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電通報ビジネスにもっとアイデアを。

生体信号が拓くコミュニケーションの未来No.2

自動車や家や街や世界が、

人間を察してくれる未来

2013/10/28

前回に続き、なかのかなさんと神谷俊隆さんにインタビュー。
今回は、生体信号と新会社の電通サイエンスジャムについてお届けします。

技術にクリエーティブとデザインをかけあわせる

──necomimiが発売され、その次は?

神谷: necomimiで使った脳波センサーは「集中」と「リラックス」しか測れなかったので、違うロジックがないかと探していたとき、たまたま慶応義塾大学から「簡易脳波計測器を開発」というプレスリリースが出ているのを見つけました。そこで、その研究をしている慶応大学の満倉靖恵先生に話を聞きに行くと、necomimiのことも知っていて、ぜひ一緒にプロジェクトをやりましょうということになったんです。

──さきほど、necomimiは「集中」と「リラックス」を計測するということでしたが、満倉先生のアルゴリズムはどのようなことが分かるのでしょうか。

なかの: 「興味」「好意」「眠気」「ストレス」「集中」です。necomimiで使っていたものとは異なるのですが、ニューロスカイに特注したヘッドセットで満倉先生のアルゴリズムが動くという検証もできました。

神谷: そこから、音楽のレコメンドエンジンとヘッドフォンが組み合わさったプロダクトなんかが生まれました。

──今後は、その新しいアルゴリズムでプロダクトを作っていくと。

神谷: そうですね。プロダクトとサービスを作っていこうということで、電通サイエンスジャムという会社が設立されました。電通サイエンスジャムでは、日本の科学者や先端技術を世の中に出してマネタイズしていこうと考えています。われわれは先端技術を見つけ、そこにクリエーティブとデザインをかけあわせ、話題を作って、ビジネス化していきます。この、クリエーティブやデザインをかけあわせて打ち出していくっていうのが、われわれのユニークなところだと思っています。

なかの: これまでって「インターネットにつながればテクノロジー」みたいなところがありましたが、もうその段階は過ぎていて、例えばクレジットカードや携帯電話が違う形状になるような、新しいテクノロジーが出てきています。そういったテクノロジーのシード(種子)を探して、アイデアやコンセプトをかけあわせて変容させる行為って、コミュニケーションを考える立場として広告会社もやるべきじゃないかと思っています。

神谷: 電通サイエンスジャムでは、まず日本にある技術にクリエーティブを加えて打ち出していくことからスタートします。昔の日本の技術って凄かったけど、今は海外の方が進んでいる面もある。もう一度日本の技術を元気にさせていきたい。

──日本のニューロ技術って、世界的に見るとどうなんですか?

なかの: 医療用の技術は進んでいますが、ニューロスカイのように簡易的なセンサーを作るような発想がないんです。まじめ過ぎるというか、精度を求め過ぎるんですね。

神谷: 良い技術はたくさんあるのですが、制度や規制に縛られて実用化までに時間がかかるという側面があります。われわれが関わることで、そこを一気にジャンプさせたいですね。

まずは満倉先生のアルゴリズムをブランディングしながら話題を作る

──電通サイエンスジャムのビジネス領域の場合、マーケットはどのように考えるんですか?

神谷: 競合は今のところいませんし、マーケットはこれから作っていくような段階です。まずは満倉先生のアルゴリズムをブランディングしながら話題を作って、仕事を受託できるよう進めます。あとはキャンペーンで脳波を使ってみたいという話もあるので、クライアントに新しい価値を提供するような動きを強めていきたいですね。

なかの: あとは、「こんな技術があるけど使い所が分からない」というようなことがあれば、ぜひお話を伺いたいです。個人的には、どうすればその技術が一番生き生きするかを考えるのが喜びなので、そういうお話があったらすごく嬉しいです。

神谷: 「こんなネタがあるんだけど」っていう問い合わせが来るようになることが理想ですね。

──それは脳波以外の話も、ということですか?

なかの: そうですね。こだわってないです。生体信号系は全般的に興味があって、脳波以外だと、例えば心電や筋電というのもありますね。

神谷: 生体信号を使った商品開発は、ここ数年で加速していて、例えば心拍センサーはスポーツ系メーカーや携帯電話メーカー、自動車メーカーで使われています。あとは指紋認証とか。そういった技術分野で飛躍が必要な場合、生体信号系の知見もたまっているわれわれに相談いただければ、ご協力できると思います。

なかの: 生体信号以外でも、様々な技術から、サービスやデバイスを考えていきたいと思っています。ナノテクロボットは行き過ぎにしても、触覚フィードバックとか…、3Dスキャニングとか…。

神谷: 広告の世界に近い部分があって、商品をどう広告するかというのと同じように、専門技術をどう民生品に近づけるか、広がるサービスに落とし込むかということを提案できます。

 

人間の内部と外界との距離を縮める時代になっていく

──テーマとしては、コミュニケーションということになるんでしょうか?

神谷: そうですね。やはりコミュニケーションはテーマになります。

なかの: necomimiは、person to personのコミュニケーションでしたが、今後はもっと範囲が広がって、machine  to personとか、contents to person、machine to machineになっていきます。家や街や世界とのコミュニケーションというコンセプトを考えていて、人間の生体信号を計測することによって、人間と外界との壁がどんどん薄くなる。つまり世界の方が自分を、推し量ってくる。

神谷: 時間はかかると思いますが、流れとしてはそうなっていくと思います。それは生体信号だけじゃなくて、GPSやいろんな技術がかけあわさっていくんですけど。例えば魚群はなんでぶつからないのかって研究をして、自動車を運転してもぶつからないようにするとか。家に帰ると、生体信号から察して勝手にエアコンがつくとか。人間が負担しなくても、さまざまなものが察してくれる。

なかの: 自動車を運転しているときに、いらいらしているとアクセルが踏みにくくなるとか。

──察してくれるようになるんですね。

なかの: 持ち運びできるスマートデバイスって、人と人との距離や、人と世界の距離を縮めたんですけど、今度はそういう情報を測るようなものが、人間の内部と外界との距離を縮める時代になっていくと思います。