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新規事業を成功させる秘訣とはNo.3

Airレジで生かされているUXデザインの考え方。

リクルートライフスタイル・ 鹿毛雄一郎氏インタビュー (前編)

2015/05/12

第3回と第4回では、リクルートライフスタイルの鹿毛雄一郎氏をお迎えし、AirレジのUXデザインにフォーカスして、電通の三浦直也氏と対談していただきました。リクルートライフスタイルのUXデザイングループの役割についてうかがい、Airレジサービスを普及させるためにUXデザインをどのように設計しているのかについてお聞きします。

 

UXデザイングループの設立の理由と役割

三浦:鹿毛さんは現在、リクルートライフスタイルのネットビジネス本部でUXデザイングループに所属されていますが、入社されてからこれまで、どのようなことをされていたのでしょうか。

鹿毛:最初はポンパレの事業部に配属され、2週に1度のペースで開発とリリースを行っていました。「ポンパレの使い方」といったページの要件検討、コンテンツ制作、デザイン、コーディングまでの一連の流れを担当しました。ポンパレ事業部でメンターに付いてくれた人は、リサーチ、企画、フロントエンドのデザイン、コーディングなど何でもできる方で、彼と同じような人材を育てる意図だったようです。

2年目に手掛けたポンパレモールの立ち上げでは、ご参画いただいている店舗(クライアント)が商品を登録して販売するためのサービスと、一般の生活者(カスタマー)がお買い物するためのサービスの両方を、デザインから実装まで3人で行いました。特に、カスタマー側のサービスは、リサーチやコンセプト作成から携わりました。
Airレジに参加したのは2014年8月から。アプリ内の機能開発はもちろん、アプリ外で何ができるかについても考えています。

三浦:UXデザイングループの成り立ちやミッションについても教えてください。

鹿毛:UXデザイングループはできて3年目の部署です。
最初は製品の改善を行うカスタマーウェブグループの中にUXチームとして生まれ、リサーチや企画のほか、デザインや実装ができる人材を育成することも目指しています。リクルートは、ビジネスを考えながらサービスを作るということを大事にしていますが、ビジネス寄りの視点が強く、ユーザーは誰か、本当に使いやすいサービスか、といった視点が欠けがちという課題がありました。UXデザイングループはそれをサポートする役割で、主に新規立ち上げのフェーズでサービス開発に携わっています。

 

UXを実現するための体制

三浦:世間でのUXデザインは、既存のサービス のデザインをどのように変更するとPVが上がるか、コンバージョン率が上がるかといった改善の視点が多いと思うのですが、鹿毛さんのUXデザイングループ では、「新しいサービスのUXをデザインする」というスコープが特に新しいと感じています。新しいサービスを立ち上げて、ユーザーに受け入れてもらうため に、どのようなデザイン手法を行っているのでしょうか。

鹿毛:これまでは担当者によってやり方が違っていたため、新規立ち上げのためのプロセスを定義したフレームワークを作りました。あくまで道しるべなので、このフェーズではこのツールを使ってどのように作るといった具体的なことを決めているわけではありません。
今プロセスの中のどのフェーズにいて、この後何をするべきか、誰と仕事をすれば円滑に進むかなどの指針を示しています。戦略、企画、制作、運用の4つのフェーズで考え、戦略フェーズからユーザーの視点を持っていればプロジェクトが円滑に進められるという思想の下、フレームワークを作っています。

三浦:UXデザインでは、デザイン、コード、マーケティング、リサーチをそれぞれで行うのではなく、全体を俯瞰して見ながら全体最適を行うことが必要とされます。それらをつなぎ合わせるためのコミュニケーションはどのようにしていますか。

鹿毛:持っているスキルセットの幅によって、対応できる視点が変わってくるため、プロジェクトや人によって異なりますね。新卒の人は、開発などの下流の工程から経験を積み、その後リサーチや上流の行程を経験してもらうことが多いです。下流から上流まで一通り経験することが全体を俯瞰して見られる人を育成するうえで重要だと思います。

また、Airレジでは複数の小さなチームに分かれて開発を行っていますが、各チームにビジネスの視点を持った人、エンジニア、デザイナーの3者を必ず入れるようにして、それぞれの視点に漏れがないような開発体制にしています。UXデザイナーがどうあるべきかということをグループメンバーやマネージャーと話すことは多いのですが、まだ答えは出ていません。
ビジネス、開発、デザインのすべての視点を持ち、実際にサービスを作れることまで求めると、人材採用が難しくなります。今はそれらのスキルセットのうち、いくつかの組み合わせで新たな呼称を作れないかと、考えています。たとえば、デザインとコーディングができる人をデザインエンジニアと呼ぶとか。いったん、デザインエンジニアを目指した上で、ビジネスの視点を後から付け加えるといったことができないかを模索しています。

 

AirレジにおけるUXデザイナーの役割

三浦:Airレジは、開発のスピードが速く、顧客ニーズに迅速に対応しているプロダクトだと思います。どのようなチーム体制と意思決定で改善を行っているのでしょうか。

鹿毛:会計や予約、顧客管理などの機能単位で6 つのチームに分け、どのような機能を追加・改善すれば使ってもらえるかを考えています。まだAirレジを使っていない人に使ってもらうための視点と、すで に使っている人がより使いやすくなるための視点、その2つをしっかりと区別することが重要です。
以前はUXデザイナーが各担当者が 検討していることをレビューして、サービス全体の整合性を取っていましたが、その体制ではスピードを出すことができません。
そのため、1~2チームに1人 UXデザイナーが入れるように増員し、各チームのプロダクトオーナーをサポートしています。プロダクトオーナーは、担当の機能を改善するために開発、デザ イン、ユーザーの視点や、データ分析など、さまざまなスキルを持っていなければなりませんが、そこにユーザーとデザインの視点を補完する役割としてUXデ ザイナーが入っています。

三浦:新しいサービスや新機能をリリースするときに、UXデザイナーはどのような役割を果たすのでしょうか。新機能の追加で既存のユーザーが離れたらどうしようといった疑問が解決できずにリリースを見送ることはありがちですが、UXの視点からどのような手法でリサーチなどを行っているのでしょうか。

鹿毛:そこは、社内でも課題になっているところだとは思います。ユーザーの声を聞き、ユーザーの視点で考えることが文化として根付いているAirレジは、リクルートグループのなかでも秀でた存在ではないでしょうか。Airレジでは、立ち上げのときからUXデザインやユーザーの視点に対する理解があるプロダクトであったため、UXデザイナー以外のエンジニアやビジネスの人からも、これをユーザーが使ったらどう思うだろうという声が出てきます。実際の店舗にも足しげく通って現場を見たり、話を聞いたりしており、その中からさまざまなインサイトが見つかることが多いですね。

※第4回は、5/19に掲載予定です。