
モード化する際に大切なこと

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催という追い風も受けて、今、日本の底力が問われようとしている。日本ならではの強みをどう生かし、日本の活力をどう取り戻していけばいいのか。古今東西の歴史と文化に精通し、日本文化研究の第一人者でもある編集工学研究所所長の松岡正剛氏と、元内閣府事務次官で現電通総研上席フェローの浜野潤氏が、今この時代に再認識すべき「新・日本力」の在り方について議論した。司会は、電通総研所長の中尾潤氏。4回にわたってお送りします。

 
浜野潤氏(電通総研上席フェロー)/松岡正剛氏(編集工学研究所所長)

 

特別なコードに、グローバルのフィルターをかけてはいけない

中尾:松岡先生は以前から、日本人は外から持ってきたコード(記号、慣例)をモード(様式)に転換することが得意で、それは単なる加工技術ではなく編集力だとおっしゃっています。その編集力は、今も日本人は持ち続けているのでしょうか。あるいは、何らかの制約的な要因で衰えているのでしょうか。

松岡:大事なところです。結論から言えば、衰えていないと思います。例えば、古代日本に漢字というコードが中国からやって来たときは、それを使いこなせるプロをつくったわけですね。やがて漢詩を読める人も多く出てきて、菅原道真のように自分で漢詩をつくる人も登場する。だけど、日本のコモンランゲージの方は、中国語化はしなかった。そうして、和語に当てはめて万葉仮名をつくった。また漢字から平仮名やカタカナをつくり、漢字仮名交じりという独特のモードにしました。こういう能力自体は、現代の日本人にもまだ残っていると思います。ただし今は、海外から入ってきたコードがなかなか日本のモードになりにくい。なぜかというと、それぞれ特別のものであったはずのコードを、自分たちでグローバルコードに変換してしまっているからです。フィンランドから仕入れても、ポーランドやミャンマーから仕入れても、すべてグローバルのフィルターをかけてしまうから、たとえ編集力を発揮したとしても、世界のどこにでもあるようなモードになってしまうのです。やはり、特別なコードはまず特別なまま取り入れる受容力が大切です。例えば技術的なアルゴリズムでも、こんなアルゴリズムは日本のコンピューターでは使えないと頭から決めつけるのではなく、一度試してみればいいのです。それこそが、日本人が得意とするリバースエンジニアリングです。そうすると、まったく予期しなかったモード化ができるかもしれない。今の日本はあまりにも、受け入れるコードをフラットにし過ぎです。

松岡正剛氏

中尾:コードの仕入れ方に問題があるというわけですね。それと、モード化するときの知恵というか、「間」の取り方にも何らかの配慮が必要でしょうか。

松岡:日本人は複合化が得意です。これは、ハイブリッドと呼んでもいいし、もう少し広く捉えれば、アソシエーションともいえる。アソシエーションは、「連想」という意味と「組み合わせる」という意味を持っています。あるいは、「アソシエートする」といえば、「仲間をつくる」という意味になる。組織のマネジメントの観点から言えば、社内の担当者にモード化をさせるときには、チームのつくり方や組み合わせ、連想力の自由度を認めてあげないといけません、つまり、チームの複合力が勝負なんです。アイデアを組み合わせる能力が発揮できて、アソシエートもできる、両方の環境を整えてあげることが大切なのです。後は、思い切って予算を与えること。しかも、半期とか単年度の予算ではなく、複数年度にわたるような中期的な予算措置も必要でしょう。

熱いものがこみ上げる日本をつくっていくために

中尾:それでは、まとめとして、お二人に最後に一言ずつ頂けたらと思います。

浜野:非常に勉強になりました。やはり知的な梁山泊というのか、ある種の知的集団が「新・日本力」を創出する上で、非常に大きな鍵を握っていることが先生の話でよく分かりました。電通総研もその知的集団になることを目指して、日本再生のための起爆剤になっていきたいと思います。先生にもこれからもぜひ、いろんなご助言をいただければと思います。

浜野潤氏

松岡:私も、「日本のラボ」といえるようなシンクタンクが生まれないと日本はだめだなと、ずっと思っていました。高度成長とか、大きな仕組みづくりが主軸だった時代はすでに終わった。これからは、ソフトの力、発想力、連想力といったものを実験装置にする仕組みづくりが不可欠です。なかんずく、電通総研さんには新・日本力創出のためのモード化、編集化、換骨奪胎化というものにぜひ力を入れていただきたい。脱藩力を持っているような人は各業界に、そして地方にもいるはずです。みな実業を持っているでしょうが、頭の中は自由に移転可能です。そういう人たちとの交流の仕組みもつくってほしいですね。それはクラブとまでいかなくても、サロンのようなものでもいいと思います。先ほど浜野さんがおっしゃったように、文字通り、知的な梁山泊ですね。胸が締めつけられるような日本というか、熱いものがこみ上げる日本というのを、何とか引き出さないとだめだと思います。ぜひ期待しています。

中尾:新・日本力のためには、脱藩力を持った人の糾合、それから、出島のような場をつくること、そして、それを機能させるための時間軸も設ける。それが、実験場として成功するモデルだということが私もよく分かりました。本日はどうもありがとうございました。

[完]

浜野潤氏(電通総研上席フェロー)/松岡正剛氏(編集工学研究所所長)/中尾潤(電通総研 所長)
左から浜野潤氏、松岡正剛氏、中尾潤氏