汐留メディアリサーチャー時評No.2
若者たちはテレビ見ながらネットで何してる?
2015/09/11
電通総研メディアイノベーション研究部は、メディアや情報通信環境の変化、そしてオーディエンスの動向を探ることをミッションとするシンクタンクです。
ウェブ電通報でもリサーチプロジェクトの知見をお伝えする「インサイトメモ」を連載していますが、この「汐留メディアリサーチャー時評」では、当部ならではのナレッジをベースに、現代のメディア環境に関するトレンドをピックアップし分析と考察を進めていきます。
第2回は、若者たちはテレビとネット動画視聴をどのようにすみ分けているのか、データをご紹介します。
7月にNHK放送文化研究所から「日本人とテレビ 2015」の調査結果が発表され、10代後半や20代の若年層では「テレビよりもネット動画のほうが面白いと思う」ことがあると回答した人が過半数を占めたことが明らかになりました。
最近、テレビとネット動画は共に映像メディアに属するものとして対比されることが増えています。
しかし、若者自身の視点から見ると、意識で比較してから視聴するメディアを選んでいるのではなく、ネット動画が面白いと思ってのめり込んでいたら「いつの間にか」他のメディアへの接触が手薄になっていたという事情があるのかもしれません。
もし、その結果テレビの視聴が手薄になったのであれば、テレビとネット動画は競合する役割を果たしているということができるでしょう。本当にそうなのでしょうか。
電通総研メディアイノベーション研究部では、20代を対象として、2015年3月の特定のある1日の特定の1時間の自宅内行動に限定した詳細な調査を実施しました。
ある時点でネット機器を利用していた人を「同じ時点でテレビ視聴もしていた人」と「テレビ視聴していなかった人」の2つのグループに分け、それぞれのネット機器利用の目的を調べました。
2つのグループの間で利用率の数字に特徴的な違いがあった分野は「検索」「ニュース・情報収集」「ゲーム」「SNS・交流サイト」「動画共有サイト」の5つでした。
この中で動画共有サイトについては、「同じ時点でテレビも視聴していた人」のグループの利用率が4%台であるのに対し、「同じ時点でテレビ視聴していなかった人」のグループの利用率は20%から23%台で推移していました。
つまり、動画共有サイトは、テレビの視聴とは同時に利用されにくいネットサービスだということが確認されたことになります。
これに対し、他の4分野では、実は同じ時点でテレビ視聴もしていた人のグループの方が、利用率が高いことが見て取れます。
この調査結果から、若年層の間では「意識」より「行動」の現実として、テレビとネット動画の視聴が同じ生活時空間の中で共存しにくく、すみ分けている状況があることが浮かび上がってきます。
最近の広告業界では、テレビに接触しにくい若年層ターゲットに対し、補完的にネット動画でアプローチし、総合的な接触率を高めようとする取り組みが数多く行われるようになっていますが、そうした取り組みの背景にもテレビとネット動画視聴をめぐるこのような若年層の行動レベルの変化が横たわっていると考えられるでしょう。
電通総研メディアイノベーション研究部「第3回マルチスクリーン調査」概要
■調査対象者
一都三県に居住する20~29歳の男女2072名
3月8日(日)21時台の60分間に常に自宅にいた人
■調査方法
インターネットを利用した日記式調査
■調査日時
2015年3月8日(日)~3月11日(水)
電通総研メディアイノベーション研究部では、メディアや情報通信環境の変化を着実に捉え、進化し続けるオーディエンス(視聴者)の動向を探っていきます。世の中のキザシをいち早く発見し、オーディエンスとの「最適なコミュニケーション」を提案しています。