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コンテンツマーケティングの現場からNo.16

コンテンツマーケティングとデータは
どう関係しているか

2015/09/16

コンテンツマーケティングにおいて「良い企画」とはどういうことなのでしょう。広告のときは「話題になる」という分かりやすい目標がありました。けれども、コンテンツマーケティングが目指すのは「話題になる」ことともう一つ、多様なターゲットに、企業のビジネスにつながる様々な「行動を起こしてもらう」こと。
広告の仕事をしていると、アイデアがメイン、分析はサブと捉えられることが多く、ついその癖でコンテンツマーケティングを見てしまいがちなのですが、実は狙ったターゲットに狙った行動をしてもらいたいと考えたとき、データや分析はコンテンツと切っても切れない関係になります。しかも、本当に最適な企画をしようとした場合、サイトのアクセスデータだけでは不十分なケースも出てきます。そんな課題に行き当たったとき、どんなふうに解決していけそうなのか。今実際に、現場の作業で一緒に試行錯誤している、マーケティングソリューション局の八木克全さん、統合データ・ソリューションセンターの佐伯諭さんと話をしました。

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左から、佐伯 諭氏、郡司 晶子氏、八木 克全氏
 

郡司:まずそれぞれが、どのあたりの領域を中心に担っているのか、というあたりから話をしましょうか。

八木:コンテンツマーケティングのチーム全体では、検討期間の長いある商品を対象に、ユーザーの検討状況や関心度に応じて、コミュニケーションを打ち分け、ユーザーの状況に応じた満足度を得られる仕組みをつくり、回す作業をしています。
その中で私は、ユーザーを検討状況や関心度でセグメントし、そしてセグメントしたユーザーに、施策を打ち分け・データをため/施策の効果を上げ続けるマーケティングシステムを構築/運用する領域に携わっています。
郡司さんは、設定したユーザーに対応したコミュニケーションプランニングとコンテンツ開発領域を、佐伯さんは、実施したコミュニケーションの結果として蓄積されるデータを解析し、次の施策への示唆を出すベースをつくる領域。大まかにいうとこのような役割分担でやっています。

yagi
 

郡司:本格的にコンテンツマーケティングをやろうとすると、コミュニケーションプランニングとデータベースの両方が必要になっていくということ。コンテンツの戦略・企画サイドとしても、いまひしひしと感じています。それってつまり、「マーケティングシステム」が必要ということなのだと思いますが…?

八木:その通りだと思います。企業がコンテンツマーケティングに期待することは、人によって異なる商品に対する関心や、そのときの態度などに応じて、どんなコンテンツを出したら効果が上がり続けるのか、ということだと考えています。私のチームのような全体の仕組みづくりをする立場から見ると、エンドユーザーとどうコミュニケーションしていくかの知見を持った郡司さんチームや、取り回しにくいサイズのデータを解析する知見を持った佐伯さんチームと有機的に結合し、プランニングから施策の実施、さらにそのデータの解析まで同時に回すことが、ひとつの解決策になると思っています。

郡司:そのもう一方で分かってきているのは、コンテンツを出すと大抵の場合は何らかの反応があり、その反応によって新たな情報を得ていくことができたりします。例えばサイト内行動などはわかりやすいと思いますが、ユーザーコメントのような定性データ、プレゼント応募と引き換えのメールアドレスなどもあります。ユーザーの状況を知るという視点から見たとき、コンテンツとデータって実は切っても切れない関係なのだなと最近は思っています。
だとすると、送り手が意図的に、こういう情報が欲しいからこういうコンテンツ企画を出す、といったことも、やろうと思えば多分やれるところがあるはずで、単に上手にコンテンツをつくって受け入れられたかどうか、を見るだけではなく、そういうコンテンツの活用の仕方もあるなと思っています。コンテンツを究極的に手段として使い倒すイメージです。
でも今私たちって、そんなようなことをやっているのですよね。

gunji
 

佐伯:今私たちは、例えば10ぐらいのコンテンツを露出させたときに、それぞれのコンテンツの閲読者の解析を始めてますよね。

郡司:実際にやってみてどうですか?

佐伯:広告効果分析やサイトアクセス解析と同程度の解析もできますが、1コンテンツ当たりの露出量が少なくなるので工夫が必要ですね。コンテンツの効果は、ざっくりいうと①誰にどう見られたか?②見られた後どうなったか?だと思うのですが、①は閲読量や読了率で量全体やコンテンツそのものの読ませる力、のようなものを計測できます。一方、②の部分はコンテンツ接触量が少ない場合、結構大変だな、と。広告効果分析のように接触者を調査パネルに当てて態度変容をアスキングで聞く、という手法が使いにくいので、DMPが持っている大きなデータと照合して見ています。DMPのセグメントごとに誰がどう見て、そもそも読了しているか?やコンテンツ接触後のサイトアクセスや行動変化をDMPの膨大なデータから解析を試みています。
ただ、心の変容まではやはり見えづらいので、クリエーティブテストのような従来型の調査も併せて行うようにして、行動データ解析とアスキング調査を組み合わせたコンテンツ評価が必要そうだな、と考えているところです。

八木:どのコンテンツがどれくらい効くか詳細に知ろうとすると、一人の人間を追いかけ続けて、効果を急に高められるコンテンツやその提供タイミングを知りたくなりますが、そのあたりはどうでしょうか。

佐伯:それは個人的には難しいと思っています。なぜかというと、一人の人を追いかけるといっても、その人が当たるコンテンツとか広告って本当にいっぱいあるから。看板を見たとか、交通広告を見たとかいうのは、私たちの頭の中では記憶されているんだけど、そこまでデータ取り切れないから、一人の人を例え追いかけられたとしても、やっぱり限界があるなと思います。
しかも、広告の感動とか、セレンディピティー(偶然による発見)とか、気持ちの変容とかは、なかなか表し切れないから難しい。

データとクリエーティブの狭間

 

郡司:佐伯さんの周辺だと、どちらかというと広告が中心だからCTRの高いクリエーティブを評価する、という感じですか?

佐伯:運用型広告の領域やダイレクト広告領域ですと、CTRとかCPAとか、そういうパキパキした数字を見ている場合が多いですが、コンテンツの世界が広がってくると、直接効果と呼ばれるような数字だと評価できないものもある、と思っています。それは間接効果と呼ばれるポストインプレッション効果も含めてなんですが、いずれにしても、行動データから把握しようという試みはやっていますが、傾向として広告が過小評価されちゃうなあ、と思います。なかなか難しいです。商品やカテゴリーにもよるのですが、人ってそんなにすぐ行動に出ない場合があるから。しかもオンラインだけの。
当たり前ですけど、クリエーティブとかアイデアが持つ消費行動へのインパクトは絶対ある、と思っています。数字で表れない部分も多くあるので、そこは分析者がデータに表れない部分も含めて、潜在変数的に処理するといいますか、「良い加減」に解釈すると、何かいい感じになる気がしています。

saeki
 

八木:CTRやCPAは重要ではあるものの、数字だけでゴリゴリやっちゃうと、市場が成長していない限りは縮小均衡になる。そうならないように、見えているニーズを超える感じとか、新しい人に情報が当たっていく感じとか、データ的にはふわっとしたように見えるかもしれないけれどもクリエーティブ的な部分がないと、データを見ながら成長していくのは思った以上に難しいのでは。

佐伯:ですね。データである程度感動みたいなものを数値化するというのは、もうちょっとしたら説明がつくようになると思うんですよ。そうなったら、うちのクリエーターたちもきっと喜ぶ(笑)。
私が目指しているあるべきクリエーティブ評価というのは、感動ももちろんなんですが、経営とか、売り上げとか、そういうものにヒットするくらいのものであり、企業のマーケティング投資意思決定に関与するくらいのインパクトがあるものだと思っています。そこにチームで総力を挙げて対応する。その世界観を追いたいです。

郡司:私がずっと考えているのは、まさに佐伯さんが今言ったことです。クリエーティブが持つアイデアの力とか、それをカタチにすることができる力って、今のように情報で人が動く社会ではきっと戦略的に使うやり方があるはずだと思っています。
これまでは、経営や事業が目指す方向に人を動かしていくように企画することは難しかったけれど、データがあれば少しずつ可能になっていくのかもしれない。

佐伯:今後、生体情報などもトラッキングできるようになって、感動のようなものを具体的に数値化できるようになると、データを活用したクリエーティブといった手法も出てくると思います。そうすると、デジタル的な広告だけではなく、従来の広告が果たしていた役割までもがデジタルマーケティング内でできるようになりますから。我々としては、データ×クリエーティブの世界観の中でコンテンツの真の価値や評価基準を見つけていきたいですよね。

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【Gunji's eye】

コンテンツマーケティングは、オウンドメディアの運営やオウンドコミュニティーの運営といった分かりやすいカタチで語られがちですが、今回はマーケティング全体という大きな視点から見たときに、コンテンツとデータはどういう関係で動いているのか、をお伝えしました。私たちの模索はまだまだ、後編に続きます。