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朱喜哲が行く、札幌市「サッポロドラッグストアー」

プランナーが行く、“気になるゲンバ”No.6

2019/11/01

朱喜哲が行く、札幌市「サッポロドラッグストアー」

第一線で活躍中の電通のコミュニケーション・プランナーが、自身のアンテナに引っ掛かった「今ちょっと気になる現場やスポット」をリポートする企画です。

サッポロドラッグストアー外観(左)と、店内の様子

北の大地で進む「次世代型小売業」への最前線

今回プランナーの朱喜哲(ちゅ ひちょる)氏が訪れたサッポロドラッグストアーは、「サツドラ」の愛称で親しまれる、北海道に約200店舗(道外にも11店舗、海外にも5店舗)を持つ道内シェア2位のドラッグストアチェーン。1972年創業。AIカメラによる顧客行動の分析、店舗連動型O2O施策など、デジタルマーケティングの新たな形へ取引メーカーとも連携して挑戦中。AI活用に向けた取り組みも積極的で、地域やリテールにおける課題解決で獲得した知見を国内外でも展開している。

朱が気になったポイント
デジタル×リテール(小売り)に取り組んでいると、必ず事例で名前を耳にする「サツドラ」さん。業界内での知名度の一方で、ドラッグストア各社がM&A戦略で拡大する中で北海道にコミットすることで発展を目指す独自の戦略をとられているミステリアスな一面も。最先端の知見と独自路線、ぜひ現地を訪れて実像に迫りたいと思いました。

サツドラホールディングス インキュベーションチームリーダー 杉山英実さんに聞く!

(左から)朱喜哲氏、杉山英実氏(サッポロドラッグストアー)
(左から)朱喜哲氏、杉山英実氏(サツドラホールディングス)

【Q1】
店舗にAI カメラを設置する施策の狙いや方法について詳しく教えてください。

われわれはAIカメラを活用することで、リアル店舗の「ウェブ化」と「メディア化」を目指しています。ネットの世界のようにユーザーの行動やコンバージョン率をデータとして取得できることが「ウェブ化」。そのデータからコーナーや棚の影響力やターゲット層を把握し、店舗をパーツごとに価値付けできるような状態が「メディア化」です。

約1年前から、札幌市の「サツドラ月寒西1条店」を実験店舗としてトライアルを行っています。店内には90個以上のAIカメラが設置されており、お客さま一人一人の性別・年齢層、また店内での行動をデータとして取得することができます。もちろん、個人を特定しない配慮を施しています。これにより、どんなお客さまが、どんなルートで店内を歩き、どこの棚を眺め、どの商品を比較し、どれだけの時間迷ったか…といったさまざまな情報が分かります。

現在、店内のAIカメラのうち約50個は独自に取り付けたものですが、残りの約40個は店舗で扱う商品のメーカーから依頼されたもの。例えばお客さまが新商品に興味を持つ割合や、テスター使用と購入商品の関連性など、メーカーならではの視点も加え、より深いデータを取得できる形で設置しています。

【Q2】
AI カメラを設置してみて、どのような知見が得られましたか?
今後の展望も教えてください。

これまでの常識が覆るような驚きのデータが見えてきました。例えば、これまではPOSレジのデータから、お客さまの約7割が女性で、男性は約3割と認識していましたが、実際はほぼ半々であることが判明。ポイントカードのデータでは見えてこない男性客が多くいたのです。彼らが仕事帰りの時間帯にビールを購入しているリアルな実態なども分かりました。他にも、われわれが精密に設計していた入り口からレジまでの動線と全く異なる動きをするお客さまが非常に多かったり、同じような売り場でも売れる商品の特徴があったりと、重要な改善点が見つかりました。

もっと分析が進み、費用対効果が明確になっていけば、商品構成や店舗レイアウト変更などの大掛かりな修正にも積極的に挑戦できると想像しています。また、これらから各種ソリューションが確立された暁には、他の業界に生かすようなビジネス展開もできたらと思っています。

指標や発想がまさにECで追求されるそれで、デジタル×リアル知見のシナジーを強く感じました。

サッポロドラッグストアー 商品部デジタルマーケティング推進担当 山本剛司さんに聞く!

(左から)山本剛司氏(サッポロドラッグストアー)、朱喜哲氏

【Q1】
メーカーとコラボレーションしながら仕掛ける「店頭連動型O2O施策」も話題です。
どのような取り組みでしょうか?

具体的には、来店を喚起するユーチューブ広告の配信がメインです。テレビCMと違い、視聴者をエリア単位で絞って届けられるため、地域密着型の小売りと相性が良いと感じています。当社の場合、各エリアごとに配信ターゲットの設定に強弱をつけながら配信中です。

また、この取り組みの特徴として、その広告動画を、自分たちで制作していることが挙げられます。これは「売り場の視点」で制作することで、それぞれの店舗を日々愛用いただいているお客さまの心に本当に届くものができるという考えです。実は、コンテは私が描くことも(笑)。

さらに、広告動画で取り上げた商品を、実店舗でも連動させた形で販促する。これが「店頭連動型O2O施策」と呼べる理由ですね。ユーチューブを視聴したユーザーが店舗に実際に来店したかを計測できる仕組みが、この施策の価値を高めている。POSレジのデータを併せて活用し、ユーチューブ広告を見た方がどれだけ来店し、購入に至ったかまでを分析し、次の施策へと活用しています。

【Q2】
「売り場の視点」や「地域密着」を貫く苦労や成果を教えてください。

新たなチャレンジですから、初期はメーカー説得に苦労しました。当時はユーチューブによってもたらされる価値を可視化できなかったので。協力いただくために徹底したのは「売り場をちゃんとつくる」こととセットにするという点。実際「テレビCMで知ってもらえているのに、肝心の店舗でお客さまの目に留まる並べ方がされていない」という悩みを持たれるメーカーは少なくありませんので、「広告と店舗」をセットで設計するというこだわりは、この取り組み実現のキーとなりました。

地域密着型ならではの強みは、店頭での日々のコミュニケーションを通して「お客さまが本当に欲しいものが何か」を理解できていること。メーカーによる商品のターゲット設定が全国的に見れば正解であっても、ローカルのチェーンにおいては適切でないこともあり、そうしたチューニングもできます。マス広告などメーカー発信のメッセージに地域性のある当社発信が重なることでお客さまの商品理解もより深まります。

AIカメラの取り組みも含め、実験を小さく次々と行えるのも、地域密着型だからこそ。現在は「新商品や新たなプロモーションをするならサツドラで」と考えてくださるメーカーが増えており、大変ありがたく感じています。地域のお客さまに喜ばれる試みを、これからもメーカーと手を組んで行っていけたらと考えています。

制作から運用までされていたとは! 顧客を知る者こそ良い施策設計ができることを肝に銘じたいです。


サツドラの“インバウンド専門店”

豊かな自然、おいしい食、スキー場などのレジャー施設の存在により、アジアを中心とした訪日外国人が多いのも北海道の特徴のひとつ。サッポロドラッグストアーは、外国人が楽しめるよう店舗設計・商品セレクトを行った“インバウンド専門店”にも注力。その結果、現在は海外にも出店している。

サッポロドラッグストアー外観

最後に...(by 朱)

うわさばかり伺ってきたサツドラさん。その実像は、小売りとしては異例と思われる動画素材制作から媒体運用までに汗をかくことに裏打ちされた、最先端の知見を持つプロフェッショナル集団でした。多数のメーカーを巻き込んで「実験」で得られたノウハウの蓄積は、まさに「道外に本格進出しない」ゆえに競合しない同業他社にコンサルなどの形で展開ができる―というグランドデザインにも感銘を受けました。何より、地元密着による顧客との信頼関係があってこそ、次なるデータビジネスの芽を育めたのだと思います。

朱喜哲氏(サッポロドラッグストアー店内)