Experience Driven ShowcaseNo.1
クルマを売るのではなく、ブランドを売る
2015/04/13
2020年東京オリンピックに向けて、都市空間の更新、テクノロジーの進化、マーケティングに寄与するビッグデータの精緻化、デジタルとリアルを融合したイベント体験価値が進んでいます。
メディア接触の在り方が劇的に変わった21世紀に入り、ますますイベント&プロモーション領域のプランニングや表現が重要視されるようになってきました。
本連載「Experience Driven Showcase」では、電通グループが手がける、イベント、空間、テクノロジー、プロモーションの最新事例、魅力的な体験創造をご紹介していきます。
第1回目は、2013年8月東京・青山にオープンし、ラグジュアリーな空間構築で話題になった「INTERSECT BY LEXUS-TOKYO」。この店舗の空間開発やイベントを担当する電通の滝澤弥香がそのブランディングの考え方をお伝えします。
編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局
新しいラグジュアリーとは?
「INTERSECT BY LEXUS-TOKYO」は、コーヒースタンドとビストロでは、ゆったりした時間消費型の空間で、接客や対話もフレンドリーさを重視することで、豊かなブランド体験の場を提供し、LEXUSに関心がなかった20~40歳代の層も気軽に利用できる開かれた場づくりを目指しました。
難しかったのは、新しいラグジュアリー構築にチャレンジすること。空間づくりだけではなく、運営を通して、LEXUSの世界観を表現し続けることでした。たんにステータスを強調するスタンスではお客様の共感を得ることが難しく、従来のアプローチだけではなく、ソーシャルメディア時代に即した、最先端のクリエーターとお客様との「共創」によって、ブランド価値を生み出していくことにチャレンジしています。
「INTERSECT BY LEXUS」は、「クルマを売るのではなく、ブランドを売る」という、今まで国内外の自動車メーカーがやったことのないブランド・コミュニケーションにチャレンジしたのです。
「INTERSECT BY LEXUS」の空間構成
1階にはコーヒースタンドとライフスタイルを提案するエキシビションスペース「Garage」を、2階にはライブラリーと一体となったビストロと、LEXUSが提供するライフスタイルをデザインするアイテム「CRAFTED FOR LEXUS」のショップを設置。また地下にはバースペース、クラブルームを設け、交流の場として提供しています。また、日本各地の若き匠たちが制作するアイテムを「CRAFTED FOR LEXUS」として販売し、LEXUSのクラフトマンシップも表現しています。
空間デザインだけではなく、常に“お客様とブランドがつながるための場所”として、イノベーティブな人々が自由に交わりアイデアを交換する場所として、立ち上げから2年間、運営にも深く関わっています。日々、トークイベントやパーティー、ワークショップなどを行い、あらゆる方法で新しいライフスタイルを提案していきます。
プロジェクトが始まった時から「INTERSECT BY LEXUSとは何なのだろう?」と問い続けてきました。
ありきたりなショールームでないことは、最初からはっきりとわかっていたことで、単なるブランドショップでも、レストランでもない。目指しているのは、まったく新しいカテゴリーのコミュニケーション空間づくりなのです。
共創でつくる「体験のデザイン」
店舗開発の分野では、“ブランドの新しい個性や世界観を可視化して組み上げ、ストーリーをもって体験を提供していくこと”、そんなブランドの見せ方への挑戦が多くなっていると感じています。なにか特別な時間を過ごしたいという価値観で、人々が求めるものが「モノ(商品)」から「コト(体験)」に移り変わっている。ステータスよりもコンフォートな感覚でブランドを選ぶようになっているからでしょう。
いま店舗開発に求められているのは、ブランドに触れることで与えられる「体験のデザイン」なのだと思います。
店舗などの空間、ハコをつくるだけではなく、場での体験や経験をデザインし、商品の世界観だけではなく商品が発信する取り組みを伝えていく。そんな編集者的役割を空間が果たすことで、新たなブランドの価値、ファン層を拡大していきたい。私自身も、この空間を形づくる、世の中の流れをつくっている素晴らしい人たちと共創しながら、人々のライフスタイルと密接に関わり、素晴らしい体験をつくっていきたいと考えています。
次回は、「INTERSECT BY LEXUS」の音楽プロデューサーを務めるテイ・トウワさんと私が対談いたします。