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マーケティングROI最前線 ~アナリティック・テクノロジーが切り開く未来~No.4

【最終回】
Karl Weaver × 中川 健 (第4回):
今後重要性を増していくアジア地域での
マーケティング・ミックス・モデリング

2015/06/19

Data2Decisions(データ トゥー ディシジョンズ、以下D2D)とは?
イギリス・ロンドンを拠点に、電通イージス・ネットワーク(DAN)の一員としてデータ分析に基づくマーケティングコンサルティングサービスをグローバル展開。クライアントのマーケティング投資効率(ROI)を最大化するために、 Marketing Mix Modeling (マーケティング・ミックス・モデリング、以下MMM)などのエコノメトリクス(計量経済学)をはじめ、最先端のアナリティック・テクノロジー(分析技術)の開発と運用を行っている。
 
*MMMは、売り上げデータとメディアなどのマーケティング活動データを用い、売り上げに対する効果とROI を分析するエコノメトリクスモデル。

 

前回に続き、このたびD2DグローバルCEO、カール・ウィーバー氏が来日したのを機に、クライアントのマーケティング投資効率を最大化するアナリティック・テクノロジーの最先端と今後の動向について詳しく聞きました。今回で対談の最終回。聞き手は、統合データ・ソリューションセンターBI推進部の中川健部長。

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データ、クリエーティビティー、テクノロジーの相互作用が重要

中川: D2Dのこれからの戦略をお伺いできますか。

ウィーバー:今後の2〜3年については、クライアントのメリットを増大させるためにとにかく分析テクニックを増強し、デジタルデータなど個人レベルのデータ分析にもさらに力を入れてマーケットデータの分析と組み合わせていくことが目標です。つまり、アナリティクス・テクノロジーのコンバージョンです。すでに一部のクライアントに提供していますが、その成果は、私たちが行ったエコシステムのプランニング作業にも表れ始めています。

もう一つ重要な課題となるのが、メディアの効果に対するクリエーティブインパクトです。ブランドサイズはROIに直接影響しますが、クリエーティブはその次に影響を及ぼす大きな要因です。ということは、クリエーティブの効果次第でビジネス成果に大きな幅が生じるということです。今後2~3年の間に、私たちは、情報やインサイトという広い意味でのデータを、クリエーティブの効果測定だけでなく、クリエーティブ開発そのものでも応用できるのではないかと思います。

我々がやり始めているのは、情報やデータをクリエーティブスタッフに委ねることです。データやテクノロジー、クリエーティブ戦略やプランニングすべてを集約できれば、クリエーティブブリーフもより焦点を絞れて、結果的にクライアントにとって最良のソリューションを提供できるはずです。データやクリエーティビティーやテクノロジーなどがどのように相互作用するかが鍵で、この点はすでにカンヌでも話題となっていて、今年、これに関連する新しい賞が設けられました。これから新たな成功例が続々と出てくるはずですから、それらがどう機能するのかという知見を体系化していく必要があります。データを取るのかクリエーティビティーを取るのかという議論ではなく、互いにどう補完し合うかを重視すべきです。

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中川:私たちにとってクリエーティブの効果測定はとても重要です。すでにグローバル市場で活動する電通イージス・ネットワーク(DAN)のクリエーティブエージェンシーが何社かありますが、どのように効果を測定できるのか、皆が知りたがっています。そういう意味で、電通とD2Dのコラボレーションには大きな意味があると思います。

欧米とアジア地域のMMMのトレンドは?

中川:MMMの地域別のトレンドについてお聞きします。ウィーバーさんは以前、MMMはイギリスとアメリカが格段に進んでいて、他のヨーロッパ諸国がその後を追いかけ、アジア太平洋地域はまだこれからとはいえ勢いよく伸びてきているとお話ししていました。このMMMのトレンドについてもう少し詳しくお伺いできますか。

ウィーバー:先ほどから触れているエコノメトリクス(計量経済学)、MMMに関しては、アメリカではテクニックが広く普及していて、ビジネスの規模から見ても導入レベルはかなり高度です。ヨーロッパも同様に成熟していて、アプローチのレベルから言えば、ヨーロッパとアメリカはほぼ同じでしょう。ただ、ヨーロッパの場合、異なる性質を持つマーケットが混在しているので、基準も違えば実施の方法も違ってきます。これが何を意味するかというと、妥協しなければならないテクニックがいくつかあるということです。その点を頭に置いておかなくてはなりません。

アジア太平洋地域は非常に広範囲にわたる複雑なマーケットです。ここでの課題は、正しいデータを入手すること。そしてもう一つは、モデリングのような分析テクニックを使うことを受け入れる環境があるかどうかです。テクニックを使ったことがないと、誰かが数字や集計表を持ってきて答えを提供してくれるという誤解が生じがちですが、それは明らかに間違いです。アジア太平洋地域では、データの整備だけでなく、これらの分析がいかに彼らのビジネスプロセスを改善し、将来のビジネス成長に有用であるかを理解してもらわなければなりません。

ただ、我々は、アジア太平洋地域やヨーロッパの比較的規模の小さいマーケットでは、この領域における変化が非常に速いのではないかと考えています。これらの地域では、必ずしもアメリカやヨーロッパと同じ開発ステージを踏む必要はありません。デジタルマーケティングやエコシステムに適合した個人ベースのデータ分析に一足飛びに取り組めるということは、その地域にとってメリットがあります。

スピードを加速させるためには、DANの力が不可欠

中川:多くの電通人は、D2DというDANの大きなブランドのトップであるあなたのキャリアに興味を持っています。ご自身のことについても少し教えていただけませんか?

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ウィーバー:私はD2Dに勤めて12年になります。D2Dの創立者はポール・ダイソンで、私は会社が設立されてすぐに入社しました。2番目の社員です。私とポールの出会いは、1999年。現在はWPPの傘下にあるマインドシェアという会社に2人が入社したのです。私はその前は、ヘンリー・センターというコンサルティング会社で、経済予測やモデリングの仕事をしていました。データを使った効果測定という領域には足かけ20年以上関わってきましたが、そのうち12年間をD2Dで過ごしてきたことになります。

D2Dは今や世界に9つのオフィスを持ち、社員は約120名。DANに買収されてから、会社の成長はさらに加速しています。DANのインフラやデータにアクセスできることで、私たちのブランドも仕事のスピードも格段に向上しました。近年、クライアントは複雑なポートフォリオの商品をマネジメントするために一貫したグローバルソリューションを求めています。そのような時代状況の中で、2012年に旧イージスの傘下に、2013年にDANの傘下に入ったわけです。ポールも私も、クライアントが本当に利用できるデータ分析に焦点を当てたブランドになるには、いいチャンスだと思ったのです。

その目的を果たすためにテクノロジーには相当投資もしました。将来に向けてスピードアップする必要があったからです。私たちにはデータ分析のテクノロジーがありましたが、さらに迅速な提供を可能にするネットワークも求められる。そのためにはDANの専門性やサポート、クライアントへの多岐にわたるアクセス、そしてケーパビリティーが不可欠だったというわけです。

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中川:DANとWPPやピュブリシスとの大きな違いは何だと思いますか? あなたの専門分野だけでなく一般的な意味でもお伺いできたらと思います。

ウィーバー:大きな違いは、ネットワーク内の様々なブランドと仕事をする際に、より柔軟に対応できるという点です。DANではこれをオペレーティング・モデルと呼んでいます。元々はイージスの考え方で、電通がイージスを買収した大きな要因でもあると思います。電通とイージスは実は共通点がたくさんあると思います。データ分析の領域では様々なDAN内のブランドにアクセスできることは貴重です。競合他社のモデルと比べると、DANの組織は、これらのブランドすべてがより柔軟に協業できる仕組みになっています。他社にはない、DAN独特の推進力があり、そこに自然と起業精神が生まれているのではないかと思います。また、組織のトップの影響もあると思います。トップの強い野心と努力により、組織として常により大きな目標を設定するプロセスを肌で感じて感銘を受けることで、自分たちもその目標に貢献したいという意欲が湧いてきています。

中川:ありがとうございました。これからコラボレーションする機会も増え、一緒に成長していけると期待しています。

ウィーバー:連携してコラボレーションすることで真のイノベーションが生まれ、より速く成長できると信じています。