世界最大の家電&ITショー
2015年CESに見る「破壊的変革」
2015/02/20
毎年1月、米ラスベガスで開催されるインターナショナルCESは、世界最大規模の家電ショーであるだけでなく、その年のテクノロジー、ITビジネストレンドを知る上で最も早くホットな場として注目される。ウォール・ストリート・ジャーナルでコラムを持ち、CESを2004年から取材しているフリージャーナリスト、津山恵子氏に15年のCESに見る米国企業のトレンドについて話を聞いた。
──この10年でCESはどのように変化しましたか?
2004年頃は ハードウエアが主役で、テレビの大型化やノートパソコンの軽量化を各社が競い合っていました。それがこの数年でガラッと変わり、ビッグプレーヤーである大企業が花形商品を出す一方で、スモールビジネスが活気を見せ始めています。スタートアップ企業の出展はこの数年2桁台で急増しており今年は375社に達しています。ウエアラブルなど、アプリと連携するヘルスケア関連などで面白いなと思えるものが多く出ています。
──IoT(モノのインターネット)に代表される、将来のテクノロジートレンドなどがキーワードであったように思います。
今年は、IoTがはっきりと見えてきた感じがしています。スマートフォンなど一つのハブのようなものに全てがつながり、操作できる世界になった。例えば、朝、目覚ましのアラームが鳴ると、連動して窓のブラインドが開き、ラジオから曲が流れ、キッチンではコーヒーが沸く。冷蔵庫など家電単体ではなく、家が丸ごとネットにつながっている、そんな世界が見えてきました。
──コネクテッド・ホームですよね。米国では実現し始めているのでしょうか?
米国人は、例えば車から降りずにガレージを開けるなどリモコンを使う習慣が浸透していて、スマホのリテラシーも高い。スマホで自宅の中のあらゆるモノを動かせるようになれば、その普及は早く、大きな市場になると思います。
──米メディアが特に関心を持つ分野は何でしょう。
スマホ市場は成長を続けているのでまだまだ関心が高く、見出しになりやすいですね。アップルへの 対抗馬が注目されています。
──多くの米経営層の基調講演やパネルディスカッションで、Disrupt(ディスラプト-破壊的変革)というキーワードが印象的でした。
日本と比較して、米経営者の危機意識は高い気がします 。例えばシスコシステムズのジョン・チェンバースCEOは、このテクノロジートレンドに対して迅速に動かなければ、向こう10年くらいでフォーチュン500企業のうち、4割しか生き残らないだろうと言っています。例えば、米国ではUber(スマホアプリを使ってタクシーを予約できる配車サービス)とかAirbnb(個人宅で貸し出し用に提供された空き部屋などを旅行者が宿泊施設として利用できるシェアサイト)など、数年前は影も形もなかったサービスが次々に生まれています。巨大製造業の自動車業界でも、突然テスラがシリコンバレーで資金調達をして電気自動車を作ってしまった。若い人がお金を持っていれば、テスラを買ってしまう。そのような、イノベーションやテクノロジーに裏付けされたぎょっとするようなサービスが、次々に登場するんですね。なので、巨人といわれる企業のトップであっても、Disrupt による環境変化に敏感であり、取り込もうとしている。高い意識を持っていることが、CESでの米経営者の発言からも多く見られました。(聞き手:森直樹)
米企業経営者が直面するDisrupt
CESは米国の巨大企業トップのプレゼンを
シャワーのように浴びる場所
全米家電協会(CEA)が主催するCESは文字通り、世界最大級の家電ショーです。と同時に米国を代表する巨大企業などの経営層のプレゼンテーションに身近で触れることができる、非常に貴重な場でもあります。ソニー、サムスン、トヨタ、インテル、クアルコム、シスコシステムズ、コムキャスト、フォード... 。そこでは、世界を代表する企業のトップによる講演やパネルディスカッションから、IoTをはじめとするIT・テクノロジー・デジタルの急速なる発展が自らの業界にどのような影響をもたらし、どこへ向かおうとしているのか示唆を与えてくれます。
そこで、IoTに次いで印象深いキーワードがDisruptでした。Disruptとは、全く違う業界や野心的なスタートアップ企業が急に市場に現れ、既存 の市場を破壊・変革して、新たな市場ルールをつくり上げるさまを言います。デジタルをはじめ、テクノロジーの活 用や、スタートアップが誕生し育成されるエコシステムが整っていることから、市場をDisruptするプレーヤーであるDisrupterが日々生まれ続ける 環境にあります。
2015 CES TOPICS
今年は過去最高の3600社が出展。4日間の会期中、世界から17万人が訪れた。200万平方メートルを超える会場は、次世代テクノロジーの可能性を探る熱気に満ちあふれた。