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Good JAPAN InnovationNo.3

【京都】雲形の提灯を作る。

2015/06/25

「伝統工芸×デザイン」をテーマに、優れた日本のものづくりと電通のアートディレクターがコラボレーションして作品を制作し、新たな価値を世界発信するプロジェクト「Good JAPAN Innovation」。第3回となる伝統工芸は、“京・地張り提灯”です。京提灯のブランド、小菱屋忠兵衛さんとのコラボレーションで制作しました。

今回目を付けたのは提灯の「フォルム」です。単なる電球とは違って、提灯はそのフォルムごと光源になって周りを照らす、というところに面白さを感じ「新しいフォルムの提灯を作ってみたい」と考えました。そこで思いついたのが「雲の形の提灯」です。

“京・地張り提灯”とは。

提灯の作り方には2種類あり、一般的な“巻骨式提灯”が竹ひごをらせん状に巻いて作るのに対して、小菱屋忠兵衛さんの“地張り提灯”は、細く割った竹を型に沿わせるように輪っか状にし、それをいくつも平行に組んで形を作り上げていく方式。そのため強度があり、竹のラインが美しいのが特徴です。しかしとても手間ひまがかかるため、現在は京都でも数社が受け継ぐのみとなっています。

雲形の提灯を作りたい

小菱屋忠兵衛は、京提灯の老舗工房、小嶋商店の10代目である、小嶋俊さん(29)と諒さん(26)兄弟による、「あかりブランド」です。

小菱屋忠兵衛さんは、「雲形の提灯を作りたい」という無茶なお願いに、「雲みたいな不定形な形を作るのは、はじめてだけど、ぜひチャレンジしてみましょう!」と、とても前向きに応えてくださいました。

(左から)小嶋諒さん、小嶋俊さん
(左から)小嶋諒さん、小嶋俊さん
 

工芸品とブランディング

中尾:今回、声をかけさせていただいた時どう思われましたか?

俊:二つ返事で「ぜひ!」という感じでした。ちょうど兄弟ふたりで新しいブランドを立ち上げて、これから新しいものをどんどん作っていきたいと思っていたタイミングだったので。

中尾:そうだったんですね。即答で、やりましょう!と言ってもらえたので、うれしかったです。
これからそのブランド小菱屋忠兵衛は、どんなことを目指していくのですか?

俊:京都の伝統工芸というだけで、敷居が高く見られがちだけど、お高く止まっていると思われて声がかからないっていうふうにはなりたくなくて。

僕らの技術を生かしてできる新しいもの作りをどんどんやっていきたいと思ってます。でも、やはり手作りのものなので、こだわって作っていくと、どうしても値段は高くなる。

そこをどうやってブランディングして、「これじゃないと」という付加価値や、その説明の仕方を考えていかないと、というのがこれからの課題ですね。

中尾:なるほど。工芸品にもブランディングやストーリー作りが大事なんですね。

伝統工芸ブーム?

中尾:最近は工芸品に対して、一昔前の「伝統工芸=古い」というイメージではなくて、こだわりのある、おしゃれな人が買うイケてるものという感じになってきてましたよね。趣味のものにちゃんとお金かけよう、という風潮がだんだんと出てきているのかなと思います。

俊:そうそう! たぶんみんな100均とかのものを一度使ってみて、これでいいのかな? 一個いいもの買ったほうがいいんじゃない? と思うようになってるんですよ。

中尾:機械に取って代わられて、そのワザ自体が消えるのか、ちゃんとこの先も続いていくのか。今が節目の時代なんでしょうね。

諒:そう。だから業界でもビニールの提灯が増えてるけど、うちはこの先も和紙のものしか作らない。安価なものを大量に作るんではなくて、しっかりとした提灯を安定した形で作り続けるのが理想ですね。

俊:最近、デザイナーと職人が組んで商品化することが少しブームになっています。でも、ひとつデザインを作れば大量生産できるわけではなく、なかなかもうからないから、Win-Winの関係というのが難しい。そこにみんなが気づいたら、今のブームみたいなのはちょっと下火になるかも、と思います。

中尾:手作りの難しさですね。やっぱり、どうブランディングするか、ということなのかな。

俊:あとは売り場作り。いいもの作っても、売る場所がなかったら売れないからね。

中尾:なるほど。これから、販売できる場所がもっと増えていくといいですよね。

デザイナーと工芸

中尾:工芸の分野に、デザイナーが入ること自体はどう思いますか?

俊:必要ですね! やっぱり中にいる人間では見えないこともあるので。今回の雲形提灯も、こんなん自分たちでは絶対に思いつかない。だからこそ、形にしたい! と思ってがんばりましたよ。

中尾:本当にありがとうございました。今回一番難しかったポイントってなんですか?

諒:やっぱり、提灯と提灯をつなぐところですかね。初めてのことだったので。和紙の力だけでちゃんとドッキングするんかな? というところとか。あとくっついても重みで横が垂れてしまうかもしれなかったし。

一番頭を悩ませた提灯のつなぎ。

俊:でもやってみたら思った以上に、うまくいきましたよね。

中尾:出来上がってみたら、ちゃんとフォルムの面白さもあって、そこに竹の線のきれいさが生きていたのでよかったな、と思ってます。

俊:そうなんですよね。よく見たら、竹のふしの模様が出てるんですよね。あれは地張り提灯ならでは。

中尾:見所ですよね。

こうして出来上がった雲提灯。工芸品ならではの繊細なディテールと、不思議な存在感を感じさせるあかりになりました。その提灯を山奥の小さな湖の上に吊るして撮影し、光る雲とそれを映す湖面という幽玄なビジュアルが完成しました。6月らしい季節感を楽しんでいただければうれしいです。

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