loading...

電通報ビジネスにもっとアイデアを。

【続】ろーかる・ぐるぐるNo.196

「ぐるぐる思考」の限界

2025/03/06

続ろーかるぐるぐる#196_ぐるぐる思考図

今からもう、14年前。

「アイデアのつくり方」で世界的に知られた「ワラスの四段階説」という発想法を母として、そして野中郁次郎先生の組織による知識創造モデル「SECI」を父として、広告会社に伝わってきたクリエイター個人による思考方法をまとめたのが「ぐるぐる思考」です。

それは、思考の材料を集める「感じるモード」
ありとあらゆる組み合わせを考える「散らかすモード」
そこに新しい意味を見いだす「発見!モード」
それをもとに具体策をつくっていく「磨くモード」

の四つから構成され、ぐるぐるぐるぐる、とスパイラル状に繰り返すことで「発想体質」を身につけられる、というモデルです。

続ろーかるぐるぐる#196_書影

イノベーションを起こしたい、組織メンバー「個人」が取り組むべき思考ステップを整理したという点では、今でも意義のあるモデルだと信じています。一方で当時、これをご覧になった野中先生が「個人の力が強い電通だからできたモデルなのかもしれませんね」とおっしゃった真意、言い換えると、この「ぐるぐる思考の限界」が、ようやく最近少しわかった気がします。

それは「対話」の重要性です。

正直に申し上げて「ぐるぐる思考」をまとめた頃、ボクは「大勢でやる」クリエイティブ作業が苦手でした。みんなで集まってブレストをやってもなかなかシャープな着想には行き着かないし、それなら自分一人で徹底的に考える方がはるかにマシだと思っていました。個人の思考プロセスこそが一番大切なのだと信じていました。

しかし、組織的な価値創造の本質は「対話」にあります。「あれ?なんか変だぞ……」という一人称の主観が、真剣な「対話」を通じて「なんか、わかる!」という二人称の共感となり、その感覚が「コンセプト」に言語化されて初めて三人称の客観になるのです。

続ろーかるぐるぐる#196_人間くさいビジネスフロー図

ぐるぐる思考においては、この「他者との相互作用」という側面が希薄です。コンセプトを具体策に落とし込んでいく「磨くモード」の中に、他者とのやり取りによるブラッシュアップも含んでいるのですが、あくまでそこで描かれる中核は「個人」です。

たしかに誰か「強い個人」の発想で組織を(ある種、強権的に)導いていくアプローチもあるでしょう。もしかすると広告開発のような比較的短期間のプロジェクトなら、その方が効率的かもしれません。

しかし最近Indwelling Creatorsとしてクライアントに棲み込んで感じるのは、長期的かつ持続的にイノベーションを起こしたいのであれば、組織のあちらこちらから「あれ?なんか変だぞ……」という一人称の主観が現れ、「対話」を通じてそれをコンセプトに昇華させられる風土を根付かせなければならない、チームとしての創造力を高めなければならない、ということです。

続ろーかるぐるぐる#196_SECI図

SECIの共同化(Socialization)における「対話」の意味を、ぐるぐる思考でいえば思考の材料を集める「感じるモード」における「対話」の重要性を、今改めてかみしめています。

だからこそ、非常勤講師を務める明治学院大学の期末レポートでも(正直、個人でやる方が学生さんの負荷は軽かったと思いますが)チーム作業を課しました。そのお話は、また次回に。

続ろーかるぐるぐる#196_なべ写真

近所に住む会社の先輩が「甥っ子が育てたのよ」と届けてくださった秋田県湯沢市の「三関(みつせき)せり」。300年の歴史がある伝統野菜だそうで、寒くなると葉や茎よりもよく伸びるという長い根っこが特徴。

この日も、独特の香りとシャクシャクとした歯触りが楽しく、きりたんぽや骨付き鶏を押しのけて、圧倒的な「鍋の主役」でした。あまりのうまさに鍋を囲んでの「対話」を忘れちゃうのが、たまにキズか。そろそろ収穫も終わっちゃうようなので、ご関心がある方はお早めに!

続ろーかるぐるぐる#196_生産者写真

どうぞ、召し上がれ!

続ろーかるぐるぐる#190_ロゴ
山田壮夫が取り組む「Indwelling Creators」について詳しくは、ロゴをクリック。

お問い合わせ/担当:山田

書籍「コンセプトのつくり方」

X