【北海道】アイヌ文様を使って文字を作る。
2015/07/28
「伝統工芸×デザイン」をテーマに、優れた日本のものづくりと電通のアートディレクターがコラボレーションして作品を制作し、新たな価値を世界発信するプロジェクト「Good JAPAN Innovation」。第4回の伝統工芸は、北海道のアイヌ文様です。
文字を持たなかったアイヌ文化。そこにもし文字が存在したら? それが共通言語だったら? 当時のコミュニケーションは変わっていたかもしれないし、新しいコミュニケーションが生まれたかもしれない。私、川村はそんな考えを抱き、アイヌ文様で文字(フォント)を作ろうと考えました。こちらがその作品です。
今回協力してくださった津田命子(つだのぶこ)さんはアイヌ文化の研究者であり、実際に刺しゅうによるアイヌ文様の再現・制作を通して、その成り立ちを研究している方です。
アイヌ文様の起こり
アイヌでは衣服の裾や袖の開口部分から魔物や病気が入ってくるとされており、アイヌ文様はそれを避けるため衣服に鎖やとげなどの文様を施した、「魔よけ」であったようです。地域や時代によって柄や衣服の形状が異なるなど発展していきましたが、文字を持たなかったため、そのデザインや手法は研究半ばにあり、様々な説があるようです。
定規も筆記用具もない時代に、どうやって文様を構成していったのか?
布を半分に折り、折り目をつけ、その折り目に糸で目印をつけるといったことを繰り返し、その目印をつないで文様を構成していく。曲線さえも目印で作った四角の対角をアールでつないでいきました。あとは手で測る。そうして作った下書き代わりの糸を頼りに実際の文様を施していったのです。
アイヌ文様の種類とデザイン
ルウンペ、チヂリ、カパラミプなど刺しゅうの手法も様々です。
今回は津田さんのアドバイスもあり、フォントを作るに当たって向いているのはルウンペではないかという話になりました。
ルウンペはテープ状に切り分けた布を置き縫い留めて、上から刺しゅうします。曲線もテープを切ることなく、折り曲げていくというもの。ルウンペの意味は「ル(道)ウン(ある・持つ)ペ(もの)」だそうです。
アイヌ文様の特徴としてイカラリ「イ(それ)カ(上)ラリ(押さえる)」、キラウ(角)、オホ(鎖縫いをする)など少し変わった縫い方や形があり非常におもしろいです。それにならい、それぞれの文字にその特徴を入れていきました。
チヂリやカパラミプなど興味があれば調べてみてください。
デザインについてはルールのようなものがあるような、ないような。津田さんに教わりながらデザインしましたが、当たり前ですが感覚的なところも多く、にわかにトライをした私にはまだまだ理解できるものではありませんでした。
実際に縫ってみて
刺しゅうのやり方も津田さんにご指導いただきました。津田さんの出版されている本を見て多少は学んでいたものの、やはり直接教わるのは、とても分かりやすい。また、本には書いてないような、こんなやり方もあるよ、というようなことも教わりました。それを実践したわけですが、縫い目のそろい方などを気にしているとすぐに何時間もたってしまうほど緻密な作業になり、こんなに肩が凝ったことないくらい凝りました(笑)。これを衣服のサイズでやっていたアイヌの方たちの集中力はスゴい。
アイヌの歴史や文様のことなど、様々なことを教えていただいた津田命子さん、ありがとうございました。