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電通スマプラNo.16

トップクリエーターと考える、スマホゲームの未来。前編
(ミストウォーカー×エイリム×電通スマプラ)

2015/05/14

みなさん、こんにちは。電通スマプラの山本です。

スマホの登場により、私たちが接するコンテンツの量は飛躍的に増えました。なかでも「スマホゲーム」は私たちにとって最も身近なエンターテイメントとなり、そのジャンルも多様化が進んでいます。スマホアプリの売上げの約9割を占めるというスマホゲーム市場ですが、今、ユーザーから求められるゲームとはどんなモノなのでしょうか?

スマホRPGというジャンルの一つの解を、世の中に示したと言われるゲーム“ブレイブ フロンティア”(ブレフロ)。そして、ブレフロを開発したお二人が影響を受けたゲームの一つが、世界的なRPGである「FINAL FANTASY」シリーズです。

そのFFシリーズ生みの親である坂口博信氏が、2014年にリリースしたスマホRPG「テラバトル」も日々ユーザー数を増やしており、注目を集めるスマホゲームタイトルへと成長しています。

今回は坂口氏と、ブレフロを開発したエイリムの早貸久敏氏と高橋英士氏の3名をお招きし、スマホゲームの未来についてお聞きしました。


──今日はよろしくお願いします。FFに熱中した幼少期を経て、今現在ブレフロにハマっている僕にとって、今日はまさに夢の対談です。

早貸高橋こちらこそ、お呼びいただきありがとうございます。

坂口:よろしくお願いします。そう言ってくれる人と最近お仕事する機会が増えてきて、本当にうれしいばかりです。

──早速ですが、坂口さんは先日、都内でテラバトルの音楽イベントを開催されましたね。即満席となり大盛況だったと伺っていますが、実際、訪れたファンの方々の反響はいかがでしたか?

坂口:何というか、欧米の人と違って、その場でダイレクトに日本人って反応が来ないじゃないですか。その場ではわりと皆シーンと聴いていて、後でTwitterを見ると「エアリス(FF7のキャラクター)のテーマ流れたー!」みたいな(笑)。

今までも、FINAL FANTASYとかでコンサートを行ったりしてきましたし、既にみんなゲーム音楽コンサートというのに慣れちゃっているんです。ただ、何かこれまでと違う雰囲気というのはありましたね。スマホで聴き続けていた音楽が、ライブ音源でアレンジされていることの新鮮さは、お客さんのなかにもあったみたい。

「テラバトル」の音楽イベントの模様。会場:Apple Store, Omotesando Photo:  (c) Kensuke Tomuro

坂口:今回、ちょっと体験的に新しかったこととして、会場で戦闘シーンの曲が流れたら、テラバトルで遊んでいる方が結構いたんですよ。多分、遊びたくてやっているのではなくて、ゲーム画面を見ながらライブ音源を聴くことが快感ということなんでしょうね。

これはコンソールゲーム(アーケードゲームの筐体や家庭用ゲーム機など、ハードが必要なゲーム)では絶対に起き得ないことなので、想像していない発見でした。改めてプラットフォームが変わったんだな、という気がしました。せっかくライブ音源が録れたので、ゲーム内でライブ音源にスイッチできるイベントをやろうと思っています。

──生音をBGMにしてゲームというのは贅沢ですね(笑)。数年前までは、携帯ゲームのファンイベントを行うことは想像できませんでしたが、エイリムさんも昨年、「ブレイブ フロンティア1周年」を記念したファンイベントを開催されましたね。

早貸:携帯ゲームが、ブラウザーでアクセスする形から専用アプリを作るようになったことで、音楽を入れたり演出も派手にできたり、色々な方法でゲームのおもしろさを伝えることが可能になりました。カードがいいとか、絵がいいとかだけではなくて、世界観に引き込むことができるようになったんです。ゲームのおもしろさとして伝えられるので、その環境がファンの形成につながり、ファンイベントといったようなカタチとして返ってきているのかなと思います。

携帯ゲームをつくっているとバカにされた!?

──スマホが登場した当時、誰もここまでスマホゲームが盛り上がることを想定してなかったと思うのですが、ゲーム業界ではどのように受け止められていたのでしょうか?

坂口:正直、失礼な言い方になってしまうのですが、バカにされていたと思います。

でもそれは変な意味ではなくて、実はファミコンもそうだったんです。当時はアーケードゲームが全盛で、どちらかというとゼビウスとか、アーケードゲームがほぼそのまま移植されたことがファミコン版のヒットにつながったぐらいで。やはりアーケード部隊が、どの会社でも花形だった。そのまま同じことが起きている、という感覚です。

大体バカにされている方が、スキがあったり、ビジネスチャンスがあったり、何しろ新規性がある。クリエーター側はバカにするけれど、ユーザーからすると、それが出てきたのには何かしらの理由があるわけです。ファミコンがゲームセンターではなく、家庭に受け入れられてヒットしたように、時代は単に繰り返しているというのが僕の考えです。最初はバカにされたんです。

ミストウォーカー・坂口氏

高橋:ガラケーが出てきたときも同じでしたよね。モバイル事業部みたいなものが各社で出来ていましたが、人によっては配属されたくない、みたいに扱われていた印象があります。

坂口:ガラケーはスマホよりも更に原始的だったから、なんでそんなゲームを俺が作らないといけないのという風潮はすごかったよね。俺は今PS3で3Dをやっているんだと。この30秒の演出に命をかけてやっているのに、なんでガラケーなの?という。

でも今、うちのプログラマーは当時ファイナルファンタジーの3Dエンジンを作っていましたからね。そんな人間が、テラバトルというスマホゲームを作るわけです。それが評価されるわけだから、時代のニーズは確実に変わってきているということです。

──まさに、スマホが様々なパラダイムシフトを起こしていますが、最も早くその影響を受けた業界がゲーム業界かもしれませんね。いわば、スマホビジネスの最先端。皆さんご自身としては、スマホの登場をどう受け止めていたのでしょうか?

早貸:単純にうれしかったですね。それまではゲーム機を持っていないとゲームができませんでしたが、携帯電話で、しかもスマートフォンなのでガラケーとは違って海外でも流通しているデバイスでゲームが作れる。やっぱりクリエーターとして、自分で作ったゲームを一人でも多くのお客さまにやってほしいという思いがありますから、スマホが出たときに世界中に出せるんだと思って。すごくいいなと思いました。

坂口:全く新しい流通網が誕生したわけですからね。そういう視点で言うと、多くの人に作品に触れてもらいたい僕らクリエーターにとっては、それはもうスマートフォンのおかげだよね。

高橋:トリニダード・トバコでダウンロード数「1」って出たときは、驚きました。いるんだ!と(笑)。あれは結構ゾワッとしましたね。これ新しいな、と。

ユーザーの意見VSクリエーターの感覚

──スマホゲームの一つの特長として、ダイレクトに「このイベントは失敗だな」とか、逆に「売上げに跳ね返ってきてるな」と分かるという点があると思います。この点に関して気を付けていることなど、何かあったら教えてください。

高橋:開発者とユーザーの距離がすごく近くなったのは、事実だと思います。うちのゲームデザイナーとかにもユーザーの反応が必要以上に気になってしまう者もいて、そういうのって良しあしだなといつも感じています。ユーザーの皆さんもそれぞれ意見が違うので、良いと言う人もいれば、悪いと言う人もいるし、あまり情報に惑わされないようにいかにやるかだと思ってます。ユーザーの意見や、売り上げに極端に左右されるのは良くない。最後は、自分が信じたおもしろいと思うことをやるようにしてます。

坂口:まさにここがPDCAと言うんですかね、あまり好きになれない文化で(笑)。

データを見れば完璧にわかる部分もあるんですけれど、あえて見ない。昔から一緒ですよね。FFでも、みんなでユーザーの声を聞いてそのまま作ったら多分ダメなんです。ユーザーの想像の範囲内で作ったらアウト。クリエーターなんて、裏をかいてなんぼ。そのまんまは死にますよ。これは任天堂さんの請け売りでもありますけどね。

スマホゲームはまだまだ黎明期

──先ほどファミコンの話を引き合いに「時代は繰り返している」とお話しされていましたが、コンソールゲームとスマホゲームで企画の仕方などに違いは何かありますか?

早貸:そもそもスマホってゲーム機ではない。コントローラーがないですから。つまり、コントローラーから自分たちで作らないといけないので、ゲームの中だけではなくて、ハードを作っているのと近いかもしれません。ディスプレーを押したときに、親指で画面が隠れてしまうので、押した感覚をどうやって出すのか、そういったところも考えないといけないという違いはあります。

エイリム・早貸氏

坂口:大きな違いですね。おもしろいなと思うスマホゲームは、タッチパネルの操作法が「これは新しい!」というアイデアの入ったものです。そして、タッチパネル用のゲームというのは、実はまだ黎明期だから、これからまだ2、3新しい遊び方が出てくると思っています。なぜなら、コントローラーでもそういうことが起きたから。もう出ないだろうと思っても出るわけです。

早貸:もしかして任天堂さんかもしれないですよね。

坂口:なるほどねという、目からウロコなものが登場して、その類似商品が出たりすることで、下手するとゲームジャンルそのものが増える可能性もある。そういう意味では、何か今ちょっと閉塞感がある家庭用ゲーム機市場に対して、未来を感じますよね。ゲームにとって操作性の新規アイデアというのは、ゲームの根本的なことだから。任天堂さんの参入には、そういう点でも期待しています。

高橋:今、坂口さんがおっしゃったような話は、スマホゲームの未来を考えるようなことじゃないですか。そういう新しい発見をしようと思っているメーカーもいれば、そうでないメーカーもあるような気がします。今のスマホゲーム市場には、売り上げの過当競争をしているような風潮が一部存在しますよね。

──某パズルゲームが海外でもまねされて…、みたいな世界ですね。

高橋:そうですね。そういう考えからは、きっとイノベーションは生まれないはずです。その意味では、コンソールゲームメーカーは、過去にゲームづくりにおけるイノベーションを起こしているし、未来を考える文化が染みついていますよね。純粋に「エンターテインメント」として、デジタルゲームやビデオゲームを考えることができる。

坂口:ファミコンがそうでしたからね。最初は縦スクロールだらけ。グラディウスがヒットしたら、今度は横スクロールだらけ。そのあと2匹目のドジョウか、3匹目までは、ヒット作品がいるわけですが、4匹目以降はダメになって、淘汰されていく。そういう意味で言うと、まだスマホゲームは、真似してもおもしろいフェーズなんだよね、きっと。初期段階だから。2匹目、3匹目まではいいと思います。もっとおもしろくすればいいと思う。アールタイプ(グラディウスと同時期に発表された横スクロールゲームの代表作)のようだったらいいですよね。すごくおもしろいですから。

早貸:そう。アールタイプは、コピーとは全然違う。

高橋:でも、どうしても、それもどこかで極まっていきますよね。

スマホでウケるゲームとは

──スマホはゲーム機として捉えるとタッチパネルデバイスという話がありましたが、遊び方がコンソールゲームと比べて、具体的には、どんなことが制限されますか?

坂口:今までのゲームって基本的にキャラクターがいて、それをアバター的に操作するじゃないですか。スマホではこれが難しいですよね。というのも、先ほど言ったように指で隠れてしまうから。キャラクターが隠れちゃうと、つまらないですよ。

だからパズルみたいなものがヒットしているだろうし、コマンドで選択するのが主流になっている。ここがなかなか、例えばマリオがスマホで作りづらい理由でもありますよね。マリオに指を重ねて操作するマリオは、想像がつかない。そんなもので、もしおもしろいものができていたら、とっくに任天堂さんはタッチパネルで操作するマリオを作っているはずです。そこはスマホの障壁なんですよね。

高橋:おっしゃるとおり、指で触るデバイスでゲームを作るというのは、作り手にとって縛りでしかないですよね。

坂口:結構つらいですよね。でもきっと新しいアイデアが出てくるんですよ。パズドラは、やっぱりうまかったですよね。指で触ってやるゲームとして。

──やはり、パズドラが登場したときは衝撃がありましたか?

早貸:ありましたよ!ほんとに衝撃的でした。

高橋:ブレイブ フロンティアの企画中にパズドラが出て、出た直後2週間ぐらい思い悩みましたから。パズルがいいのかなと思って(笑)。

早貸:ソリティアとかスロットとか、そういう画面を描いた時もあったよね(笑)。

坂口:あとは、アングリーバード。物理シミュレーション(ゲーム内で物体などが動く際に、実世界の物理運動と同じように動かすこと)が入って、そういう意味では最先端を若干取入れながら、タッチパネルで独特のUIにしていますよね。解析すればするほど、賢いというか。

──ちなみに、今話に出たようなゲームも含め、ユーザーが喜ぶスマホゲームの共通項やキーワードみたいなものはあったりしますか?操作性以外にも、スマホならではの手軽さから生まれる、プレイする人の心理や、気持ちの揺れ動きとか。

電通・山本氏

早貸:個人的な意見ですが、ながらプレーができるものの方が受け入れられやすいかもしれません。テレビを見ながら片手間にやれる部分もあって、一方で集中が必要な部分も当然たくさんある、という。

──ながらゲーム的なものが受け入れられやすい、というのはまさに、スマホがゲーム機じゃないから、ということなのかもしれませんね。だからこそできることがたくさんあるし、逆に、共通項がないとも言えるのでしょうか。

早貸:そうですね。本当に多種多様ですよね。

スマホゲームは「飽きとの戦い」

高橋:ひとつ、共通項というのとは別かもしれませんが、スマホゲームも結局、「飽きとの戦い」をずっと繰り返していますよね。パズドラが流行って、パズドラと似たようなゲームが出てきて、きっとみんな少しずつ飽きてきていて、ブレフロも、RPGとしては新鮮に映った時期が1年半ぐらい前にあったところから、また似たようなものが出てきて飽きてきて、というように感じます。

その飽きをユーザーはずっと繰り返しているから、共通項という意味では、「飽きとの戦い」にさらされているということは言えると思います。

エイリム・高橋氏

坂口:その構図は、本当どうなんだろうね。そのユーザーの飽きに対する、我々ゲームメーカーの今の戦い方は正しいのか、と。スマホでRPGスタイルのものだったら、無理に戦い続けるのではなく、運営をどこかで絞り込んでしまって「はい、おしまい。次は完全新作の“2”をやります。」とやった方が実はいいんじゃないかって思うことがよくあって。

高橋:その方が、いい感じがありますね。

坂口:ガラケー時代のソーシャルゲームからの流れに右にならえで、みんなダラダラと一つのタイトルを運営し続けているけれど、もしかしたら、どこかでスパッとやめて、2を出したり、さらにどこかで3を、とかすべきなんじゃないかな。コンシューマーゲームとの中間みたいなスタイルの方が、もしかしたらユーザーがついてくるかもしれない。

高橋:それは本当にすごく思います。

坂口:その方がIP化(Intellectual Property化、タイトルを知財化して横展開すること)もしやすい。

早貸:そうですね。やはり2年間や3年間同じというのは、苦しいですよね。コンソールゲームで1年間ずっと遊び続けることはほとんどないですからね。一部のシミュレーションゲームくらいですかね。作っている方も飽きてしまう(笑)。

──ある程度のところで続編を出していくという遊ばせ方をするタイトルの登場を願っている人は、けっこういるんじゃないかと思うのですが、そういうゲームが誕生しないのはなぜでしょうか?


対談の前編はここまで。

後編では、スマホゲームをこれからどの様に育てていくべきか、3名からお答えいただきます。(後編は、5月18日掲載予定です)


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