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PRがコミュニケーションを変える ~アメリカの最新トレンドから~No.2

Elise Mitchell × 平松 和剛 (後編):
PR3.0時代のトッププレーヤーに
なるために必要なこととは?

2015/05/22

前編に続き、アメリカのPR業界をリードしているミッチェル・コミュニケーションズ・グループCEOのエリース・ミッチェル氏と、電通iPR局局長の平松和剛氏が、アメリカの最新PRトレンドについて意見を交わしました。

zentai

重要性を増してくる「Always On(オールウェイズオン)コミュニケーション」

平松:ミッチェルさんの話を聞いていて、日本でも、PRの再定義が必要だと強く感じています。前にふれたように、これまでPRはメディアに露出することがゴールだと言われてきた。それを、私たちはPR1.0と呼んでいます。次に1995年ぐらいから、「戦略PR」という言葉が登場しました。これは、広告キャンペーンをする前に、PRで商品やサービスについて語りたくなるような空気づくりを行う手法ですね。これが、PR2.0です。
しかし現在はソーシャルメディアが普及して、誰もがPCやタブレット、スマートフォンといったデジタルデバイスを使って、リアルタイムで情報を検索したり、自分から発信したりしています。と同時に、企業も、オウンドメディア上で情報発信することで、メディア化する傾向も出始めています。そういう状況の中で、「Always On(オールウェイズオン)コミュニケーション」の重要性が高まっています。つまり、1日24時間365日、絶えず消費者とコミュニケーションをし続けることが求められます。ソーシャルリスニングを起点として、消費者のインサイトを獲得し、それを踏まえてコンテンツを発信して消費者とのエンゲージメントを強める。その結果、コミュニティーが生まれ、ある商品やサービスのファンが、ソーシャルメディア上でいろいろ語り始める。そのコミュニティーの声を再びソーシャルリスニングして、インサイトを深く探るというサイクルのPDCAを高速で回す新しいコミュニケーションのあり方をPR3.0と定義し、これからのPR活動の主要な領域になっていくのではないかと考えています。必ずしもPR1.0や2.0がなくなるわけではありませんが、トレンドとしてPR3.0が、日本のPRの概念そのものやビジネスの領域を大きく変えていくのではないかと。

ミッチェル:PR3.0という捉え方、同感ですね。平松さんがおっしゃるように、PRの根幹的な部分は、これからも存在意義を持ち続けていくと思います。私たちはあくまで、ブランドと消費者との関係性を強化するお手伝いをするのが第一の役割です。そして次の段階で、ブランドの評価がもっと上がるようにする。最終的に、ビジネスとしての成果、つまり売り上げにつながればいいわけです。その全体的なスキームはこれからも変わらないと思います。ですが、伝統的なPRが必要な危機管理やメディアリレーションといった領域もずっと必要とされるのは間違いありません。

海外PR戦略に不可欠なスポークスパーソンの存在

平松:日本では、海外でPRを展開したいというクライアントが増えています。ミッチェル・コミュニケーションズでも、日本のクライアントと仕事をしていると思いますが、仕事を通じて何か気づいた点はありますか。

ミッチェル:日本の製品やサービスが非常に優れていることはよく知られているので、海外の消費者は非常に高い関心を持っています。ただし、日本企業は、海外市場で製品・サービスのプロモーションを行う前に、PRにまず投資をするのが賢い選択だと思います。ひと口に海外といっても、消費者は、その国のローカル市場によってまったく異なります。アメリカでも、州や、さらに州の中の地域・コミュニティーによって、消費者の傾向が違ってきますから、ターゲットとする消費者をより深く理解するために、PRへの投資は必須だと思います。
加えて、ぜひ検討すべきなのが、海外市場で製品・サービスを売っていくときに、その地域のスポークスパーソンとなる人材を確保することです。現地の消費者や、その中でもインフルエンサーになりうる人に対して直接その土地の言葉でコミュニケーションが図れて、ブランドメッセージを定期的に伝える仕事ができる人材が絶対に必要です。その存在が、企業・ブランドとコミュニティー、そして消費者との「つながり」をいっそう強化します。人材の確保はそれほど難しいことではありません。私たちのような人材の確保や育成のお手伝いができる会社を利用すればいいだけの話ですから。

平松:ミッチェルさんのお話で、PRが、全てのステークホルダーとのリレーションシップをマネジメントしていくことだとよくわかります。それが、クライアントのレピュテーションに直結するわけですね。ファクトに基づきニュースをデザイン化して、ストーリー化していくことが、ブランディングに貢献する。ミッチェル・コミュニケーションズは、まさにその手法の一つとして、スポークスパーソンやインフルエンサーを通じたソリューションを提供してきました。日本企業が海外でビジネスをしていくには、やはりミッチェル・コミュニケーションズのような、現地の消費者やメディア、その他さまざまなステークホルダーの状況に熟知している会社とタッグを組む必要がありそうです。

それと、情報が国境を超えて拡散していく時代であることを考えれば、グローバル戦略においてデジタルへの十分な投資が不可欠であることも重要な点ですね。iPR局でも、ソーシャルメディアにおけるインフルエンサーの活用や、コンテンツマーケティング、リアルタイムマーケティングといった様々なソリューションを提供しています。グローバルPR領域でも、ミッチェル・コミュニケーションズとますますコラボレーションしながら、ぜひベストプラクティスを増やしていきたいと思います。

コミュニケーションの専門家集団として最大の価値をクライアントに提供する

平松:我々は今、電通イージス・ネットワークという大きなネットワークを持っていて、そこにはいろいろなケイパビリティーを持ったチームがたくさんいます。そういう人たちとどのようにコラボレートしていったら、よりクライアントにベストなソリューションを提供していけると思いますか。

ミッチェル:私たちが一緒に仕事をすることによって、クライアントに、もっと強力な力を提供できると私は信じています。私たちミッチェル・コミュニケーションズでは、常々フィロソフィーとしていることがあるのですが、「チーム・オブ・エキスパート」、つまり専門家集団として仕事をしていこうと言っています。クライアントのニーズに応じて、最も才能ある人たちがチームを組む。参加するエキスパートとしては、PRの専門家だけでなく、広告、メディア、デジタル、クリエーティブと、さまざまな専門家が加わることもある。そのチームが一丸となって、クライアントのニーズに真摯に耳を傾け、ベストなソリューションを提供する。一体となってシナジー効果を発揮していくことで、クライアントにとっても、最大の価値を提供できるのではないかと思います。競合のネットワーク・エージェンシーを見ていると、シスター・エージェンシーとはいっても、お互いに競争しているところもないではありません。私たちのネットワークはそうではなくて、ワンチームとして力を発揮するパートナーになるべきではないでしょうか。

平松:iPR局が目指しているPRの新しい領域、つまりPR3.0の世界で、電通グループが世界でトッププレーヤーになり、ミッチェル・コミュニケーションズをはじめ、電通イージス・ネットワークのさまざまな会社とコラボレーションしていくことによってクライアントに対してベストなソリューションを提供していきたいと思います。本当にありがとうございました。