汐留メディアリサーチャー時評No.3
「ニュース」がより身近に。キュレーションメディアってどんな位置づけ?
2015/09/25
電通総研メディアイノベーション研究部は、メディアや情報通信環境の変化、そしてオーディエンスの動向を探ることをミッションとするシンクタンクです。
ウェブ電通報でもリサーチプロジェクトの知見をお伝えする「インサイトメモ」を連載していますが、この「汐留メディアリサーチャー時評」では、当部ならではのナレッジをベースに、現代のメディア環境に関するトレンドをピックアップし分析と考察を進めていきます。
第3回はニュースをより身近にしたキュレーションメディアというもののオーディエンスにとっての位置づけを考えてみます。
インターネットは情報の流通構造を一変させ、私たちのニュースとの接触の仕方やその向き合い方に大きな変化をもたらしました。近年では多様なニュースソースからそのユーザー自身に向けて最適なニュースを取捨選択し、スマートフォン上に配信するニュースキュレーションアプリが存在感を増しています。
そして、こうした「スマートフォン+ニュース」のこれからを予見させるかのように、Facebookは5月に「Instant Articles」を発表し、モバイルアプリ上で新聞社や雑誌社、バイラルメディアなどから提供された記事をこれまでよりも圧倒的な表示速度でユーザーに届けられるような仕組みを整え始めました。Twitterも6月末から「ニュース」メニューを公式アプリ上で提供開始し、独自のキュレーションサービスを準備しているという観測もされている状況です。
これらは、社会のことを知る「ニュースキュレーション」と、友人のことを知る「SNS」との距離が明確に縮まり始めている兆しと捉えられないでしょうか。
当研究部で実施したアンケート調査によれば、ユーザーにとってキュレーションメディアはSNSや雑誌に近いものだと捉えられていることが判明しました。
まず利用場面についてまとめたものが図表1にあたります。調査上は利用場面について複数回答をしてもらい、それをコレスポンデンス分析にかけていますが、本コラム用に簡易的なチャート表現に改めています(図表2も同様)。ここでは、「待ち時間や休憩時間、コンテンツ通知が届いたとき、他の人との話題を探すとき」などの要因で、キュレーションメディアが雑誌やSNSなどに近いものとして捉えられていることが分かります。
また図表2は同様にして利用目的についてまとめました。「効率よく情報を収集できること、詳しい情報や貴重な情報が手に入ること」といった共通要素によって、キュレーションメディアやSNS、雑誌はクラスターをなしており、図表1の結果と同様にテレビや新聞などとは対照的なポジションを成しているのです。
SNSとキュレーションがとても近いものとして捉えられているその背景には、若年層を中心として、「ニュース」という言葉の持つ意味合いがよりソフトなものへの変化していることも関係しています。「世の中のこと」「社会のこと」というより、「自分の関心のあること」「親しみのある人間関係の中で起こっていること」こそが、チェックするべき「ニュース」として認知される傾向が強くなっているということ。こうした社会文化的な背景も勘案すると、ここまで述べてきたような動向にも得心がいくのではないでしょうか。