NEWSPACE PROTOTYPE OF ART DIRECTIONNo.1
次世代型アートディレクターを目指す。
2019/08/02
目指すのはアートディレクターの拡張です。
“NEWSPACE”はメディアやジャンルに縛られない自由な領域と
ビジュアルアイデアの掛け合わせで表現の可能性を研究し、
プロダクトアウトのアイデアを世界に発信します。
月刊電通報と特設サイトを発表の場として進行するアートディレクター企画“NEWSPACE”。
NYADC賞・JAGDA賞など国内外の賞を数多く受賞するアートディレクター川腰和徳(NEWSPACE代表)が、プロジェクト発足の背景や将来の展望について、その構想を語ります。
実験のフィールド“NEWSPACE”
デジタル技術の進化と、SNSの発展により媒体の価値も大きく変わり、これからのアートディレクターに求められる役割とは何なのか? と考える機会が増えてきました。
10年前ならチームの中でポスター、雑誌、新聞など平面媒体を担当することがメインでしたが、時代の変化と共に、アートディレクターが担うべき表現の種類やフィールドが大きく変化し、柔軟に対応する力が必要になってきていると思います。
今後もアートディレクターという職種に誇りを持ち、平面デザインを軸足に頑張っていきたいとは思っていますが、僕自身、もっと違う領域を勉強したいし、いろんなフィールドに対応できるスキルを習得したいと考えていた時に、月刊電通報(※)で連載企画を持つことになりました。知見を広げる研究と発表の場をということでスタートした企画が、“NEWSPACE”でした。
※月刊電通報:1946年に広告業界新聞として創刊されたタブロイド紙。現在はオールカラー版となり、月1回、電通の取引先企業の方々などに向けて発刊されている。
アウトプットから生まれるマネタイズを探る逆発想の場所
アートディレクターは本来、プランナーであると同時にデザイナーでもあります。唯一、企画からビジュアルの定着までをひとりで完結できる職種であり、個人のアーティストとして活動する人も少なくありません。
一般的なアートディレクターの仕事は、依頼に対して企画を考える受注型です。広告表現という制約の中で、自分を表現することはとても難しく、純粋に自分がつくりたいと思うことを発表するためには、個人活動の場が必要になります。
“NEWSPACE”は通常の広告ではできないようなことを自ら企画し、表現物の制作からスタートして研究・開発を進め、業務として生かせる可能性を探る取り組みです。表現からのマネタイズを目指せるように、そのアイデアからコラボレーションできる企業を探すなど、マネタイズの道を探ります。
発信型のアートディレクションプロトタイプが“NEWSPACE”の目指すところです。内面から沸き起こる純粋な発想の方がイノベーションを起こす可能性があると僕は感じています。
もちろん世の中の需要を無視したニッチなものに見えるかもしれませんが、それも全て実験です。ただ、プロのアートディレクターたちが半年以上かけてつくるプロトタイプは発表後に社内外からの多くの反響もあり、仕事に発展し始めているものもあります。
これまで発表したプロトタイプの数々
#001 「SYNCRONIZED SPACEWALK」群衆シミュレーションによるプログラミングの研究
#002「MATERIAL MONSTER」著作権フリーのCG質感キャラクター開発
#003「AR NEWSPAPER CITY」最新AR技術で表現する新聞の新しい可能性の研究
#004「ART PHOTOBOOK PROJECT」アート写真集「赤さん」の出版企画開発
#005「Virtual Human MEME」フルCGのインスタグラマーモデルの開発
#006「LOCKET NAILS」ロケットペンダント型のネイルアートブランド開発
#007 「AI GRAPHIC DESIGN PROJECT」AIにデザインはできるのか?大学との共同研究
#008「ZOETROPE DRESS」ゾートロープで動きだすファッションデザインの研究
など、昨年10月に立ち上がった“NEWSPACE”のプロジェクトは、「月刊電通報」の紙面でさまざまな領域のプロトタイプを発表しています。
#001~#004までの立ち上げ期は、僕が制作し、#005以降は月替わりで若手アートディレクターが担当しています。
例えば、#002 「MATERIAL MONSTER」は最先端のCGマテリアル技術の研究によってできたオリジナルモンスターキャラで、著作権はフリーです、また #004「 ART PHOTOBOOK PROJECT」では、赤ちゃんっておじさんにみたいに見えるってことだけのアイデアをビジュアル化、この企画は研究というよりは、マネタイズを意識したプロトタイプで、ゆくゆくアートフォトブックとして出版するつもりです。さらに「赤さん」をコンテンツとしてビジネス展開も目指したいと思ってます。全てはプロトタイプなので発表はゴールではなくスタートなんです。詳しくは特設サイトをご覧ください。
目指すのは表現の可能性とアートディレクターの拡張
アートディレクターという職種名って、実はすごく高尚で、幅広い意味を持っていると思うんです。アートは元来、自由なもの。アートディレクターと呼ばれるからには、「こうあるべき」という枠から飛び出し、ボーダレスに柔軟に表現ができる人材になるべきじゃないかと思います。
アートディレクターが映像、建築、空間、ファッション、アート、プロダクト、テクノロジーなど、さまざまなものをつくり出して、広告以外の多様な分野においてもアートディレクターが求められるのが理想だと思います。ビジネスにもアート思考が求められているといわれる時代、広告にも創造力や数値からは導き出せない感覚が大切になっていくと思います。
受注型の思考から、セルフスターターとして、世の中へ発信することをバックアップできる環境をNEWSPACEでつくりたいと思います。マネタイズにつながるビジネスモデルの事例がいくつかできれば、もっと壮大な企画に取り組むこともできます。どんどん活動の領域を広げるスパイラルをつくっていきたいです。発信型のアートディレクターが集団でコンテンツをつくるなど、今後活動の幅が広がればと思っています。
これからも続々と新しい表現を発表していきます。作品にご興味を持っていただける企業の皆さまは、ぜひこちらinfo@newspace.galleryまでご連絡よろしくお願いします。今後の展開にもご期待ください。